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くわがきあゆ『レモンと殺人鬼』

ずっとハラハラ

不可解な妹を遂げた死を追う姉
さまざまな登場人物が登場
真実はいかに!?

というように、
大筋が予想できるミステリーだなあと思いながら読んでいたら…

読んでいたら!

後半になるにつれ、「歪み」が見えてくる
ん?予想してたものと違うぞ…?まあいいか…

ん!?!?違う!?!?

と、なる…(笑)

愛する妹の死を追う美桜
父を殺された過去を持つ
健気で優しい姉

かと思いきや
自分は虐げられる側だと。
そして小林一家もその星に生まれたのだと。

だから、妹も「そう」であってほしかった
保険金詐欺など、虐げる側の妹などあってはいけなかった

…という、主人公・美桜の歪みが中盤から一気に見えてくる

と同時に不安が。

このまま予想した展開の流れで本当に進むのか?
登場人物にも裏があるんじゃないか?

その不安は命中
というよりもオーバーキル

作中にある、ありとあらゆる伏線が…
自分が「こういう風に回収されるだろう」と見込んでいた伏線が…
全然予想も付かなかった形で回収される

回収、というより強奪される、とかの言い方の方がいいのかもしれない。

あまりにも、暴力的に、そして読者にも予想させないような形で伏線を奪ってくる。

なので、ずーっと不安だし、
ずーっとドキドキして、読む。

最後の最後で
美桜が全てを知り、
解釈を変えるシーンが印象的だ。

虐げられる側、
もうそれが運命で変わりないものだと信じていた美桜。

最愛の父を殺され、親戚の家でも不遇を受け、
決して裕福とは言えない生活を過ごしてきた妹。
父を殺され、日々のメディアに追われて失踪してしまった母。
そして、殺された父。

虐げられる側だと、思っていた。
しかし違った。
違ったというより、美桜は違うのだと解釈した。

妹は幸せなキッチンでレモンを絞る、
母もその空間にいて、美桜の状況には言及しない
父も、片方の娘に鶏を殺させる

虐げる側の存在だった
それなら私だって、虐げる力を持つんだ

鶏を殺してきたんだし
妹と違って、人気職の大学職員として働いている

その星に生まれたんだ

そして、美桜は最終的に反撃する

展開が読めなくて
次々に登場人物の裏が判明して…

心が落ち着かないまま、読み終わりました。
すっごく面白かった!

「レモンと殺人鬼」
というタイトルを見て、最初は
「レモン…虐げられる側」
(ひなの目線に立つと、家族の幸せな時間を象徴するもの
さらに、大学のレモンの木も収穫されることに抵抗せずに生えていること)

「殺人鬼…虐げる側」なのかなという単純解釈をしましたが、

どっちともとれそうですね。
レモンは、姉を虐げる側だった妹だけが享受していた父の優しさ
つまり虐げる側の象徴でもあります。

メディアに追われる際にも、レモンのように絞って…といった記述がありましたね。
(あとは桐宮から追われる際に美桜の前に立ち塞がったのもレモンの木でしたね)

「殺人鬼」は言葉通り「虐げる側」かと思いきや
虐げられる側?にもなりうるみたいな…?

実際に、本書では殺人鬼の輪郭が二転三転します。

虐げる側だと思っていた殺人鬼が、虐げられる側になったり、
虐げられる側の人間が突如、殺人鬼として頭角を現したり。

色々解釈が広がるなあと、
読後の余韻で考えてました。

一番いい人は金田さんだったのかな、という気も。

一見真っ直ぐに見えた物語が
実はさまざまな歪みが交わって真っ直ぐ見えているような、そんな感じがしました。

妹の死を健気に追求する可哀想な姉
というストーリーは、外側から見ても変わりませんよね?

おそらく、佐神の父の死体発券後、
さまざまなことが分かるはずです。

守衛は佐神の父で、顔と戸籍を変えて美桜を狙っていた。
ひなと、母も殺した。
佐神はかつて美桜の父を殺した。

この事実は変わりません。

外野から見ると、狂気的な佐神家に、小林家は狙われた。
そんな中、妹の死を追っていた美桜も最終的に狙われた。
そして、反撃したんだ。
というようなストーリーが世論で謳われるのは予想できそう。

でも、この本を読んだ方なら分かるはず……
なぜ佐神父は妹を殺した?
なぜ佐神父が美桜を狙ったのか?

そもそもなぜ、美桜は妹の死を追っていたのか?
なぜ反撃した?

大筋の、ストーリーの裏には、歪みまくった真実が沢山詰まってましたよね

本当に面白い一冊でした!🍋

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