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おしこんだりもしたけど、私は能天気です #アマノ文筆クラブ

折り畳み傘がカバンの中にあるのに、大雨の中全身ずぶ濡れで帰ってきた私。ハハは「ははは。傘が入っているの忘れてたのかな」と笑いながら、綺麗に畳まれたバスタオルを広げて渡してくれた。太陽の温かい匂いがする。

最近の天気は気まぐれで、晴れのち雨のち晴れのち…な状況が続いている。
ブランコに乗って、片足の靴を投げたときは靴底が下になったから、そのまま晴れると踏んで帰ってきたのに。

折り畳み傘は面倒くさい。カバンの蓋を開けて、小型の水筒のような傘を取り出さないといけない。傘をまとめる紐の留め具を外す前に、被せているカバーの留め具を外さないといけない。手で持たない代わりに、1つ1つ手間を挟まないといけない。

いけないいけないいけない。いけません。やりなさい。倣ってちょうだい。
なんで言うことを聞かないの。ふざけないで。恥をかかせないで。

常識に塗り固められた拳で何度も殴られた。固かった。
木刀のような脚で何度も蹴られた。硬かった。
間違った心を変えようと、何度も何度も、紫の斑点が増えていく。痛い。痛い。痛い。

さされる指に、金切り声。
「いけない子」と呼ばれる毎日。頭の中でずっとグルグルしている。

ある日、不協和音で目を覚ました。外からサイレンが鳴っていた。テレビで見たパトカーという車の音だ。窓から覗くと、警察の人がパトカーに乗ってどこかへ行ってしまった。

家の中をゆっくりと探してみると、私が一人だけになっているみたいだ。きっと、警察の人と一緒に着いて行ったんだ。私は置いてかれた。いけない子だから置いてかれた。

そのあと、知らない女の人が家の中に入ってきた。泥棒なのかと思ったけど、私の近くに来て優しい口調で話す。
「これから、私がお母さんになるからね」

「ハハになるの?」
「そうだよ。でも、ハハは堅いからママかお母さんにしてほしいかな」
「…じゃあ、ママハハ」
「う~ん、ならハハでいいか」

私の帰る場所が、年齢が同じくらいの子供がたくさんいる広い家になった。
普段よりうるさくはなったけど、「いけない子」とは呼ばれなくなった。

あの時迎えてくれたハハは、私が何か悪いとされていたことをやってしまっても怒ることはなかった。ずぶ濡れで帰ってきた今日だって。

「ごめんなさいハハ。傘が入っていたのは覚えていたの」
「取り出すのが面倒くさくなっちゃったかな?」
「そう」
「いつも手に持っていたお気に入りの傘、壊れちゃったもんね。今度の休みに買いに行こうか」

私はうなずきながら、バスタオルに深く顔をおしこんだ。


参加しました。どすこいどすこい。

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