真夏の古民家でのこと
真夏の太陽が眩しくて、出かけるのもためらうけれど、
それでも会いたい友達とランチの約束をしていた。
自然や神社や音楽が大好きな私たちが選んだのは、
山の中に佇む古民家のお店。
山から田んぼに吹き抜ける風が心地よく、
聞こえてくるのは蝉の鳴き声と、風にゆれる木々の葉音だけ。
ガラガラと引き戸を開けると、静かに迎えてくれる店主の姿があった。
靴を脱ぎ、畳の部屋に上がる。
窓の外に広がる山の緑が陽を受けて、銀色に輝きゆれる。
その景色を眺めているだけで、2人の会話は無くても、
お互いに心が潤っていくのが分かり、
顔を見合わせて、どちらからともなく微笑んでいた。
冷たい水が喉をうるおす。
なんて静か・・・。
生活音がないっていいな。
「久しぶりだねー。」
「ずっと気になりながら、なかなか連絡出来なくてごめんね。
そろそろ〇〇ちゃんからパワーを貰わなきゃって思ってた。」
「それはお互いさまよ。私も心を整えてもらえる気がしてたから。」
ゆっくり食事を頂きながら近況を話す。
2人で会うとお互いの話をきちんと聞けるので、
最近は大勢でわいわいと会うよりも、
1対1で会う時間が好きになっている。
神社での偶然の出来事、親やペットのこと、仕事のこと。
面白いことに、ピアノをずっと弾いている彼女は最近チェロの音が大好きで、お箏を弾いている私は今はピアノの音が好き。
どちらにせよ、『弦』で繋がっているのがなんだか面白い。

夏は大好きな桃を食べると嬉しくなります
中学生のころは、少し尖ったところのあった彼女とは、友達つき合いをしたことはなかった。
50代になって彼女の親友と3人で旅行に行く機会があり、それからは少しずつ会う回数が増えた。
その親友は数年前に病気で亡くなった。
とても大人びた彼女は、人生を生き抜いた芯の強さを感じる人だった。
けれどとても自然体で、笑顔が素敵だった。
その彼女が、いつも2人でランチをする時には、そばにいる気がしている。
この日も、笑いながら眺めて見守ってくれていたはずだ。
あの50代の時の旅行に、私が加わったのは今考えても不思議で、
彼女が導いていた気がしている。
死期をなんとなく悟っていた彼女が、親友を1人にさせまいとして、私に何かを託したような気さえする。
「あなたたち、全く違う人生だけど、案外心は近いところにあるよ」って。
今日のお店が偶然にも彼女の実家の近くだったことも、導きのように思えた。
ひんやりとした古民家の部屋で、日ごろの想いをお互いに口にする。
話すことで自分の考えを見つめ直すこともできた。
夏の暑い日、この古民家で感じた 空気感 を忘れないでいよう。
言葉でも感情でもなく、
その時の『空気の温度』を思い出すことって
きっと大切なことなんだって、
忘れちゃいけないってその日は強く思った。
「また来ようね。」
そう空にいる彼女にも会いに・・・。
空にいる彼女にも届けたい。夏には必ず聴く曲。
かてぃん(角野隼斗)さんのピアノは、1本のフィルムの映像を見ている気持ちになります。
Summer/久石譲 :ピアノ かてぃん(角野隼斗)
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