星くず市場
星には、 ひとつずつ違う願いが宿っている。
だから女の子たちは今日も、 お気に入りの星を探しに行く。
その市場は、夜の十二時を過ぎると現れる。
最近、同じ年代の子たちの間では、
「星くず市場のヘアピン」が流行っていた。
夜になると現れる不思議な市場で、
自分の願いに合った星を選び、 ヘアピンにつけてもらうのだ。
ピンクの星は恋のおまじない。
水色の星は、眠れない夜のお守り。
金色の星は、少しだけ勇気をくれる。
他にもいろんな星がある。
「昨日、白い星つけたら好きな人と話せたんだって!」
そんな噂まで広がっていて、 学校でも星の話をする子が増えていた。
けれど私は、 そんなもの本当に効くのかなぁと思っていた。
その夜までは。
帰り道。
細い路地の奥に、 見たことのない灯りが揺れていた。
ふわふわ浮かぶランタン。
きらきら光る瓶。
夜空を溶かしたみたいな青い布。
そして、 小さな看板。
── 星くず市場 ──
「いらっしゃい」
店番をしていたのは、 大きな帽子をかぶった小さな女の子だった。
「ヘアピンを探してる?」
並べられた星は、 どれも宝石みたいに綺麗だった。
私は、そっと一つを手に取る。
淡いラベンダー色の小さな星。
「それ、珍しい星だよ」
「どんな願いが叶うの?」
店番の女の子は、 少しだけ考えてから笑った。
「“明日の自分を、ちょっと好きになれる星”」
なんだか変なの。
恋が叶うとか、 可愛くなれるとかじゃないんだ。
でも。
なぜかその星から、 目が離せなかった。
帰るころには、 新しいヘアピンが髪の横で小さく揺れていた。
夜風が吹くたび、 ラベンダー色の星がきらりと光る。
明日は、 少しだけ楽しい日になるかもしれない。
そんな気がした。
そして今夜も、 星くず市場は静かに賑わっていた。

片桐みかんさんのお題に参加させて頂きました👇️✨️
