世界のはじまりの音
昔々。
空も海も、
まだ名前を持っていなかった頃。
世界のはじまりには、
ひとつの音だけが存在していたという。
それは鐘の音にも似ていて、
泡が弾ける音にも、
誰かの子守歌にも聞こえた🫧
暗闇しかなかった世界で、
その音は静かに漂いながら、
星を生み、
海を生み、
風を生み、
やがて、小さな命たちを目覚めさせた。
人々はその音を、
「世界のはじまりの音」
と呼んだという。
──そんな話を、ふと思い出した。
私はたまに、
静かな夜にぼんやりしていると、
世界のどこかに、
その名残がまだ漂っている気がする。
風の音とか。
遠くを走る電車の音とか。
夜中にカーテンが揺れる音とか。
日常の中に紛れて、
「世界のはじまりの音」が、
こっそり残っているみたいに思う。
たぶん人は、
あまりにも大きな音より、
小さくてやさしい音のほうに、
心を動かされる。
だから私は、
誰かを驚かせる言葉より、
深夜にそっと置かれた
あたたかい一言みたいな文章を書きたい。
読んだあとに少しだけ、
呼吸がやわらかくなるような。
そんな音みたいな言葉を、
今日も探している🌌

片桐みかんさんのお題に参加させて頂きました👇️✨️
