空にひらく小さなドア
夜明け前の空に、小さなドアが浮かんでいた。
それを見つけたのは、毎朝早く町を回る郵便配達員だった。
雨の日も風の日も、空を見上げながら自転車をこぐのが習慣だったけれど、その朝だけは違った。
雲のあいだに、青い木のドアがぽつんと浮かんでいたのだ。
「……夢かな」
そうつぶやいたとき、一枚の白い封筒が空から落ちてきた。
封筒には、小さな字でこう書かれていた。
――空にひらく小さなドアを、ノックしてください。
次の瞬間、足元に雲の階段が現れた。
恐る恐る上るたび、昔の思い出が胸によみがえる。
夏休みの夕焼け。秘密基地。会えなくなった友達。
気づけば、目の前に小さなドアがあった。
そっと開けると、その先には草原の真ん中に小さな郵便局が建っていた。
看板にはこう書かれている。
「届かなかった気持ち、お預かりします」
中から出てきた白い髭のおじいさんは、小さな手紙を差し出した。
宛名は、郵便配達員自身だった。
開くと、子どもの頃の字でこう書かれていた。
『大人になっても、ちゃんと空を見ていてね』
郵便配達員は、少し笑って、少し泣いた。
空にひらく小さなドアは、遠くへ行くためのものじゃない。
忘れていた自分に、もう一度会いに行くためのドアなのかもしれなかった。
片桐みかんさんのお題に参加させて頂きました🍊✨️

いつも癒される素敵なイラストありがとうございます🙏✨️
