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eucalyhachibe
ドーナツ店で表示された二つの価格と、ほどけた心の緊張
"Excuse me, English, OK?"
コーヒーでも飲みながらパソコン作業をしようと立ち寄った、近所のドーナツチェーン店。ショーケースからドーナツを選んでいたら、すぐ後ろに並んでいた人に英語で話しかけられた。
この町で英語で話しかけられることは珍しいから、気を抜いていたのかもしれない。仕事で鍛えられているはずの瞬発力はどこへやら、とっさに気の利いた英語表現が出てくることもなく、「い、イェス」と、お手伝いする意思があることを何とか伝える。
どうやら、ショーケースの中の商品にそれぞれ2つずつ値段が表示されていることが気になったらしい。2つの数字を指さし、この違いは何?と聞かれた。
なるほど、と内心思う。今でこそ税込価格と税抜価格を並べたりと「一つの商品に2つの価格表示」は日本ではよく見られるようになったけれど、海外ではあまりないかもしれない。
このドーナツ店では「テイクアウト」と「イートイン」の2種類の価格が表示されていたので、持ち帰りだとこっち、店内で食べるとこっちの金額なんです、と伝える。「税率が違うんですよ」とひとこと添えたのは、説明が短すぎると感じた時の私の癖だ。
なるほどね、ありがとう、と頷いてくれたので、私はひと安心して自分のドーナツ選びに戻る。
ドーナツを決めて、お会計をしながら、ざわざわしていた自分の心が少し落ち着いていることに気付く。仕事であれもこれもやらないと、と焦ったりしていたけれど、予定外の相手との小さな交流でふっと肩の力が抜けたような気がした。
忙しくなるとつい効率や正解ばかりを求めてしまうけれど、こうした予定調和ではない時間が今の私には必要だったのかもしれない。
