ネタがない
それになれるのは、ほんの一握り。
食べるためではなく、人生に色どりを与えたい。これが、僕の仕事。
情熱を帯びた僕らが、火蓋を切られて顔を出す。
どこを見ても、純白。客観的に言えば、誰でもいい。
桶に出された僕らは、調味料の洗礼を受ける。
しゃもじで崩され、全体に馴染んでゆく。
次第に粗熱を取られ、ほとんどが情熱を失う。
だけど、芯に残った熱を逃さない。まだ、僕は諦めない。
掴まれる手から零れ落ちないように、少ない粘り気を出す。
熱を持った同士と、うまく繋がることができた。
適当に取った僕らを、程よく握る。
僕らは、ある程度自由に。そして、一人前の意志を固める。
最後に、味や触感のネタが乗る。
これで初めて、寿司と名乗ることができる。
さて、ネタは一体誰なんだ?
おや、僕らのほかに同士の塊が集まってどうしたんだ?
今度は、回転しながら程よく握られる。
海苔が僕らを大きく包み、粘り気を利用して張り付く。
内側の同士が、騒がしい。中に、僕らとは違う何かが。
もしかして、これは——。
「あいよ、おむすび一丁!」
上にネタが乗るのではなくて、中にタネを仕込まれたらしい。
終始、回されて作られた文。
『ネタがない。名がタネ。』
参加しました。
タネからネタを産み出す。だから、空想は面白い。
