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yamadahikaru
場所取り #せりふ三題噺
花見会、前日の夕暮れ。
満開の桜の樹の下に、一箱の大きな空きダンボール。中身は猫…ではなく、ねじり鉢巻をビシッと締めた強面のおじさんが入っていた。夕焼けを背にしているから、どこか哀愁が漂う。
おじさんはダンボールの中にドカッと座り込み、太い腕を組んで待っている。
「…何をしているんですか?」
「場所取りだよ」
「畳んで敷いた方が、それらしいような…」
「先生ー!」
遠くから声が聞こえる。主は軽トラックだ。
「おっ、来た来た」
おじさんは笑顔になる。体勢は崩さない。
軽トラックが近くに止まると、窓から若者が顔を出した。
「探しましたよ先生。帰りましょう」
「私は場所取りをしている。今日は帰らない」
「運営に、ここで桜餅を振る舞うように話はつけてあります。なので、帰りましょう」
「そうだったのか。これは失敬」
よっこらしょ、と重い腰を上げたおじさんは、軽トラックに向かってズンズンと歩きだした。
一人残された私は、目の前のダンボールをそっと覗き込んだ。その箱には、閉じるための折り目が上下に付いていない。蓋もできなければ、底も作れない。
「そこ、どこ?」
目を凝らして見ると、地面にくっきりとお尻の跡が付いていた。
そこに、桜の花びらがひらひら集まる。
「桜の…尻餅…。桜餅…」
おじさんの決意が、そこにはあった。
私は、ダンボールを畳んで、溜まった花びらが逃げないように敷いた。また明日、ここでおじさんに会えるように。
参加しました。
かんとうふう も 食べてみたい。
■セリフ
「そこ、どこ?」
■三題
・桜餅
・ダンボール
・夕暮れ
