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ブリューゲル『バベルの塔』を初めてちゃんと見たら、人間の野心と限界の話だった

「バベルの塔」という絵は、たぶん誰でも一度は見たことがある。教科書か、何かの本の表紙か。ぐるぐると渦を巻いて天まで伸びていく、あの茶色い塔。自分も「ああ、これ知ってる」とずっと思っていた。

でも、知っているのと、立ち止まって見たのは全然ちがった。今回ちゃんと向き合って、最初に口から出た言葉は「うわ、細かい」だった。塔そのものより、そこに張りついている小さな人間の数に、目が吸い込まれた。

第十四展示室にて

バベルの塔
ピーテル・ブリューゲル(父)『バベルの塔』1563年・ウィーン美術史美術館 / Wikimedia Commons (PD)

改めて見ると、塔は完成していない。上のほうはまだ工事の途中で、足場が組まれ、雲を突き抜けかけている。「完璧に建ち上がった塔」の絵ではなく、「まだ途中で、たぶんこの先も完成しない」塔の絵なんだと気づいた瞬間、急に絵が生々しくなった。

ノートとブク先生の鑑賞ノート

いつも自分の頭の中で美術館を歩いている探偵ノートと、相棒のブク先生なら、この絵の前できっとこんな会話をする。

ノート「でかい…そして人がアリみたいに細かい!」。ブク先生「この塔、てっぺんがまだ出来ていないね。なぜ完成しなかったと思う?」。ノート「あ…言葉が通じなくなって、みんなバラバラになったんだ」。

ブク先生「そう。同じ夢を見ても、言葉が違えば一緒には積み上げられない。これは人間の野心と限界を、一枚に閉じ込めた絵なんだよ」。― このやり取りは、自分がこの絵から受け取ったものと、ほとんど同じだった。

この絵が描かれた1563年、ネーデルラントは何を見ていたか

バベルの塔が描かれたのは1563年。今から463年前。場所は今のベルギー・オランダあたり、当時のネーデルラント。なかでもアントワープという港町が、ヨーロッパ屈指の商業都市として膨れ上がっていた時代だ。

世界中から人と物と言葉が集まって、街はどんどん高く、大きくなっていく。そのエネルギーは、まさに「天まで届く塔を建てよう」という熱に近かったはずだ。ブリューゲルは、その熱狂のただ中でこの絵を描いた。

塔のモデルにはローマのコロッセオが使われたと言われている。永遠を願って建てられたのに、結局は崩れて廃墟になった巨大建造物。繁栄の絶頂で「これもいつか崩れるかもしれない」という影を静かに描き込んでいた、というのが、自分にはぞっとするほど冷静に見える。

ブリューゲルが見た「人間の野心と限界」

旧約聖書のバベルの塔の話は、人間が神に近づこうと天まで届く塔を建てようとして、神が人々の言葉をバラバラにし、意思疎通ができなくなって工事が頓挫する、という物語だ。

ブリューゲルが面白いのは、この塔を「神罰でドカンと崩される瞬間」では描かなかったことだ。塔はまだ建っている。人もまだ働いている。でも、よく見ると石組みの段ごとに角度がわずかにずれていて、すでに内側からゆがみ始めている。崩壊は外から来るのではなく、もう内側で始まっている、という描き方だ。

巨大な野心は、敵にやられて終わるんじゃない。中の人間同士が、だんだん噛み合わなくなって、自滅していく。ブリューゲルはそれを神話の絵として、でも限りなく人間くさい現実として描いた。そこが、いちばん刺さる。

463年経っても、なぜこの絵が刺さるのか

この絵がどうしても他人事に思えないのは、自分も「バラバラになっていく塔」を、これまで何度も見てきたからだと思う。

同じ目標を掲げて始めたはずのチームが、いつのまにか言葉が通じなくなっていく。「品質」と言ったときに思い浮かべるものが人によって違う。「急ぎで」の温度感がずれる。誰も悪意はないのに、少しずつ角度がずれて、気づくと全然違う塔を建てている。あの感覚は、まさにバベルだ。

大きいものを建てようとするほど、人は集まる。人が集まるほど、言葉は通じなくなる。野心と分断は、いつもセットでやってくる。463年前のネーデルラントの画家が描いた塔が、今の自分の仕事や人間関係にそのまま重なってくるのが、正直、ちょっと怖いくらいだった。

次回予告

次回、第十五展示室は、ウィリアム・ターナー『戦艦テメレール号』を予定している。役目を終えた巨大な軍艦が、夕日の中を静かに曳かれていく絵。今度は「野心の果て」ではなく、「終わっていくものの美しさ」を見に行く。

─── この記事の作り方 ───

この記事は、自分が美術館で感じたことをもとに、AIを下書きの相棒として一緒に書いている。作品画像はパブリックドメイン(Wikimedia Commons)のものを使い、感じ方や言葉選びは自分のものを通している。

「名画をちゃんと立ち止まって見る」をテーマに、探偵ノートとブク先生と一緒に、一枚ずつ巡っていくシリーズです。気が向いたら、次の展示室でまた会いましょう。

#探偵ノートの美術館 #バベルの塔 #ブリューゲル #美術 #絵画 #名画

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