『老いゆく愛犬と暮らしたかけがえのない日々 ワンコ17歳 2』レビュー・感想|老犬との別れ、その後を描く一冊
「最近、愛犬が寝ている時間が増えた」
「前は簡単にできていたことが、少しずつできなくなってきた」
「老犬介護は大変。でも、いつかこの時間までなくなってしまうと思うと、それも寂しい」
シニア犬と暮らしていると、元気だったころとは違う毎日に戸惑うことがあります。
そして、すでに愛犬を見送った人なら、
「何年経っても、ふとした瞬間に思い出す」
「ペットロスって、いつになったら終わるんだろう」
と感じることもあるかもしれません。
そんな老犬との時間と、別れたあとの時間までを描いているのが、サエタカさんの『老いゆく愛犬と暮らしたかけがえのない日々 ワンコ17歳 2』です。
前作『ワンコ17歳』では、15歳を過ぎて体が思うように動かなくなったワンコが17歳11か月になるまでの日々が描かれました。
続編となる『ワンコ17歳 2』では、そこからさらに時間が進み、ワンコが虹の橋を渡ってから4年後までの「その後」が描かれています。
『ワンコ17歳 2』は老いていく愛犬との時間、別れ、そして姿が見えなくなってからも続いていく愛犬との関係を描いたイラスト&エッセイです。
今シニア犬と暮らしている人はもちろん、愛犬を見送ったあとも気持ちの置き場所を探している人に、特に刺さりそうな一冊です。
『老いゆく愛犬と暮らしたかけがえのない日々 ワンコ17歳 2』レビュー・感想
『ワンコ17歳 2』が特に気になりそうなのは、愛犬が老いていくことや、いつか訪れる別れを頭では分かっていても、まだ気持ちが追いつかない人です。
犬と暮らしている以上、年齢を重ねることは避けられません。
散歩の距離が短くなる。
立ち上がるのに時間がかかる。
トイレを失敗する。
夜中に起きるようになる。
食べられるものが変わる。
以前なら普通にできていたことが、一つずつ難しくなることもあります。世話をする側も、毎日ずっと穏やかな気持ちでいられるわけではありません。
「今日も夜中に起こされた」
「また片付けか……」
そんなふうに疲れてしまったあとで、
「こんなことを思う自分は薄情なのかな」
と落ち込む人もいるはずです。

前作『ワンコ17歳』が描いていたのは、まさにそんな「大変」と「かわいい」が同時に存在する老犬との暮らしでした。
15歳を過ぎて以前のように体が動かなくなってからも、ワンコとの暮らしには大変さと愛おしさの両方があったことが語られています。
そして『ワンコ17歳 2』では、さらにその先へ進みます。
老犬やシニア犬と暮らしている人に刺さりやすい
シニア犬と暮らしていると、どうしても「あと何年一緒にいられるんだろう」と考えてしまいます。
元気でいてほしい。
でも、歳をとってほしくないと願っても時間は止められません。
だからこそ本書は、老犬との生活を「かわいそうな時間」としてだけ見るのではなく、老いたからこそ生まれる時間も、その犬との暮らしの一部として見つめたい人と相性がよさそうです。
愛犬を見送ったあとのペットロスを抱えている人にも
本書には、ワンコが虹の橋を渡ってから4年間の「その後」が収録されています。別れたあとまで物語が続いていることです。
愛犬との別れって、「亡くなった日」で全部が終わるわけではないんですよね。
いつも寝ていた場所を見る。
散歩していた道を通る。
似た犬を見かける。
写真フォルダを何気なく開く。
家族との会話で昔の出来事が出てくる。
そんな瞬間に、何年経っていても突然思い出すことがあります。忘れられない存在と、その後どう暮らしていくのかを描いています。

老犬介護の具体的な方法を知りたい人には違う
一方で、「老犬介護」というキーワードからこの本を見つけた人には、ひとつ知っておいてほしいことがあります。
『ワンコ17歳 2』は、老犬介護のハウツー本ではありません。
たとえば、
シニア犬には何を食べさせればいい?
寝たきりになった犬の床ずれをどう防ぐ?
介護用ハーネスはどう選ぶ?
認知症の症状にはどう対応する?
病院へ連れて行く目安は?
といった情報を体系的に知りたい場合は、獣医師など専門家が監修した老犬介護の実用書を選んだ方が目的に合います。
この本で描かれるのは「どう介護すれば正解なのか」ではなく、「老いていく愛犬と暮らすとはどんな時間なのか」を丁寧に描いています。
『ワンコ17歳 2』はどんな本?前作の「その後」を描いた物語
『老いゆく愛犬と暮らしたかけがえのない日々 ワンコ17歳 2』は、
第1章 老い・別れ・その後
第2章 空翔けるワンコ
第3章 なぐさめてくれるワンコたち
第4章 娘ちゃんの決意
おわりに ~橋の下で~
という構成になっていることからもわかるように、そこにいたワンコが姿を消したあとの家族が浮き彫りになります。

「老い・別れ・その後」まで描かれる
第1章のタイトルは、そのものずばり「老い・別れ・その後」です。
老犬を飼っていると、どうしても「別れ」だけが大きく見えてしまうことがあります。
できれば考えたくない。
まだ先であってほしい。
でも実際には、その日が来たあとも飼い主の生活は続いていきます。
食器が残っている。
リードもある。
毛が一本落ちているだけで胸が詰まる。
何気なく「散歩の時間だ」と思ってから、もう行く必要がないことに気づく。
ペットロスで苦しくなるのは、こうした何でもない日常から犬だけがいなくなる感覚なのかもしれません。いなくなった「その後」を物語の外に置かず、きちんと続きとして扱っているところが大きな特徴です。
姿が見えなくなってからも続いていくワンコとの時間
姿が見えなくなっても「ワンコはそばにいるんだよ」と伝えてくれます。ここが、この本を単なる「老犬とのお別れの本」にしない部分です。
ペットロスについて考えるとき、
「いつになったら立ち直れるの?」
「まだ悲しんでいるのはおかしい?」
と、つい「悲しまなくなること」をゴールにしてしまうことがあります。でも、大切だった存在を忘れられないのは自然なことです。
亡くなってから1年、3年、4年と経っても、
「あの子ならここでこうしていたな」
と家族で話すこともあるでしょう。
忘れるのではなく、存在の仕方が変わっていく。「その後」というテーマからは、そんな読み方ができるのです。
「娘ちゃんの決意」まで描かれる
第4章は「娘ちゃんの決意」。
ここでは内容を詳しく触れません。
この本は大きな事件の結末を楽しむタイプの作品ではありませんが、それでも先に全部知ってしまうより、家族がワンコとの別れを経てどんな時間を過ごしていくのかは、本の中で確かめた方がいいと思います。
老犬介護もペットロスも、犬一匹と飼い主一人だけの問題ではありません。一緒に暮らしていた家族それぞれに思い出があり、それぞれに別れ方があります。そうした「犬が家族の中に残したもの」まで描かれる点も、『2』の注目したいところです。
『ワンコ17歳 2』を読む前に知っておきたいこと

愛犬との別れを経験したばかりなら読むのがつらい可能性もある
『ワンコ17歳 2』では、タイトルどおり老犬との生活だけでなく、別れとその後も扱われます。そのため、最近愛犬を亡くしたばかりの人にとっては、自分の経験と重なりすぎて読むのがつらくなる可能性があります。
無理に「今読まなければ」と思う必要はありません。
本は逃げません。
まだ写真を見るだけでも苦しい時期なら、少し時間を置いてから読むのも選択肢です。逆に、
「同じように愛犬を見送った人の話を読みたい」
「自分だけがいつまでも引きずっているようで苦しい」
という時には、この本の「その後」というテーマが合う可能性があります。
明るい犬エッセイだけを求めている人には重く感じる部分もある
犬のかわいいイラストを眺めながら、ずっと楽しい気持ちだけで読みたい人には少し方向性が違います。作品の中心には「老い」と「別れ」があります。当然、切なくなる部分もあるでしょう。
ただ、悲しい出来事だけを描く本でもありません。
前作でも、老犬介護の大変さと同時に、歳をとったワンコへの愛おしさが大きなテーマになっていました。
悲しさを避けるのではなく、笑った日も、大変だった日も、別れた日も含めて一緒に暮らした時間だったと振り返りたい人に共感できる内容になっています。
サエタカさんはどんな人?『ワンコ17歳』を生んだきっかけ
「サエタカ 本」で検索して、このシリーズを知った人もいると思います。
サエタカさんは、『ワンコ17歳』の飼い主。
長野県安曇野市在住で、ワンコが15歳半を過ぎたころ、SNSで「#秘密結社老犬倶楽部」というハッシュタグを見つけ、自身も投稿を始めたことが書籍につながりました。ワンコが虹の橋を渡ったあとも、老犬と飼い主たちの投稿に触れていることがプロフィールで紹介されています。

15歳を過ぎたワンコとの暮らしを発信
ワンコとの出会いは17年前、新聞の地域情報欄に掲載されていた子犬の里親募集でした。その小さな子犬が歳を重ね、15歳を過ぎて体が以前のように動かなくなってからの暮らしを発信したことが、やがて一冊の本になりました。
17年以上一緒に暮らしていれば、犬は単なる「ペット」という言葉では収まりません。進学したり、仕事が変わったり、家族の環境が変わったり。人間側にもたくさんの変化があります。
その隣にずっといた犬だからこそ、いなくなったあとの空白も大きくなります。

『ワンコ17歳 2』は、愛犬と過ごした時間をもう一度大切にしたくなる本
愛犬が歳をとってくると、
「前みたいに歩けなくなったな」
「介護がいつまで続くんだろう」
と思ってしまう日もあるかもしれません。
そして実際に見送ったあとには、
「あのとき、もっとこうしてあげればよかった」
「もう一度だけ会いたい」
と考えることもあります。
今シニア犬と暮らしている人なら、目の前にいる愛犬との何でもない一日を少し大切にしたくなる。
すでに愛犬を見送った人なら、何年経っても思い出していいのだと感じられる。
『ワンコ17歳 2』が描いているのは、犬の一生の終わりではなく、その犬を大切に思う人の中で続いていく「その後」なのです。
