アンナ・カリーナに憧れて
ブリジット・バルドー、ジェーン・バーキン、カトリーヌ・ドヌーヴ…数多くいる60年代フランスのファッションアイコンの中で、私が一番憧れた(もちろん今も!)のは「アンデルセンのおとぎの国の女の子」アンナ・カリーナだった。
アンナ・カリーナは、デンマーク・コペンハーゲン出身の女優。10代で単身フランスに渡り、女優としてのキャリアを切り拓いた。アンナ・カリーナという芸名はココ・シャネルから与えられた名前だ。
1960年代のフランスで、新しい映画を生み出そうという若手監督たちの運動「ヌーヴェル・ヴァーグ」の旗手だった映画監督ジャン・リュック・ゴダールのミューズとして活躍した。
記事冒頭の「アンデルセンのおとぎの国の女の子」という言葉は、ゴダールとのスキャンダルがすっぱ抜かれてショックを受けるアンナを慰めるために、花束を持って彼女の家を訪れた際のゴダールの台詞「アンデルセンのおとぎの国の女の子が涙なんて流してはいけないよ」から来ている。アンナはその言葉に心を打たれたらしい。そのおかげで後の名作は生み出された。
当時のパートナーだったゴダールが撮る映画の中のアンナ・カリーナはとんでもなく魅力的だった。当時の整った顔立ちの女優と比較すると、正統派の美人という扱いではなかったかもしれないが、スクリーンの中でくるくる変わる表情がキュートで、自由奔放に歌って踊る姿は50年以上前の映画とは思えないフレッシュさがあった。

ファッションの道を志していた高校時代の私は、札幌の地下街で買ったトレンチコート、赤いカーディガン、チェックのスカートを着て、それより高いお金を出して買った本「ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代(3000円くらいした、高校生的には大きな出費)」を熱心に読んだ。映画の衣装は蚤の市で安く買い揃えた、との記載を見つけたときは「ほらね!」という気分になった。ハイブランドが載っている雑誌を読んではその価格にため息をついていたけど、服の値段は関係ない、着る人が魅力的ならどんな服でも魅力的に映るんだから、と。
ところで、時は流れて2021年。アンナがこの世を去ってから1年半後、私の応援する、「赤」がシンボルカラーのサッカークラブにデンマーク人選手が2人も入団した。
高校生の頃は、アンナになりたくて着ていた「赤い服」が、今はまた違った意味を持っている。

