憩いの空間*やきもち屋
その店は、表通りから一筋入り、車一台通るのがやっとという狭い道沿いにあった。
表通りは片側三車線の広い道路。マンションや銀行、お洒落なヘアー・カットの店などが建ち並んでいる現代的な佇まい。
それとは対照的に、木造の古い家屋が立ち並ぶ、静かな町並み。
どこは、間違いなく「店舗」であり、営業区分的には「飲食店」ということになるのだろうが、そんな言葉は似合わない。
六畳間ぐらいの小さな開けっぴろげの一部屋。通りからその中の全部が見える。
入り口も出口も無く、道路側には、壁もない。
部屋の真ん中にテーブルが置いてあって、昔の駄菓子屋みたいな空間のようでもあり、縁台将棋の場を少し広げたようでもある。
まだ、昼の二時過ぎだったが、お客が四、五人いた。
ご近所の御隠居さんたちのようだ。
何を話しているのだろう…。
ゆったりとした昔ながらの鹿児島弁で語らい、笑いが起こる。
写真を撮らせてほしいと願い出ると、快く承諾してくれた。


店名が書かれた木製の看板を見て気付いた。
『やきもち屋』。
町のオアシスみたいなこのお店、
その後しばらくして閉店してしまった。
すでにご高齢だったため、それも致し方ないことなのかもしれない。
お二人にとって、そして常連客たちにとって、間違いなく素敵な思い出となっていることだろう。
それは、偶然通りかかった僕にとっても同じこと。
城南交番のすぐそばだった。
