セレンディピティは誰も救わない〜偶然は平等に起きるのに、差が生まれる理由
あなたは最近、思いがけない出来事に
「意味があった」と感じたことがありますか?
それは、「偶然」だったと思いますか?
では、同じような偶然が、
あなたの隣にいる人にも起きていたとしたら
なぜその人には、何も起きなかったのでしょうか?
逆もあります。
あなたの隣で、誰かが面白い出会いをしてチャンスを掴んだ。
同じ場所にいたはずなのに・・・
同じ話を聞いていたはずなのに・・・
その差を、「あの人は運が良かっただけ」で片付けてきませんでしたか?
もしそのあなたの言葉に、
少しでも悔しさが混じっているのだとしたら、
この記事は、あなたに向けて書いたものです。
世界は、すでに編集されている
認知科学者の苫米地英人さんと、現代美術家の村上隆さんの対談を聞いていて、妙に腑に落ちた話がある。
「人は、ゴールがなければ何も認識できない」
これは認知科学の話だ。私たちは目の前の世界を"ありのまま"見ているようでいて、実際にはそうじゃない。脳は、自分の中にあるゴール(目的・関心)に応じて、膨大な情報を無意識に選別し、"見える世界"を組み立てている。
つまり、世界はつねに「編集された状態」で立ち上がっている。
『カラーバス効果』として有名な話だけど、赤い車を買おうと決めた瞬間から、街の赤い車が目に飛び込んでくるようになることがある。これは『選択的認知(注意)』であり、決して世の中に赤い車の数が増えたわけじゃない。自分のゴールが、認識のフィルターを書き換えたってことなんだよね。
この話を聞いて、僕はすぐにセレンディピティのことと結びついた。
偶然は、あとから意味になる
セレンディピティという言葉を、僕は以前のnoteでこのように再定義した。
「セレンディピティとは
偶然を"意味ある発見"へと変換する構造である」
これはウォルポールが1754年に書いた手紙に遡る。彼はセレンディピティを「Accidents と Sagacity によって、探していなかったものを発見すること」と書いた。
重要なのは、" Accidents(偶然) "だけじゃないという点だ。
そこに" Sagacity(才気)"が加わる。
洞察力でも好奇心でもなく、『才気』という少し曖昧な言葉を僕は気に入っている。なぜならその曖昧さが、「違和感に気づく力」「点と点を結びつける想像力」「意味を保留したまま持ち続ける持続力」など、そういった複数の認知の働きを包み込んでいるからだ。
そして苫米地さんの話に戻ると、この"才気"が発動するためには、心の中にゴールがあることが前提になると気づき、僕の中で色々と結びついた。
ゴールがあるから、関係なさそうな出来事に"引っかかり"を覚えるようになる。引っかかりがあるから、拾い上げる。拾い上げるから、意味が生まれる。意味が生まれるから、行動が変わる。
(そして、行動が変わるから、ゴールの解像度が上がり、引っ掛かりが増える・・・という、僕が過去に"確変状態"と呼んでいた状態に入り出すわけ)

同じ偶然が全員の前に転がっていても、気づく人と気づかない人がいる。つまり、その違いは、運の良し悪しではなく、「自分の中に何があるか」ってことだよね。
「主語」がなければ、何も起きない
では、"ゴールを持つ"とはどういうことなんでしょう?一つ言えるのは、それは「自分で決めているか」ということだと思います。
・何が重要なのか
・何をめざすのか
・何を意味あるものとして拾い上げるのか
これらを、自分の中で引き受けている状態。
僕はそれを"自分を主語にしている"状態と呼んでいて、僕の会社Catalyskiがこだわっている価値観でもある。企業という組織の中であっても、社員一人ひとりが自分を主語にして働けるように、理念づくりや組織開発を支援していたりします。
多くの場合、私たちはこの主語を他人に委ねてしまう。会社や社会、所属部署や上司の評価軸に合わせて、周りの期待に応えて、「なんとなく正解っぽいこと」を選び続ける。その状態では、脳のフィルターは他人のゴールで組み立てられている。
自分のゴールがないのだから、自分のセレンディピティは起きない。当然の話なんですよ、それって。
セレンディピティは、分岐である
ここで、少しだけ残酷な話もしたい。
セレンディピティは、誰も救わない。
もう少し丁寧に正確に言うと、「全員を均等に救うものではない」。
だって、この考え方は人を選びますから。
なぜって?これは優しく手を引く思想ではなく、構造を差し出す思想だからです。
出会いがあっても、気づかない人がいる。
気づいても、意味をつなげられない人がいる。
つなげても、動けない人がいる。
どこかで止まれば、その時点で何も起きない。

逆に、反応する人には連鎖が起きやすい。
一つの偶然が次の偶然を呼び、
気づきが積み重なり、ある日突然
「あの出来事はこういう意味だったのか」と
線がつながりだす。
幸せの総量は増える。でも均等には増えない
僕はこのセレンディピティを知る人が増えることで、「(世の中の)幸せの総量を増やせる」と本気で思っています。ただし、一つ意図して伝えてなかったことがあるんです。
それは「全員を均等に引き上げる」という意味ではないってこと。
触媒という言葉があります。化学反応において、それ自身は変化せず、反応を促進する物質のことです。セレンディピティは、そういうものだと思うんです。
反応する人には一気に変化が起きるかもしれない。
0が+10になったり、×10いや、それ以上になることだってある。でも、反応しない人には何も起きない、0のまま。
この構造は、分布を歪ませます。
「幸せの総量を増やす」と言ったけど、全員が+1するとは限らない。むしろ、これを読んで動き出した人だけが "増える" 。それが、正直なところです。
構造は開かれている。ただし、使う人にだけ
「だから諦めたほうがいい」という話をしたいわけじゃない。
ただ、これは言っておきたくて。
僕はこの発信を、あまねく人に届けようとは思うのをやめました。少なくとも届かない人がいることを気にするのは、一旦やめた。
今の世の中を絶望的に感じている人が、この話を聞いたとき、綺麗事に聞こえると思うんですよね。「それなりに恵まれた立場の人が言ってる話だよね」って思うと思うんだ。そして、それは、たぶん正しい。自己実現に意識が向けられているということは、少なからず衣・食・住における心配がないってことだから。これってすごく幸せなことで、それどころじゃないって人も沢山いる。
だから、今の時点では、
この文章が刺さる人に、まずは届けばいい。
ピンと来た人だけが、まずは読んでくれればいい。
セレンディピティという構造は、使いたい人にしか機能しない。能力でも才能でも環境でもなく、「使おうとするかどうか」だけが分岐点だから。そこに興味がわかない人を説得しようとは思っていないし、今その人に割く時間は僕には無い。ついてくるかどうかは、あなた次第ってことです。
『キャズム理論』という概念がある。その理論の中で、新しい考え方を最初に試す、イノベーターとアーリーアダプターと呼ばれる人たちが存在している。その理論を借りるなら、僕の発信は、そのような人たちに向けて書きたいんだ。そこにピンと来ない人は、放っておいていい。これは冷たさじゃない。"解像度が上がった"、ということなんです。
ただし、ここで言うイノベーターとは、最初から"できる人"のことじゃないです。ビジネスで一線を張っているリーダーたちの中には、セレンディピティという言葉を、仮に知らなくて使っていなくても、その行動原則を空気を吸うように自然にやっている人もいる。そういう人たちに、この話は必要ない。だって、もう実践してるから。(まぁ、「自分がやってきたことが裏付けられた」というコメントをいただくことがあって、それはそれで嬉しいんですけどね)
じゃあ、誰に届けたいのか?
僕が話したいのは、もう少し手前にいる人たち。
なんとなくモヤモヤしている。このままでいいのかと燻っている。何者かになりたいのに、なれていない気がしている人たち。
僕自身が、ずっとそっち側にいたし、今もいる。だから、そんな人に言いたい。「三上でもやってるんだから、あなたもやればいいよ」って。
ある意味で残酷なエールを送ろうと、これを書いています。
同じ世界にいて、違う景色を見る
世界は、変わらない。
街に転がっている出来事の数は、みんなにとって同じだと思うんだよね。誰かが特別に幸運な偶然に恵まれているわけじゃない。
変わるのは、いつも認識の方だ。
そして認識が変わったとき、
自分の中にゴールが生まれ、主語が自分に戻り
構造が動き始めたとき、
同じ世界の中で、まったく違う景色が立ち上がる。
その時、それを「偶然」と呼ぶか、
「必然」と呼ぶのかは、あなたが決めればいい。
ただ一つ確かなのは、その違いは外側ではなく、内側から生まれているということ。そして、この内側を動かそうとしている人にだけ、セレンディピティは機能する。
何度も言うけど、セレンディピティは降りかかってくる幸運じゃない。全員に平等に与えられる恩寵・恩恵でもない。構造を育てた人が、偶然を価値に変えていく、それがセレンディピティの少しだけ残酷な本質であり、だからこそ僕は望みを感じた。そして魅せられてしまったのです。
No.076.
セレンディピティは、誰も救わない
〜偶然は平等に起きるのに、差が生まれる理由
Fin.
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このnote記事について、AIによる音声解説もセットで提供しています。
記事の読み上げではなく、あらすじや、評論、時に記事に書いていないことを補足しながら解説していますので、音声配信とセットで視聴していただくと、さらに理解が深まる・・・そんな構成になっています。
こちらも併せてお楽しみください。(17分26秒)
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