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NovelAI訴訟は可能か?AI生成物とクリエイターの未来を考える(後編)

こんばんは、榊正宗です。

生成AIが登場して以来、「アーティストタグ」機能をはじめとする新技術が創作の可能性を広げる一方で、クリエイターの権利や収益に影響を及ぼす可能性が議論を呼んでいます。前編では、著作権、パブリシティ権、依拠性といった法的概念を整理し、NovelAIへの訴訟がどの程度現実的か、その課題とハードルについて深掘りしました。具体的には、データセットの透明性、生成物と元作品の類似性、商業的被害の証明といった訴訟の争点を挙げ、さらに、集団訴訟やガイドラインの策定、法整備といった解決策も検討しました。

後編では、これらの法的課題をさらに掘り下げ、技術とクリエイターがどのように共存できるかを探ります。訴訟だけにとどまらない視点から、具体的な提案や事例を交えて、現実的な解決策を提示していきます。AI技術がもたらす創作の新時代を、冷静にそして建設的に考えるきっかけとなれば幸いです。

👇️前編はこちらです。


訴訟費用の悲惨な現実 – 感情では裁判を勝ち抜けませんよ?

NovelAIを運営するAnlatan社が米国に拠点を置いている以上、日本からの訴訟は高いハードルがあるのが現実です。そしてその最大の壁は費用です。米国で訴訟を進めるには、日本国内での訴訟の何倍ものコストがかかることを認識してください。

まず、弁護士費用です。国際的な法律事務所に依頼すると、時間単価は5万円から10万円。訴訟全体で最低でも1,000万円を超えることが予想されます。そして裁判が長引けば、費用はさらに膨らみます。感情的に「許せない!」と突っ走るだけでは、この莫大なコストをカバーすることはできません。

さらに翻訳費用も無視できません。米国の裁判所に提出するすべての書類や証拠を英語に翻訳する必要があり、そのコストは1ページあたり数万円に達します。資料が膨大になるほど費用は跳ね上がり、数百万円から数千万円になる可能性もあります。これは、国内訴訟ではほとんど発生しない特有のコストです。

そして裁判費用。米国の裁判所への申立て手数料や相手方の反訴対応費用だけでも最低500万円以上が必要です。さらに、裁判が数年単位で長引けば、弁護士費用、資料準備費用、渡航費などが膨れ上がり、最終的な負担額が数千万円に達する可能性は極めて高いです。こうなると、個人でこのコストを負担するのはほぼ不可能と言っても過言ではありません。

ここで「じゃあどうすればいいの?」という話になるでしょう。現実的な解決策として、集団訴訟やクラウドファンディングが考えられます。複数の被害を訴えるクリエイターが連携して集団訴訟を行うことで、費用を分担することが可能になります。また、クラウドファンディングを活用して広く支援を募る方法もあります。ただし、この方法にも課題があります。まず、集団訴訟をまとめるリーダーや事務方が必要ですし、クラウドファンディングで十分な資金を集めるためには、共感を得るための具体的な訴えや実績が求められます。

また、クラウドファンディングで資金が集まったとしても、それが裁判の総額に見合うかどうかは分かりません。加えて、支援者からは「集めたお金は本当に有効に使われているのか」という目が向けられるため、透明性の高い資金運用が必要です。これらのプロセスをしっかりと計画し、実行できる体制がなければ、集団訴訟やクラウドファンディングは単なる夢物語に終わる可能性があります。


被害の有無を問う冷静な視点 – 被害を説明できないなら、ただの自己満足では?

生成AIに対して「私の作品が盗まれた!」と声高に主張する人たちの話を聞くたびに、「では、その被害を具体的に説明できますか?」と問いかけたくなります。感情で語るのは自由ですが、他人を批判する以上、自分の立場をきちんと整理し、説明する責任が伴います。たとえば、「生成AIが私の作品を学習データとして使った」と主張する場合、その証拠をどうやって提示しますか?

まず、AI生成物がアーティストの収益に与えた影響を示すためのデータが必要です。「売上が減った」「顧客が流出した」と言うなら、具体的な数字を用意してください。感覚的に「なんか減った気がする」では誰も納得しません。それどころか、「騒ぎすぎでは?」と見られるだけです。

また、生成AIが特定のアーティストの作品を学習に使用したと証明するためには、AIの学習データセットを徹底的に調査し、生成物の特徴を比較分析する必要があります。この作業には専門家の協力が必要ですし、当然そのための費用も発生します。この部分を曖昧にしたまま「きっと私の作品が使われたに違いない」と主張するのは、あまりにも無責任です。

さらに、生成AIの出力物が商業的に悪用され、ブランド価値を損なったと感じているなら、その実態を具体的に示す必要があります。たとえば、誰がどこで無断使用し、どれほどの利益を得たのかを明確に説明してください。「誰かが自分の作品を使っている気がする」と感覚だけで語るのではなく、具体的な証拠とデータが求められます。それがなければ、周囲からは「ただ騒いでいるだけ」という印象を持たれてしまうかもしれません。

そして、ここで冷静になってほしいのは、被害を客観的に判断する手段として弁護士に相談することの重要性です。感情的に「絶対に許せない!」と突っ走る前に、専門家の目線で自分の主張を見直してもらうことで、思った以上に被害が小さいと感じることもあるかもしれません。実際、弁護士と話す中で「これは訴訟に持ち込むほどの問題ではない」と気づくことも多いのです。

ですから、感情のままに動くのではなく、一度弁護士に相談してみてください。それにより、自分の被害の実態を冷静に把握し、どのようなアクションが適切かを見極めることができるはずです。相談を通じて得られる冷静さと視点は、感情的な叫びよりもはるかに大きな説得力を持つのです。


宣言するのは自由、批判するなら責任を持つべきでは?

「私は生成AIを使いません」と宣言するのは自由です。誰もそれを否定しません。ただ、生成AIを利用する人たちやその技術を開発している企業を批判するなら、自分の立場や主張をしっかり説明する責任が伴います。「生成AIが嫌いだから反対」と言うだけでは、ただの感情論です。特に、技術を支持する人たちや、AIを活用して新しい創作の形を模索している人たちに対して批判をするなら、法的な視点から自分の主張を補強する必要があります。

つまり、「被害」を証明することが重要です。それができないなら、周囲から見れば「ただ騒いでいるだけ」と思われても仕方ありません。そして、「被害が実際には思ったほど大きくない」と分かった場合、技術に対する批判のスタンスを見直すのが現実的です。裁判を視野に入れるのは構いませんが、法的な議論の場では感情ではなく、冷静で具体的な事実が求められることを忘れてはなりません。


NovelAI訴訟は可能か?の結論

NovelAIがタグと画像が一致する絵を出せるようにしていることは、まったく問題がないとは言い切れません。ですが、被害があるかと言われると、悪用しない限りあくまで似た絵が出る程度にすぎません。たしかに個人的には、クリエイター名での生成は禁止してほしいと思います。それはクリエイターの尊厳や権利を守る意味で重要です。

しかし、現実問題として、今のところ法で潰せるほどの重大な問題が起きているわけではないのです。これが冷静な事実です。「訴える」と息巻く前に、自分が本当にどれだけの被害を受けたのか、それをどのように証明できるのかを検証することが重要ではないでしょうか。感情だけでは訴訟を勝ち抜くことはできません。反AIとして声を上げるなら、その責任を果たす必要があるのです。


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