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痛みに強い人は、我慢していませんでした…持久系アスリート22人の脳を測ってわかった、「きつさ」が消えるときに脳で起きていたこと


― 同じ強さの刺激なのに、痛みが減ったのは鍛えた側だけ。しかも減った人ほど、考える脳は静かになっていました ―


持久系アスリート22人と一般20人に高強度運動と圧痛検査を実施。運動後に痛みが減ったのは鍛えた側だけで、その減り方は前頭前野の静けさと結びついていました。我慢ではなく、処理の違いだったのです。


第1章 「あの子は根性がある」で、片づけてきたもの

同じ練習をします。同じ距離を走ります。同じ回数の反復をします。

それなのに、平気そうな顔をしている選手と、途中で足が止まる選手がいます。

現場では、この差をひとことで片づけてきました。

「根性がある」 「我慢強い」 「気持ちが弱い」

私は25年間、メンタルコーチとして7万人近いアスリートと関わってきましたが、この言い方でうまくいった例を、ほとんど見たことがありません。言われた側は下を向くだけですし、言った側も、次に何をすればいいのか分からないままだからです。

2026年に発表された1本の研究が、この話を大きく動かしました。

鍛えた人と、そうでない人の脳を、運動しながら、そして痛みを与えながら測った研究です。結果はこうでした。

痛みに強い人は、我慢していたのではありませんでした。痛みの「作られ方」そのものが違っていたのです。

この記事では、その研究を最初から最後までていねいに読みます。そして――ここが大事なのですが――その研究をそのまま信じてはいけない理由も、同じだけの分量で書きます。そのうえで、それでも現場に残るものを取り出して、明日から使える手順に落とし込みます。


第2章 この研究が、実際にやったこと

ドイツの研究チームが行った研究です(Geisler ほか, 2026)。

参加したのは2つのグループでした。

  • 持久系のアスリート22人(平均年齢33.3歳)

  • ふだん運動していない人20人(平均年齢28.9歳)

この42人に、次の2つをやってもらいました。

  • HIIT(高強度インターバルトレーニング):短い時間、とても強い運動をして、休んで、また強くやる、をくり返すもの

  • 圧痛テスト:機械で一定の強さの圧をかけて、「どのくらい痛いか」を答えてもらうもの

そして、その間ずっと、**fNIRS(機能的近赤外分光法)**という装置で脳を測りました。頭に光を当てて、脳の血のめぐりと酸素の状態を見る装置です。測った場所は3か所です。

  • 前頭前野:考える、判断する、言葉にする、意味づけをする場所

  • 感覚運動野:体の感覚と動きをあつかう場所

  • 後部頭頂葉:注意を向ける、体の位置や状態をつかむ場所

つまりこの研究は、「痛い/痛くない」という主観の報告と、「そのとき脳のどこが働いていたか」を、同時に並べて見たわけです。


第3章 いちばん大事な数字は、「減ったのは片方だけ」

結果を、大事な順に並べます。

(1)運動中は、両グループとも前頭前野の酸素が増えました。

これは予想どおりです。強い運動をすれば、体を動かす指令を出す脳も、それを見張る脳も忙しくなります。

(2)ただし、後部頭頂葉の増え方は、アスリートのほうが大きくなりました。

注意と、体の感じ取りに関わる場所です。ここが、この研究のいちばん面白いところの入口になります。

(3)運動のあと、痛みの感じ方が明らかに下がったのは、アスリートだけでした。

一般の人たちには、その低下が見られませんでした。

同じ圧、同じ機械、同じ手順です。物理的な入力はそろっています。それでも、返ってくる答えが違いました。

(4)運動後、脳の酸素が下がった範囲も違いました。

  • アスリート:測ったすべての領域で下がった

  • 一般の人:感覚運動野だけが下がった

(5)そして決定打です。アスリートでは、「痛みがどれだけ減ったか」と「痛み刺激を受けている最中に前頭前野の活動がどれだけ下がったか」が、結びついていました。

一般の人では、この結びつきは見られませんでした。

言いかえます。

痛みがよく減った人ほど、痛みを受けている最中、「考える脳」が静かだったのです。


第4章 研究者たちは、これをどう説明したか

論文の著者たちは、こう考えました。

強い運動によって、アスリートの脳では酸素の供給がぐっと持ち上がります。すると、脳の活動の「土台の高さ」がすでに上がった状態になります。そこに痛みの信号が入ってきても、そこからさらに大きく持ち上がる余地が少ない。結果として、**痛みの信号が「目立たなくなる」**のではないか、というものです。

そしてその背景として、長年の持久トレーニングによる体の変化――細かい血管が発達し、酸素を運びやすくなっていること――を挙げています。脳の働きが効率よくなっている、という説明です。

ここまでが、論文が言っていることです。

ここからが、この記事の本題です。


第5章 【重要】この研究を、そのまま信じてはいけません

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スポーツ心理学者でありメンタルコーチの笠原彰です。今すぐ使える心理学、スポーツ心理学、メンタルトレー…

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