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傘グミ地平線 #せりふ三題噺

「傘ささないと、風邪ひきますよ」
雨で濡れた衣服を身にまとって、傘を持っていないので、きっぱり諦めてトボトボ歩いていた。
後ろから声をかけられて、少し立ち止まったが、またトボトボ歩くことにした。傘を持っている人は、まだ後ろにいるみたいだ。

「はっくしゅん!」
吹き荒れる風が冷たく、生ぬるい雨がしばらく当たらないのでくしゃみが出てしまった。
「早く、どこか中に入りましょう」
「あんた、誰だよ」

「誰だっていいじゃないですか。あなたが心配なんです」
「変わりゃしねぇよ。構うな」
「身体が冷えきる前に」
「るっせぇ」

変わりきった後だから、どのみち変わらない。俯きながら前へトボトボ歩く。
それでも、傘の位置が変わらない。変わらない訳じゃなくて、あの女がついてきている。

「おまえ、もう来るんじゃぁ…」モゴモゴ。
自分の口に、女の指が触れた。指の先に何か掴んでいたようで、口に入れられた甘い何かを噛んだ。ぶにゅっとした食感は、グミか?
「もう黙っててください。それ噛み終わったら次の一粒あげますから」

女の傘の世話になりながら、グミを噛み続けた。ヒタヒタ滴しながら歩き続ける様子はテンションの低い犬の様。

「で、感想は?」
「ふぇ?」
「グミ、美味しいですか?」
「…美味しいけど」
「もっと要りますか?」
「いらん」
少し間が空いて、目線の先に手のひらにのったグミが一粒。自分は、なにも言わず掴んで食べた。

「どこまで歩くんだ」
「地平線まで」
「は?」
「嘘です。海が見えても、雲で見えないかもしれないですね」女は、くすくす笑っている。「ごめんなさい。もう少しですから」
「もう少し?」

周りを見渡すと、見たことのある街並み。左手に曲がると、住んでいるマンションに辿り着く。自分が曲がると、女も曲がった。
「何でついてくるんだ」
「だって、私もあそこに住んでますので」
「は?」
「305号室の方ですよね?私、お隣の306号室です」
「はぁぁあ!?」

同じエントランスから、同じエレベーターに乗り、同じ三階で降りた。見破られた305号室に入ろうとしたら、1つ奥の306号室に押し込まれた。


305号室に帰って、ベッドの上。女の匂いが全身に纏わりついている。
明日、306号室で部屋干しされている服類を受け取りに行く約束を取り付けられた。
折り畳み傘を常備しておこうと思った。


■セリフ
「で、感想は?」
■三題
・傘
・グミ
・地平線

いみしーん

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