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月夜の告白

夜の海は、
昼間とはまるで違う顔をしていた。


波は静かで、
空には大きな月が浮かんでいる。
月の光が海に落ちて、
水面に揺れる道を作っていた。


「きれいだね」


隣で彼が言った。
私はうなずく。
でも、本当は景色なんてあまり見えていなかった。
胸の奥が、ずっと落ち着かないからだ。


彼とは、子どもの頃からの友達だった。


学校も、帰り道も、
気づけばいつも隣にいた。
だけど最近、
彼の隣にいると少しだけ苦しい。


たぶん――
理由は分かっている。


「ねえ」


突然、彼が立ち止まった。
振り返ると、
月の光が彼の背中を照らしている。


「もしさ」
彼は少しだけ笑って言った。


「流れ星が落ちたら、願いごとする?」


私は首をかしげる。
「どうして?」


すると彼は、少し照れたように海を見た。
「願いごと、決まってるから」


波の音が静かに響く。


私は小さく聞いた。
「どんな願い?」


彼は少し黙って、それから言った。
「本当はさ」
「流れ星なんて待たなくても言うつもりだったんだけど……」


そう言って、
まっすぐ私を見る。


月の光が、
彼の瞳に映っていた。
そして、静かに言った。


「ずっと好きだった」


その言葉は、
波の音にまぎれそうなほど小さかった。
でも、ちゃんと届いた。


月の光に包まれた、
それはまるで月夜の告白だった。


胸の奥が、
さっきよりもずっと騒がしくなる。


私は海を見る。
月の光が揺れている。


そして、ようやく気づいた。


さっきから彼が、
ずっと手に何かを握っていることに。


「それ、なに?」


私が聞くと、
彼は少し困ったように笑った。


そっと手を開く。


そこには、
小さなガラスの瓶。
中には――
星みたいに光る砂が入っていた。


「流れ星が来なくてもいいようにさ」
彼は照れくさそうに言う。


「先に用意してきた」


私は思わず笑った。
胸の奥の苦しさが、
少しだけやわらぐ。


私は深く息を吸う。
そして、小さく言った。
「ねえ」
彼がこちらを見る。


私は笑って言う。
「その願い、たぶん叶うよ」


彼は驚いた顔をして、
それからゆっくり笑った。


夜の海に、
静かな波の音が広がる。
月はまだ、
空の真ん中で優しく光っていた。


そして私は、
彼の手の中の小さな瓶を見ながら思う。


きっと今夜、
流れ星なんてなくてもいい。
もう、願いは
ちゃんと届いているから。



今回こちらの片桐みかんさんのお題に

参加させていただきました👇️✨️



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