星くずの配達人
夜空が一番深く、群青色に染まる頃。
丘の上の小さな「POST」の
看板の灯りがパチリと点く。
局長のキツネ・アルクは、
年季の入った革鞄を肩にかけ、
とびきり輝く星の結晶を一つ手に取った。
「さあ、今夜の配達だ」
彼が外へ出ると、
すでにそこには
**「たんぽぽ飛行船」**が待機していた。
大きな、大きな綿毛を気球代わりにした、
小さな木造の船。
その甲板からは、
数え切れないほどの綿毛たちが、
あたたかな光を放ちながら
夜空へ旅立つ準備をしている。
「局長、準備万端だよ!」
小さな綿毛たちが合唱する。
アルクは満足げにうなずくと、
足元の石畳に広げられた
**「消えた王国の地図」**を見つめた。
その地図は不思議だ。
描かれているのは誰も知らない、
古びたお城の姿だけ。
けれど、アルクが手に持つ
星の結晶を近づけると、
地図の中の小さなお城の窓に、
ポッと、明かりが灯ったのだ。
「なるほど、今夜はこのお城だね」
アルクがニヤリと笑うと、
それを合図に「たんぽぽ飛行船」は
静かに空へ浮かび上がった。
飛行船から放たれた光る綿毛たちは、
天の川の波に乗って、
夜空の「空白」へと吸い込まれていく。
彼らが向かうのは、
地図にも載らない、
誰も知らない場所。
けれど、今夜だけはアルクたちの心に、
そのお城がはっきりと見えていた。
「大丈夫。どんなに遠くても、この光は必ず届くよ」
アルクはそうつぶやき、
夜空を駆ける光る綿毛たちを、
いつまでも静かに見送っていた。

片桐みかんさんのお題に参加させていただきました。
良かったら皆さんも参加してみてくださいね👇️✨️
