🌙こぼれ月の魔法瓶
夜になると、窓辺に小さなくぼみができます。
そこは、月の涙が落ちてくる場所でした🌙
わたしは、そのくぼみにガラスの瓶を置くのが、毎晩のひそやかな仕事。
おとなりさんには秘密ですし、もちろん学校のお友だちにも内緒です。
この習慣が始まったのは、去年の冬の、とても静かな夜のことでした❄️
理由はよくわからなかったけれど、
月はときどき泣きたくなる夜があるみたいなのです。
ぽとん。
瓶の底に落ちる音が小さく響いたとき、わたしは息をひそめました。
しずくは透明なのに、じっと見つめていると少し赤く光ります。
それはきっと、月が抱えきれなかった寂しさの色なんだと思います🕯
問いかけても、もちろん返事はありません。
けれど、胸の奥で静かに震えるものがありました。
瓶を両手で包むと、不思議なくらい温かくて。
冷たい夜を、ほんのりとかきまぜてくれるみたい。
「さみしい夜は、誰にだってやって来るから。」
返事はないはずなのに、そんな言葉が、心のどこかでそっと灯る気がしました🕯
ベッドに戻ると、瓶を枕元に置きました。
小さな光は、暗がりでふわっと滲みながら、まるで呼吸しているみたいに揺れています。
眠りにつくころ、光はさらに小さくなるんです。
でも、完全に消えたことは一度もありません。
それは、願いを叶える魔法なんかじゃありません。
それよりずっと、優しい魔法──。
今日、泣きたいことがあったとしても
明日の朝が、すこしだけ優しい色になりますように。
そんな小さな願いに寄り添ってくれる魔法瓶でした。
月が泣いた夜は、わたしの心もひっそり泣いてしまうけれど、
そのぶんだけ、灯りはあたたかくなるのです🌙
いつか、大きくなって夜を超えるころ、
この魔法瓶のことを思い出してくれたらいいな。
誰かの夜にも、小さな灯りがそっとともりますように──🌙✨
こちらの企画に参加させていただきました🌷✨️⬇️
