水彩画の楽しみ方、苦しみ方・その1
初歩の遠近法、等間隔のものをデッサンする
タイトルは水彩画だが、今回は画材には無関係の、風景をスケッチする際の問題を考えてみる。
風景画の場合、ある程度遠近法の心得がないと、いかにも子どもが描いたような稚拙な絵になることが多い。
対象物を真正面から描く場合はともかく、少し斜めから見たときは、斜めになった線の角度を間違えやすいし、等間隔で並んでいるものが等間隔には見えなくなるので、よほど丁寧に写生しても正確にスケッチできないことが多い。
徹底的に写生にこだわる人はいいとして、正確な写生を困難に感じる人は、むしろ写生を諦めて、幾何図形で正確な形を決めてしまうのが手っ取り早いと思う。
ごく簡単な例をあげてみる。

真正面から見たとき、上図のような四角い対象物があったとする。中央に縦線がある。襖や障子などを考えてもらえばよい。
これを視点をずらせて、斜めから見たらどうなるか。かつ、中央の縦線はその場合どの位置に描けばよいのか。
描き直してみると、

Aが正面から見た形、Bが左側寄りの視点から眺めた形だ。
横方向の長さが縮んで見えることはわかるし、縦方向も右奥が短くなるのもわかる。
しかし中央の線をどこに引くべきなのか、これが案外難しい。
目分量でエイヤッと引くと、往々にして真ん中がおかしな位置にくることになる。
こういうときはあえて自分の目を信用しないほうがよい。幾何学の出番だ。
正面図の長方形Aに対角線を引く。対角線の交点は常に長方形の中央だ。
ならばBにも対角線を引いて、その交点を通る縦線を引けば、これが遠近法を配慮した正しい中央線になる。
たったこれだけで、正しく安定したデッサンができるはずだ。
では、中央線1本だけではなく、複数の分割線がある場合はどうなのか。道路に沿った柵とか、橋の欄干などがそれにあたる。
等間隔に3本の線が入っている(4分割)例を示そう。それ以外の本数でもやり方は同じだ。

Cのように、正面図に対角線を1本引く。
斜めから見たDの図形で、左右両側面を4分割して、3本の補助線を引く。
その補助線と対角線の交点が縦線の正しい位置になる。
分割の多い図形、たとえばビルの等間隔の柱とか、多数の窓だとかは、写生の力だけで対処するのは大変難しい(私などはともかく面倒くさい)。
こういう幾何学の技を使って作品を仕上げるのもよいのではと思う。
もちろん、遠近法さえ正しければ優れた作品になると勘違いしないでほしい。マネだってセザンヌだってユトリロだって、遠近法を間違えている作品はいっぱいある。
また、逆に正確すぎる遠近法は、非常に堅苦しい、建築パースのような絵になってしまいがちなので、「基礎として」知っておくというのが正しい扱い方かもしれない。
