朝露のオーケストラ
夜明け前。
空が淡い桃色に染まり始めるころ、花畑では誰にも知られていない音楽会が始まります。
指揮をするのは、一羽のうさぎ。
ピアノの前には小さなねずみ。
バイオリンを奏でる虫たちに、ラッパを吹くかたつむり。
ミツバチは羽音でやさしいリズムを刻みます。
でも、このオーケストラで一番大切なのは、楽器ではありません。
花びらや葉っぱの上で輝く、一粒ひと粒の朝露です。
朝露に朝日が差し込むたび、
ぽろん。
ちりん。
きらん。
まるでガラスの鈴を鳴らしたような、美しい音色が野原いっぱいに響きます。
風がそっと吹けば、草花がゆれ、
朝露の音も一緒に歌い始めます。
その音に誘われて、鳥たちもさえずり、
花畑全体がひとつの大きなオーケストラになりました。
けれど、この演奏会は長くは続きません。
太陽が高く昇ると、朝露はゆっくりと光の中へ溶けていきます。
最後の一粒が消えると同時に、うさぎは小さくお辞儀をしました。
観客はいません。
拍手もありません。
それでも、森のみんなは今日も心を込めて演奏します。
きっと誰かが、朝の空気を「気持ちいい」と感じてくれるように。
だから、朝早く目が覚めた日は少しだけ耳を澄ませてみてください。
花畑のどこかで、今日も朝露のオーケストラが、静かに始まっているかもしれません。
片桐みかんさんのこちらのお題に参加させていただきました👇️✨️
