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短編小説 再会ー地蔵祭りの夜に

この小説は#シロクマ文芸部に提出のお題小説です
小牧様よろしくお願いします


夏休みには運転免許を取るので、7月20日から帰省していた。
田舎で暮らすには免許は必需品だ。
バスも電車も1時間おきにしか来ない。
都会では考えられないことだが、最近は利用者が減って
昔あった市内循環バスというものもなくなった。

美智子にとって学科の授業は楽勝だった。
問題は乗車練習だった。運動神経が悪いのか?反射神経が鈍いのか?
仮免でも、路上でも一度ずつ落ち、追加料金を何万円も払わされた。
でも、県都の免許センターへ行くと、試験は一発で受かった。
記憶力だけは自信があった。

おかげで菩提寺の地蔵祭りに間に合った。
お金持ちの叔父から、もう大学生なのに1000円ずつもらい、
それをがま口の財布に入れて首から吊り下げて、
菩提寺に妹の由紀子と二人で歩いて行った。

寺に近づくごとに人は増え
寺の前は通行禁止の札が立っていた。

この市の夏祭りの始まりが祇園さんで
次に海の神を祭る宮島さんがあり、盆前に花火大会があり、
その花火が悲しいくらい美しいので
商店街協会が上げる迎え火だという噂が流れているほどだ。

そして、最後を締めくくるのが菩提寺の地蔵祭りだ。

ゆく夏を惜しむように、市内から大勢の人が集まる。
境内にこれでもかというほど露店が並び、
隅の方では木山音頭が流れ、夜が更けるまで踊るのだ。

さっそく美智子と由紀子は、何を買うか相談する。
「わたしはベビーカステラを買うからね」
「お姉ちゃんが半分くれるのなら、私は綿あめが買いたい」
美智子は困った顔をしながらも
「まあ、いいわよ」と言う。

水風船は100円で、これは毎年必ず買うことになっている。
「そんなことよりまず本堂にお参りして、母ちゃんに渡された小銭を賽銭箱に入れて、お願い事をするんでしょう!」と美智子が叱ると
由紀子はそうだったというふうに舌を出し、本堂に向かった。
由紀子は来年大学入試を控えていたので、その願いをする。
少し動くと、肩と肩が触れ合うほどの込み具合だ。

お参りが終わったら、それぞれ目的のものを買い、
まだお金が残っていたので、屋台を物色していた。
流行りの漫画のお面が人気だが、500円では高すぎて買えない。
ウルトラマン・仮面ライダー・アンパンマン・ゴレンジャー
男の子たちが、買って!買って!とおねだりしている。

由紀子が「かき氷があるわ、食べたい」と大きな声を出したとき、

「おい、美智子!そんなに食べたら太るぞ」
後ろから、聞き覚えのある声がする。
振り返ると、正人が笑顔で立っていた。
「お前、元気そうだな、よかったわ。大学に慣れたか?」
デジャヴかと思った。
高校生の時も後ろから同じことを聞かれた。
「うん。楽しんでるよ」
と笑ってはみたが、きっと口元が醜く歪んでいたに違いない。
正人の横には、朝顔の浴衣を綺麗に着こなした女性が立っていた。
軽く会釈をした。しなやかな笑顔が返ってきた。

「そうか!それならよかった。俺もサッカーは卒業して、広島の大学ではラグビーをやってるだ」
「そうなんだ。すごいね」
「お前、結局サッカーの応援に一度も来なかっただろう。県大会ベスト4まで行ったのに・・・」
正人はただの幼馴染だったはずなのに、この倒れそうな衝撃は何?
「妹が待ってるから、またね」と、何でもないように振る舞い、
由紀子はメロン、美智子はレモンのかき氷を買って帰路に就いた。
早くこの場を離れたいと思った。

南の空でアンタレスが光っていて、
この気持ちに美智子は名前を付けることが出来なかった。

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