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ポケモンはいつもそばにいて

転職して1年経った職場で、気付けば後輩たちからポケモンの進捗がLINEで送られてくるようになった。

「ケーシィ捕まえるといいですよ!」「シルフカンパニーのひでんマシンは全部回収しました?」とアドバイスが送られてくる始末だ。わたしがあまりにも毎晩気絶するように寝るものだから、彼らが驚くほどの遅さでファイアレッドを進めている。それを見守ってくれているのが5個下の彼らだ。去年の新卒の女の子とは、ぽこあポケモンの話をして、4個上の先輩とは最近のポケモン事情を話した。わたしの聴診器には、ウインクをしたピカチュウがぶら下がっている。「それピカチュウでしょ、孫が好きなのよ」と患者さんであるおばあちゃまが声をかけてくださったこともあった。

そんなふうにポケモンは、この世に実在していないはずだが、ちゃんと日々の中に生きている。

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平成9年早生まれ。気付けばいつも、そばにポケモンがいた。初めてプレイしたのはルビー/サファイアだったし、初めて観に行った映画はラティアスとラティオスだったと記憶している。翌年に観たジラーチの映画は特に覚えていて、同時上映された作品に出てきた「ノルカ♪ソルカ♪ポルカおどるか♪」ではじまる「ポルカ・オ・ドルカ」は今でも歌えるくらいだ。母と一緒に映画を観て、トイザらスでジラーチをもらって、という流れまで覚えている。入院中にテレビで観たピカチュウの真似をしてベッドの上で「ピカ〜!」と伸びをしたことも。実家にはピカチュウとマリルの大きなぬいぐるみがあって、手のひらに載せるには少し大きいくらいのチコリータに至っては2匹もいた。それほどに、ポケモンは身近な存在だった。


それなのにいつのまにか、ポケモンが身近ではなくなってしまっていた。

リーフグリーン/ファイアレッドをプレイしたところまでの記憶はあるのだが、次にリリースされたエメラルドは買っていない。調べてみたら、2004年でわたしのプレイは途絶えている。7歳の頃だ。その後に出ているダイヤモンド/パールをはじめとしたオーソドックスなポケモンのRPGだけでなく、不思議のダンジョンシリーズなどがあったことも知っているが、自分でやったことはなかった。だんだんゲームをする女の子が周りからいなくなってしまったのだろう。昔はあんなに大好きだったのに。

それが急展開を迎えたのは、ここ数年のことである。とあるゲーム実況動画をきっかけに、ポケモンのゲーム実況を観るようになった。
プレイする才能があるほうではなかったので、上手な人がスイスイと進めていくのを観るのは楽しい。それに、わたし以上の愛をもってポケモンと向き合い、深い敬意を持ってプレイしているのが伝わるのが嬉しかった。粘りに粘って勝利を収めた瞬間には声を上げて喜んだし、名作と名高いポケモン秘密のダンジョン「空の探検隊」を観ていたときは深夜2時にもかかわらずタオルを握りしめてワンワン泣いた。いつのまにかまた、ポケモンが少しずつ身近になっていった。

極め付けは去年、ポケモンfitを買ったことだ。
SNSに疲れてしまっていた頃、タイムラインを浄化すべく眺めていたのが「 #ポケモンfitのいる生活 」というタグだった。色々な人が思い思いのポケモンと生活しているのを見るのが楽しかった。わたしもポケモンと生活したい!と思い、ポケモンセンターを3軒ハシゴしてゼニガメをお迎えしたのが去年のこと。ゼニちゃんと呼んでは愛で、通勤カバンにこっそり潜ませて生活するようになってから、生活が色を増した。

店舗では見つけられず、結局オンラインで。
届いた瞬間の高揚感を、今でも
手に取るように覚えている

ちょうど引越しと転職から1ヶ月半ほどが経ち、緊張こそしなくなったものの、ヘトヘトになっている頃だった。新しく出会った人たちは皆良い人だったが、だからこそその期待に応えたいと思ってしまうから、ずっと気を張っていたように感じる。そういうときに職場のロッカーでチラッと顔を見せてくれるゼニちゃんが、わたしの癒しだった。大丈夫、ここにいるよ、と言ってくれるみたいで。

通勤だけに飽き足らず、一人で旅行する時も、夫と二人で旅行する時も連れて歩くようになった。今年の春には、ポケモンセンターで一目惚れしてウパーをお迎えした。ウパまると呼んで愛でている彼のことも、わたしは同じくらい大事に思っている。ゼニちゃんの意思の強い目とまんまるな後ろ姿が好きだし、ウパまるのぽってりとした感じと、ニパ♪と音符がつきそうな笑顔がだいすきだ。彼らは何かを言ってくれるわけではないし、ポケモンの世界みたく、なみのりなんかで役に立ってくれるわけではない。それでも、ただそこにいてくれることが嬉しい。

ポケモンの素敵なところは、誰のことも置き去りにしないことだ。わたしみたいに何年もポケモンから遠ざかっていた人のことだって簡単に呼び戻すし、知らないポケモンが数多いることはまだ出会っていない存在が沢山いる喜びになる。深い愛をもった人たちからすればわたしは所謂「ニワカ」だが、そういうのは、関係ない。わたしは、わたしの愛し方があるだけ。
それに、年代が違っても、愛し方が違っても、ポケモンはすべてを受け入れてくれる。街ですれ違った人がカビゴンのキーホルダーを着けていたり、イーブイが印刷されたTシャツを着ているのを見ると「オッ」と思って嬉しくなる。日々にそういう楽しさが増えた。職場の人をはじめ、ポケモンをきっかけに話す機会が増えた人たちがいることも嬉しい。


ポケモンfitをきっかけに再燃したわたしのポケモン熱は徐々に加速している。全国各地に公式ポケモンと呼ばれし選ばれた子たちがいると聞けば旅行の目的の一つとしてグッズを買い、Switchでポケモンの特集号が出ると聞けば書店をハシゴした。最近は朝、支度をしながらぽこあポケモンの実況を観て、夜眠る前にちまちまファイアレッドをプレイしている。気分で二人のどちらかをお供に選んで通勤し、仕事の昼休みにはコッソリと覗いてニヤリとする。

ヌオーが公式ポケモンならば!と
ウパまると一緒に高知へ

ポケモンに出会い直してから、毎日がちょっとずつ嬉しい。いつもそばにいてくれて、離れてしまっても、惹かれていても、同じ熱を帯びてそこにいる。まだ日々が続くのだ。わたしの旅は終わらない。


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