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6面の楽園 #3つのお題で空想のひらめきを

神さまがいると噂されていた場所に切り株が埋まっている。御神木だったものだろうか。綺麗な切り口には、黒電話が置かれていた。
黒電話のダイヤルの中心には、「の」が書かれている。

神さまと通じ合えるかも知れない。受話器を手に取る。耳に当てるが何も聞こえない。そのまま受話器を戻した。

神さまの留守電がある可能性はないとみた。この電話がダイヤル式だからだ。もしかしたら、伝言のためのダイヤルがあるのかもしれないが見当もつかない。
無意味にダイヤルをクルクル回すと「の」が渦を巻いているように見える。

切り口をよく見てみると、1カ所だけ凸が目立っている。木で出来た賽子が半分埋まってる。出目は6。目の彫りが深い。表面はよく磨かれていて、面取りも施されている。

摘まんで取り出してみると、1~6の出目が揃っている。賽子のあった場所には窪みが現れた。

何も考えずに賽子を振る。出た目は6。もう1度振ってみる。またしても6。この賽子を持ち帰って、イカサマに利用できるかもしれない。やめよう、罰当たりが過ぎる。

賽子を元の位置に戻した。すると、切り株が一気に朽ちてしまった。いや、それだけではなく、風景が一変していた。

赤黒い空、朽ちた切り株に黒い液体が侵食している。さっきまでいた場所と似ているようだが、全てが壊されていた。このまま居続けるのは、息が苦しい。
賽子を確認すると出目は1。深紅の目が見開くように上を向いていた。もしかして。

この世界から離れたい一心で、急いで賽子を摘まんだ結果、指から滑ってしまった。出目は1。この世界がそうさせているのなら、どうしても帰さない意思を感じる。

賽子を拾って、6に変えてみた。さっきまでの風景に戻った。
つまり、賽子の出目を変えて窪みに入れると、対応した世界に変わる。
俄然、興味が湧き始めた。

賽子の出目を2に変える。
風景は夕暮れの橙色を連想させる。切り株は朽ちていた。電話の形も少しだけ保っている。1よりかはひどくないように見えるが、時間が経てば同じ未来を辿るだろう。確証はないが、そうなる未来しか見えなかった。

賽子の出目を3に変える。
赤みがかった青空が見えた。切り株は少しだけ皮が剝がれ、受話器のみ切り口に転がっている。

ここで1つ法則性が見えた。出目が小さいほど破滅に向かっていて、大きいほど明るくなってくる。つまり、新しく作られた世界になるのではないか。

4と5を見てみる。予測通り、空はみるみる明るくなる。
切り株と電話が徐々に再生しているように見えた。

出目を6にして帰ってきた。きれいな空気が体中を巡る。とても気持ちが良い。ただ、1つの懸念点が頭をよぎる。
このままでは、見てきた世界が全て1の世界になってしまうのではないか。2で率直に感じた未来を辿ってしまうのではないか。

まだその時が来ていないのに焦ってしまう。いつの間にか失敗作の楽園に変わる恐怖がどうしても拭えない。
神さま、どうして電話が繋がらないのでしょうか。私たちはこのまま滅ぶ運命にあるのでしょうか。

電話が繋がらない。それは、電波がないか。それとも…。あ。もしや。
黒電話の裏側にまわって確かめてみる。それらしき跡がない。なら、持ち上げてみたら。

黒電話の下から電線が繋がれていた。電線は切り株の小さい穴を通ってどこかに繋がっているようだった。正確には、電線のどこかが切断されていると考えるべきだろう。

黒電話をいったん置いて、賽子の出目を5に変えた。
同じように黒電話を持ち上げると、電線が通っていた穴は黒い液体で満たされていた。
つまり、6面も電線は溶けている。だから、受話器を取っても待機音が鳴らなかった。

これが分かったとはいえ電線は直らない。どうあがいても6から次の世界に飛び立つことができない。悩んだ末に、賽子を手に取って振った。出目は6。ん?
また賽子を振る。出目はまた6。

世界が変わる度に、その世界の出目しか出ないと思い込んでいたが、前提自体が間違っていた。この賽子は何回振っても、どんな世界でも6しか出ない賽子だったのだ。

なら、あの時1が出たのはなぜなのか?
賽子を振った時とあの時の違いを考えると、予想がついた。

また行きたくはないが、検証は同じ条件で行うことが大切だと教わった。
覚悟を決めて、窪みに1の出目を上にして差し込む。
赤黒い空と朽ちた切り株に染み込んだ黒い液体。すごく空気が悪い。早く逃げたい気持ちを抑えて検証を始める。

朽ちた切り口に賽子を振った。出目は6。もう1度。また6が出た。
続いて、切り株から少し離れて賽子を振った。出目は2。もう1度。今度は5が出た。
予想通りだ。賽子を拾って、6の出目を上にして窪みに差し込んだ。

これまで振っていたときは、何も考えずに、切り口を台にして賽子を振っていた。その場合は、必ず6が出た。
1の世界では、賽子が指から滑って地面に落ちた賽子が1を出していた。これは偶然で、確率は同様に確からしいからこそ勘違いが発生した。

ゆっくりと深呼吸をしながら、次の謎を考える。
切り株の上で賽子を振ると、なぜ6が出るのか。神さまの力と言ってしまえばそれまでだ。

6が出る。それは、6が上に見えている。6が見えている時、確実なのはどの方向から見ても1が見えないということ。1が下に向いて、切り口と接面している。

賽子を摘まんで、薄目で1の面を見てみると、深紅の目が見えなかった。その代わりに、まぶた(と呼んでもいいのだろうか)には、赤く塗られた彫りがぽつりと1つ付いていた。

1の世界以外ではまぶたは閉じていて、この状態。この差に気づく出来だったが、最初にあの世界で見たあの目に恐怖を覚えてしまった。もう見たくないと思ってしまった。検証の際に飛ぶときも、彫りが1つだけという印象で手触りで確認していたから気がつかなかった。…言い訳は後にしよう。

つまり、1の目には眼球が入っている。故に、賽子の比重は1が大きい。では、地面に転がすと「確率は同様に確からしい」と言えるのか。

触った感じからしても、1の目は普通の面のように感じる。1の面に眼球が出現するとき、それは、切り口と賽子が接面しているとき。

5の出目を上にして切り口に置いてみる。すると、ひとりでに1の面が下になり、6の面が上になった。同様に、2,3,4でも必ず6が上になる。

なら、1を上にすると。賽子は動かずそのまま、まぶたが開いてあの時見た深紅の目が露わになった。ぎろっとこっちを見た。恐怖のあまり、賽子を跳ねのけてしまった。地面に転がった賽子の出目は1だったが、あの目はどこにもなかった。

賽子を拾って、6の面を上にして窪みに入れる。
賽子の謎が全て解けた。一息をついて達成感に浸る。
が、最終目的に到達していない。気を取り直して究明する。

状況を整理する。
窪みに置かれた賽子は、別の世界へ飛ぶためのもの。出目が大きいほど、黒電話、切り株などの状態が良くなっている。

しかし、一番状態の良い6の世界でも、切り株の上に置かれた黒電話の電線が溶け始めていて通話をすることができない。通話を可能にするなら、6を超えた数字、7以上を窪みに差し込むことで解決できるかもしれない。

ただ、7以上の数字が書かれた賽子サイズのものが周りにない。黒電話にも数字は書いてあるが、もの自体が大きすぎる。

7以上の賽子サイズのもの。7以上の賽子。7の賽子。7と賽子。
そういえば、賽子の対面する数の合計は7になる。この賽子も例外ではない。

対面と合わせて7になるなら、裏側の数字も透けて見えたら7になるはず。
今は6が出ているから、中心に1の目が見えたらいいのに。
賽子を上から見下ろして考えてみる。6の彫りがとても深い。他の面より目が細長い穴に見える。彫られているのではなく、掘られているのか。

どこまで掘られているんだろう。少なくとも、1の目には6つの穴はなかった。眼球に影響はないだろうが、結構深くまで掘られているだろう。

そういえば、1の目はまぶたを閉じているはずだ。まぶたが閉じている時、眼球が向いている向きは裏側。つまり、6の面を見ている。
もしかして、眼球と6の目の穴が同時に見える箇所があるってことだろうか。

それをどうやって実現しよう。斧やノコギリは周りにはないので切ることができない。賽子を何回も振っているが、傷も壊れる気配もない。どうしたものか。

神さまにすがる思いで、受話器を手に取りダイヤルをクルクル回す。
ヒントをお与えください。お願いします。

繋がる気配も、留守電もなし。一瞬でも繋がれば…。ダイヤルをクルクル。「の」が渦を巻く。「の」が回る。「の」を反時計回りに回す。すると「6」に見えた。ダイヤルから手を離すと、時計回りに回って「の」に戻る。「6」を回してみる。これがヒントなのでしょうか。

試しに、賽子の上半分を摘まんで、時計回りに回してみる。賽子の上半分がクルクルと回り始めた。賽子の上半分と下半分が分かれていたなんて思いもしなかった。

上半分を取ってみると、接面の中心に小さな穴と左右に6つの点が開いている。眼球が1部だけ見えている。さほど、恐怖は感じられない。
これで、窪みにはまった半分だけ賽子は7を示している。

ジリリリリリ…ジリリリリリ…

電話が鳴っている。7の世界に辿り着いたらしい。
受話器を手に取って、耳に当てる。

「おめでとう。よく謎を解いたね」
「これはどういう」
「おっと、1つ言い忘れた。これは録音だよ。神さまの留守電。だから大人しく聞いてね」

色々質問したいが、黙って聞くことにした。

「これを聞いている頃には、この世界における七回目の人類を築く準備をしている頃だろうね。察しているかもしれないけど、1~6の世界は失敗作の楽園、失楽園になってしまいました」

「6の世界は1~5の失敗を基に創ったから比較的楽園に近くなったね。でも、僕の望む楽園には届かなかった。言葉は悪いけど、捨てました」

「ただ、僕の存在を大切にしている人はたくさんいたからね。その中でも頭のキレる人が真実にたどり着けるようにこの謎を作ったんだ」

「さて、思惑について話すことはもうないよ。自分のいた世界に戻って余生を謳歌してほしい。もし、この世界に転生したいならもう1問出そう。僕の電話番号を導き、この電話を使って掛けてほしい」

「時間だ。また話せたら」

ツーツーツー

受話器を優しく置いた。賽子の上半分を戻して、6の世界に帰ってきた。

この場所は楽園だ 神様が何と言おうと
それでも 失敗作と切り捨てて新しく創ってしまった
普通の世界は 楽園と呼ばないのだろうか
それとも 見えていない面で失敗したのだろうか
振り回されて転がされた正方形の世界で 正攻法なんてあるはずもなく

七回目の人類 これも運任せなのか
賽子にはない 新たな面を作って 楽園は創れるのだろうか


参加しました。
この作品は、3つのお題から作りました。

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