入院中の母へ、カーネーションを持っていった🪷
わたしの母が、入院して4ヶ月になる。
ほぼ毎日、届け物で通っているが、だいぶ道も覚えてきて、近くのお店にも詳しくなった。
行けていないところも多いけれど、道中の寄り道がちょっとした楽しみになっていたりする。
そんな場所のひとつに、
「穴太商店(あのうしょうてん)」というお店がある。
もともと、お花の問屋さんだったガレージのような建物を、拡張してナチュラルで落ち着いた雰囲気のショップに造りかえたお店。
お花はもちろん、お米からつくったパンや、調味料、お酒、卵などを売っている。
お米のパンがおいしくて、よく買ってくるのだが
今日は、花のショーケースに目をひかれた。
透明のショーケースの中には、色とりどりのカーネーションが、バケツごとに10色ほど並べられていた。
定番の赤、ピンク、白、紫、
そして、縁だけが別の色だったり、グラデーションがついていたりする、変わった色合いのもの。
中でも目を引いたのが、
あざやかな虹色のカーネーションと
濃いブルーのカーネーションだった。
「母に見せたい」と思った。
母は、切り花が好きで、行きつけの八百屋さんが花も売っていたので、まだ一人暮らしができていた頃は、野菜と一緒に花も買って、よく飾っていた。
「特別なものは要らない」と言う母だったから、母の日の贈り物にも、生花を添えることが多かった。
ただ、「母の日と言えばカーネーション」なので、時期になるとあまりにカーネーションばかりが推されるため
「母の日に、カーネーションはもらいたくない」と言う母でもあった。
それで、花を贈り物にするときも、あえてカーネーションは避け、
薔薇にしてみたり、鉄線(クレマチス)にしてみたり、少し時期をずらしてアジサイの鉢植えを贈ったりしたこともあった。
それでも、久々の生花
それも、虹色や濃い青色といった、珍しい色味のものなら
新鮮なものや、新しいものに飢えている母に、喜んでもらえるのではないかと思った。
今年の母は病院にいるし、飾っておくこともできないので、花束をつくってもらって見せに行こう
そして、職場のデイサービスに飾って、利用者さんたちにも見てもらおう
そんな気持ちで、虹色のカーネーションと青色のカーネーションを選び
定番のもので、色味の合うものも混ぜておきたいと思って、青に近い紫を足してもらった。

めずらしい色合いの花束ができた
花束を抱えて、病室への階段を上がる。
病院という空間で、紙オムツの袋や、飲み物の入ったコンビニ袋ではなく、花束を抱えているのは不思議な気分で、なぜかいつもよりちょっと緊張した。
母の病室には、8つのベッドがある。
そのうち4つは空いていて、母のベッドは他の患者さんのベッドを3つ通りすぎた先にある。
それぞれのベッドを仕切るカーテンは開きっぱなしで、会話はなく、ただゴロリとベッドに横たわっている体と、
広い窓の外に、白っぽい灰色の雨空と、房州の低い山が連なっているのが見える。
「あれ、いらっしゃい」
ベッドで半分、体を起こしていた母が、声をかけてきた。
「ちょっと早い母の日で、花を買ってきたよ」と差し出すと、
「えっ」と、びっくりした表情で花束を受け取り
「うわあ~!きれいねぇ~!」と
目を丸くした。
こんなにきれいな色になるのねえ、と驚く母。
花束に顔を近づけて、香りを嗅ぐ。
「おお~、いい香り」
せっかくだから、花束を持って記念写真とろうよ、と言うと、こちらに花がうつるように花束を抱え、ポーズをとってくれた。

写真を撮ると、「おとなりのおばさんにも、ちょっと見せてあげて」と言う。
ちょうど目を覚ましていたお隣さんに声をかけると、寝ていた体を起こし、花をのぞきこんで
「あらあ、きれいねえ」と、笑顔になった。
さらにその隣の女性も、「作りものかと思ったら、生のお花なのねえ」と驚いて、自宅でカーネーションを育てていた話を聞かせてくれた。
そこへちょうど、職員さんも通りかかったので花を見てもらう。
静まり返っていた病室が、花を咲いたようになった。
「珍しい色のカーネーションを、母に見せたい」という私の思いつきで、たくさんの人が喜んでくれたことが、とても嬉しかった。
シンプルな、カーネーションだけの花束。
ラッピングも、特にしてもらったわけではない。
それでも、珍しい色や香りで、刺激のない病室の日々をちょっとだけあざやかにしてくれる、そんな力が花にはあった。
思いつきを、形にすることで、喜んでもらえたり
思いついたことを、行動に移すことで、嬉しさを分け合えたりする。
🌕小さなことでも、行動に移せるようにしていきたい。
虹色のカーネーションと、母や同じ病室にいた人たちの笑顔とともに、そんな小さな誓いが、ぽっと心に灯った日だった。

カーネーションと言えばこの歌
