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059.ロード・オブ・ザ・リングウォッチ──過去に眠る価値と取り合わせの魔法

このnoteは、投稿の内容を読んだラジオパーソナリティーが対話形式で、解説をしていくポッドキャスト風の音声配信もセットで視聴いただくことができます。

記事をマルっと読み上げるわけではなく、パーソナリティーがこの記事の感想を交えながら抜粋したり、時に記事に書いていないことを補足しながらお話ししてくれていますので、目と耳の両方で視聴すれば、さらに理解が深まる・・・そんな内容になっています。

冒頭の1:30を下のプレイヤーから体験視聴できます。

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💡 059. keyword は 👉 『指輪パイプ』
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それでは本編スタートですっ!



🔻 リングウォッチって知ってる?

先日、CASIO のリングウォッチ『CRW-001G-9JR』を買った。この商品は、時計事業50周年を記念する企画の"締め"として登場した製品のゴールドカラーバージョン。

文字通り、指にはめるタイプの時計。これはもう、見た瞬間に「買うしかないでしょ」と思ったやつだ。なぜかというと、僕はガチャガチャ版のリングウォッチの"元ユーザー"だったのです。

今回は、『ロード・オブ・ザ・リング』ならぬ、『ロード・オブ・ザ・リングウォッチ』。この指輪型時計にまつわるセレンディピティについて解説していきます。


🔻 ガチャから始まった、僕の"小さな物語"

僕らの世代って、G-SHOCK全盛期に育った。雑誌でも街でも必ず目に入ってくる存在で、気づけばCASIOのデザインは身体に染み込んでいる。

そんなある日、ふと見つけたのが『CASIO ウォッチリング コレクション』というガチャガチャ。なんかミニチュアで妙に可愛いし、異様に再現度が高い。

完全に吸い寄せられて回したら……一発目でシークレット。嬉しさのあまり毎日のように付けていた。でもしばらくして盤面が外れて壊れてしまい、めちゃくちゃ落ち込んだ。

その時、「これ、本物が出たら絶対買うのになぁ……」と思ってたんだよね。(※当時、壊れた悲しさをインスタで投稿したら、それを見た方が、ガチャをしてくれたのかな、同じものをプレゼントしてくれました。それはもう大事に保管してあります。この場を借りて改めてお礼を。ありがとうございます。)

で、それから半年〜1年くらい経った頃だったと思う。スマホを見ていたら、ふとこんな文字が目に飛び込んできた。

「CASIO、リング型時計を発売」(2024.12)

「いや、ほんとに出すんかいっ!」って思わず声が出た。でも気づいた時には既に遅しで、申込は終了してた。それ以来、リングウォッチの亡霊に取り憑かれっぱなしなんです。それから、さらに1年が経った2025年10月、今度はそのゴールドカラーの新色の限定発売が発表になり、ようやく手に入れることができました。


🔻 想像以上に面白い"偶然の重なり"と開発秘話

このリングウォッチ、てっきりCASIOが社内で考えた企画だと思っていた。でも調べてみると全然違った。

アイデアを生んだのは、カプセルトイメーカー「スタンド・ストーンズ」の沢登さん。大手玩具メーカーを辞め、仲間と独立してトイ事業を始めた人。そして何より、本人がCASIOの時計を集めるガチのファン。いつかCASIOのカプセルトイを作りたいと思っていたそうです。

その沢登さんが、ある日、運転中に自分の"結婚指輪"を見て、「あれ?指輪に時計つけたら可愛くない?」と突然ひらめいたという。

これ、僕がよく話してきた、アイデアのセレンディピティが生まれる場所『 4B 』" Bus =移動中 "の典型例。アイデアは机の前じゃなく、生活の隙間に転がっている。しかも着想源が結婚指輪。非日常的なものではなく、ある意味で日常の象徴みたいなものが、急にCASIOとつながるのが最高だ。

さらに沢登さんは、思いつくだけじゃなく、
勝手にサンプル作って
カシオに持っていき
「こういうの作りたいんですけど」

って言ったらしい。ザ・行動力エグい‼️

この情熱が、僕が以前紹介したセレンディピティの方程式『EPCA(エプカ)』A(Actionability)に振り切ってる。方程式については、詳しくはこちらをどうぞ。

結果、「CASIO ウォッチリングコレクション」は、社員も買いに走るほどに、SNSでも話題になり大ヒット。2023年3月に第1弾、2024年4月に第2弾、2024年12月に第3弾が発売と次々シリーズ化されました。その後、2025年6月には第1弾の再発売までされちゃいました!

SNSでは僕と同じく、「本物が欲しい」という声が続出していたんだって。その熱量を見たCASIOが「本物を作ろう」とスイッチを入れたわけです。


🔻 そして、実はCASIOにあった"指輪"のDNA

僕が調べていて、今回一番しびれたのが、実はココ👇なんだけど、CASIOは1970年代に"たばこを挟める指輪"を作っていたらしい。

正確にはカシオ計算機の前身にあたる、樫尾製作所時代。その名も『 指輪パイプ 』。当時はまあまあ真剣に便利グッズで、「移動しながら吸える便利アイテム」みたいな世界観で、今見ると、レトロ未来的なデザインで普通におしゃれ。

カシオ計算機の前進である樫尾製作所で開発

これを見た瞬間確信し、声が漏れ出た。

「ここで"伏線回収"かぁ・・・」

指輪に"何かの機能"を載せる発想は、半世紀前からCASIOに根付いていた。狙ったわけではないんだろうけど、結婚指輪からの着想も、ガチャからの人気も、本物化へのジャンプも、"指輪というフォーマット"が会社に眠っていたから、辻褄が合ってしまったことで起きたとも言える。

つまり、リングウォッチが生まれたこの『指輪物語』は、半世紀の時を超えて回収されたってわけ


🔻 イノベーションは"取り合わせの魔法"で生まれる

このエピソード、めちゃくちゃイノベーションの本質を突いている。
(※ここでは、イノベーションの規模感とかを議論するつもりはありません。ここで言いたい『イノベーション』というのは、新規性のあるアイデアで、お客様に受け入れられるような、新しい取り組み・プロダクトを生み出したこと、くらいの意味合いでご覧ください。)

僕のこれまでの経験上、「外の風 × 中の種」が共創のきっかけになる可能性は高い。一般的に、製品って「企業の中で企画されるもの」と思っている人が多い。でも今回の"本物のリングウォッチ"までの経緯と順番はこうだ。

外の人の着想(沢登さん)
ガチャとして外で大ヒット
SNSで盛り上がる(ファンの声)
カシオ内部が動く
製品化

つまり、「外部の偶然 → 内部の技術 → 新しい価値が生まれる」という流れなんだよね。これ、しかも結婚指輪から着想を得て、CASIOの時計を指輪にしてしまうアイデアは、まさにイノベーションの王道である『新結合』=異なる要素を組み合わせることで完全に起きてる。

前々から思っているんだけど、この『新結合』という考え方は、日本人の"取り合わせ"の美学・センスとして、僕らに本能的に埋め込まれている感覚だと信じていて、まさにこれも、そうやって生まれたプロダクトだ。

結婚指輪 × カシオのデザイン × カプセルトイ
外部の企画 × 内部の技術
ガチャ × 老舗ブランド × SNSの熱量
昭和のたばこ指輪 × 令和のカルチャー
・・・

これらすべて、異なる素材を"編集"して組み合わせたもの。この組み合わせの濃淡・塩梅・匙加減で、色々な個性が生まれる。これは僕がずっと好きな日本文化の美意識でもある。

茶の湯でも、和食でも、俳句でも、着物でも、庭園でも、素材の価値は"取り合わせ"次第でさらに深まる。お茶の道具の取り合わせ、器と料理の取り合わせ、季語の取り合わせ、色や柄の取り合わせ・・・。やりすぎず、崩しすぎず、余白があり、遊びがあり、絶妙なバランスがあること。これを"粋(いき)"と呼んできた。これ、完全に"組み合わせのセンス"の話でしょ?だから、日本はもともと『新結合を嗜む民族』だと本気で思っているんだよね。


🔻 『EPCA』の方程式に当てはめてみる

この一連の話って、先述のセレンディピティの方程式『 EPCA 』(Exposure / Processing / Comprehension / Actionability)の構造に、ぴったり一致する。わかりやすく三者の視点から、『EPCA』の方程式に準えて、見てみると、構造がクリアになるので、やってみましょう。

① 僕(三上)の EPCA

E(Exposure)👉 ガチャとの出会い/SNS/発売記事
P(Processing)👉 G-SHOCK世代の蓄積/CASIO愛
C(Comprehension)👉 「本物が欲しい」という意味づけ
A(Actionability)👉 ガチャを回す/抽選に飛びつく/ゴールド版購入

② 沢登さん(外部企画者)の EPCA

E 👉 結婚指輪/移動中のBus時間
P 👉 CASIOデザインの理解/カプセルトイの経験
C 👉 「指輪×時計は絶対可愛い」という直感
A 👉 試作品を勝手に作る/CASIOに持ち込む

③ CASIO(企業側)の EPCA

E 👉 外部からの提案/SNSの反応/社員の購買行動
P 👉 技術蓄積/“たばこ指輪”というルーツ
C 👉 「これは本物で出す価値がある」という判断
A 👉 製品化を決定/50周年の締めに選ぶ

あくまで一例だけど、こうやって分解してみると面白い。ただただ、偶然が重なっているように見えていたものが、よく見ると、内部に眠っていた種が、外部の刺激で発芽するという構造になっている。人も企業も、もう完全に、「偶然 → 編集 → 意味 → 行動」の流れそのまんまなんだ。


🔻 最後に:偶然の点が"線"になる瞬間

ガチャを引いた日、壊れて悲しかった日、発売を見逃した日、新色を手に入れた日・・・その裏には、沢登さんのBusでのひらめきがあり、SNSの熱量があり、過去にはCASIOの指輪のDNAがあって、EPCAの構造がいくつも重なり、螺旋のように渦巻いているように僕には見えます。

リングウォッチは、僕にとって"ただの時計"ではなく、偶然が意味に変わるプロセスそのものだった。偶然は思いがけないタイミングで、勝手にやってくる。でも、それを線にするかどうか、そしてどんな線にするかは、僕たち自身による『人生の編集』でもあるんだ。

だからきっと、この本物のリングウォッチを買ったのは偶然ではなくて、"必然"だったと思うことで、僕の人生は味わい深く楽しめるようになる。

偶然の点を線に変える編集とは、過去に眠る価値を再発見し、未来の物語を創造する力のことなのかもしれません。

今だからこそ気づけるかもしれない
『あなたの過去に眠る価値』は何ですか?

ぜひ、DMやコメントで教えてください。楽しみにしています。


最後までご覧いただきありがとうございました🙇
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三上浩紀:Catalyski CEO | セレンディピティオタク| 点と点をつなぐ人 | 8枚の名刺 いただいたサポートは、私の知見を広げてくださる出会いとの交流に充てます。具体的には、お茶代、本代、もしくはここで繋がった方とのコミュニケーション代などです。それをnoteへの投稿で還元していきたいと思います。

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