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「糖尿病で来たのに、なぜ血圧の話をされるんですか?」

⚠️ぜんぶ代謝のせい #2|前回:#1 膝の痛みと糖尿病


はじめに

「先生、私は糖尿病で来てるんですけど……なんで血圧の薬も出すんですか?」

この質問、外来で本当によく聞きます。
なかには「内科の先生にも血圧のこと言われたし、ここでも言われるし、もう誰の話を聞けばいいのかわかりません」と疲れた顔をされる方もいます。

気持ちはよくわかります。
糖尿病と高血圧、名前も違うし薬も違う。別の病気に見えますよね。

でも、代謝の目で見ると、この2つは「別の病気がたまたま重なった」のではありません。
同じ根っこから、2本の枝が伸びている——そういう関係です。

📌 このシリーズ「ぜんぶ代謝のせい」は、一見すると糖尿病と関係なさそうなテーマを、代謝のつながりから読み解く場所です。


糖尿病と高血圧——「たまたま」ではない数字

結論:2型糖尿病の方の約6〜7割が高血圧を合併しています。一般人口の約3割と比べて、明らかに多すぎる。

「血圧が高い人は多いし、糖尿病の人も多い。たまたま重なっているだけでは?」

前回の膝の話でも同じ疑問がありましたが、今回はもっと劇的です。

2型糖尿病のある方のうち、高血圧を合併している割合は約60〜70%
一般人口では約30%ですから、倍以上です。

しかもこの数字は、年齢や肥満の影響を考慮しても残ります。
つまり「歳をとれば誰でも血圧は上がるから」「太っているから血圧が高いだけ」では説明がつかない。

では、何がこの2つを結びつけているのか。


なぜ重なる? 3つのメカニズム

結論:糖尿病と高血圧をつなぐルートは「インスリン抵抗性」「血管の硬化」「交感神経の亢進」の3本。根っこは全部、代謝です。

メカニズム① インスリン抵抗性 ── 塩分を溜め込む体

これがいちばん重要な経路です。

インスリンには血糖を下げる以外にも、たくさんの仕事があります。
そのひとつが、腎臓でのナトリウム(塩分)の再吸収を調整すること。

インスリンがうまく効かない状態、いわゆる「インスリン抵抗性」があると、腎臓がナトリウムを必要以上に溜め込むようになります。
ナトリウムが増えると、それを薄めるために体は水分も溜める。
血液の量が増える。
結果、血圧が上がる。

「減塩しているのに血圧が下がらない」という方の中には、このメカニズムが隠れていることがあります。

メカニズム② 血管の硬化 ── 高血糖が血管を傷つける

高血糖の状態が続くと、血管の内側(内皮細胞)がダメージを受けます。
前回の膝の話で出てきたAGEs(終末糖化産物)は、ここでも登場します。

AGEsが血管壁のコラーゲンにくっつくと、血管がしなやかさを失って硬くなる。
硬い血管は、心臓が血液を送り出すたびに十分に広がれない。
広がれないから、圧力が高くなる。これが動脈硬化による高血圧です。

つまり、#1で膝の軟骨を硬くしたのと同じ「糖化」が、血管も硬くしている
「ぜんぶ代謝のせい」の文字通り、同じメカニズムが体のあちこちに顔を出すのです。

メカニズム③ 交感神経の亢進 ── 体が常に「戦闘モード」になる

インスリン抵抗性は、交感神経(体を興奮させる神経)も刺激します。

交感神経が活発になると、心拍数が上がり、血管が収縮します。
いわば体が常に軽い「戦闘モード」になっている状態。
リラックスしているつもりでも、体の中では血圧を押し上げる力が働き続けている。

これが「仕事のストレスもないし、塩分も気をつけているのに血圧が高い」という方の背景にあることがあります。


「血圧だけ下げればOK」ではない理由

結論:降圧剤で血圧の数値は下がる。でも根っこのインスリン抵抗性を放置すると、血糖も脂質もドミノ倒しになります。血圧は「代謝の警報ランプ」です。

ここで視点を転換します。

血圧が高い→降圧剤を飲む→数値が下がる→一安心。
これ自体は間違っていません。血圧を下げることには明確なエビデンスがあります。

でも、もし高血圧の原因がインスリン抵抗性にあるなら、降圧剤は「警報ランプを消した」だけです。
エンジンの異常は残っている。

インスリン抵抗性を放置すると、血圧だけでなく、血糖値も、中性脂肪も、HDLコレステロールも、ドミノ倒しのように崩れていきます。
実際、これらが同時に崩れた状態には「メタボリックシンドローム」という名前がついています。

だからこそ、糖尿病の外来で血圧の話をするのです。
血圧は「あなたの代謝がSOSを出していますよ」という警報ランプ。
ランプを消すだけでなく、ランプが光った理由を一緒に見る必要がある。


じゃあ何ができる?

結論:減塩だけじゃない。体重管理・血糖改善・運動は血圧にも効く「一石三鳥」の領域。糖尿病科で血圧の話をされたら、それは「あなたの体を丸ごと見ている」サインです。

高血圧の対策というと、まず「塩分を減らしましょう」と言われがちです。
もちろん減塩は大事です。でも、それだけでは根っこのインスリン抵抗性は変わりません。

ここで朗報があります。

インスリン抵抗性を改善する方法——つまり体重管理、食事の見直し、運動——は、血糖にも、血圧にも、脂質にも効くということです。

例えば、5%の体重減少(80kgの方なら4kg)で、血糖値が改善するだけでなく、収縮期血圧が約5mmHg下がるというデータがあります。
5mmHgというのは、降圧剤1剤分に匹敵する効果です。

前回の膝の話では「一石二鳥」と書きましたが、今回は一石三鳥
血糖を整えることが、血圧を下げ、脂質も改善する。

糖尿病の外来で「血圧も見ましょうね」と言われたとき。
それは「また別のことを言われた」ではなく、**「あなたの体を丸ごと見ていますよ」**というサインです。
むしろ安心してください。


今日のまとめ

  • 2型糖尿病の約60〜70%が高血圧を合併。一般人口(約30%)の倍以上

  • 糖尿病と高血圧をつなぐ3つのメカニズム:インスリン抵抗性・血管の硬化(AGEs)・交感神経の亢進

  • 降圧剤だけでは根っこは解決しない。血圧は「代謝の警報ランプ」

  • 体重管理・食事・運動は血糖・血圧・脂質に効く「一石三鳥」

  • 糖尿病科で血圧の話をされたら、それは体を丸ごと見ているサイン


👣 今日の一歩
次の外来に、血圧手帳(またはスマホの記録)を持っていってみてください。
血糖と血圧をセットで見ると、体の全体像がぐっとクリアになります。


前回: ⚠️ぜんぶ代謝のせい #1|膝の痛みと糖尿病
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⚕️ この記事は代謝内科の臨床経験をもとに一般向けに書いたものであり、個別の診断・治療を目的としたものではありません。血圧や糖尿病の管理についてはかかりつけ医にご相談ください。



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