『梅雨の傘の内側で』2025/6/13
雨しずく 肩に紛れて 泣けぬまま
傘の内側 ひとりの匂い
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梅雨の午後。湿った空気と、冷たい雨粒。
泣けるほど悲しかったわけじゃないのに、
なぜか涙だけは、ずっと出てこなかった。
傘の内側に残っていたのは、もうここにいない人のぬくもりと匂い――
そんな、梅雨の始まりに近い日のイメージです。
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《詩》*梅雨の傘、すこしだけ空いた左側*
梅雨の雨は 優しいふりをして
じわじわと 心の奥まで濡らしてくる
風が弱くて 音も小さくて
なのに ずっと降り続く
今日の帰り道
わたしはまた ひとりで傘をさしていた
思い出すのは あの人の傘
ふたりで並んだとき
少しだけ 左側をあけてくれたこと
もういないのに
まだ癖で そちら側に寄ってしまう
梅雨の匂いと一緒に
ふっと香る あの人のシャツの柔軟剤
泣くほどのことじゃないけれど
泣けなかった
雨しずくと わたしの境目が
もう わからなかった
