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めろねえちゃんずるいじゃないかああああああああ。゚(゚´Д`゚)゚。


あれは私がシンガポールに拉致されるちょっと前のこと。約7年前になるだろうか。従弟(いとこ)とおもちゃのボーリングで遊んだことがある。

そのいとこは私よりだいぶ年下の男の子。当時5歳か6歳。名前はケン坊としておこう。ケン坊は大人と遊ぶのが大好きだった。特に私はなぜかケン坊に気に入られていた。

「めろ姉ちゃん、あそぼ!!( ●´ސު`●)」

ケン坊の家に行った際は、到着して15秒で遊びの催促が始まる。私は子どもが好きだし、精神年齢はケン坊と似たようなものなので、一緒に遊ぶのは楽しかった。

事件は正月休みに起きたのだ

シンガポールに拉致される直前の正月休み。私たち夫婦はケン坊の家に新年の挨拶に行った。いつもの如く、遊んで遊んでと催促するケン坊。「めろさんたちは着いたばっかりなんだから、我がまま言わないの!」ケン坊の母親、ケンママが諭そうとするも、ケン坊は聞く耳をもたない。

「ダイジョブですよ笑 ケン坊、めろ姉ちゃんと遊ぼうか(´めωめ`)」
「うん!!( ●´ސު`●)」

ケン坊は即座にボーリングのおもちゃを出してきた。クリスマスプレゼントとして買ってもらったらしい。ピンがリアルボーリングのそれの半分くらいの大きさで、プラスチックで出来ている。ボールも同様。5歳の子が安心して遊べる仕様だ。

ダイニングルームとつながった、畳の敷かれた和室にいそいそとピンを並べるケン坊。「めろ姉ちゃん、勝負だ!」なんでも、私とボーリング勝負がしたくてしたくて、正月が来ることを心待ちにしていたらしい。

そこまで思ってくれたのか、ケン坊。キミの気持ちに応えるしかあるまい。1日中ボーリングで終わることを覚悟の上、私は勝負を引き受けた。


ケンパパの教育方針とは

とはいえ。とはいえね。相手は5歳児であり、こちらは大人である。本気でやったら、私が圧勝してしまう。途中まで良い勝負にして、最後はケン坊に花を持たせる。そんな感じで、私は調整しながらボールを投げていた。

「うわーケン坊上手いなー。お姉ちゃん負けちゃうな(´めωめ`)エヘヘ」
「だって、いっぱいれんしゅうしたもん!!( ●´ސު`●)」

うむ。実に良い雰囲気だ。元々負けず嫌いなめろなので、これが10代の頃だったら大人げなくガチで闘っていただろう。私も成長したってことかな・・・とシミジミしながら、プラスチックボールを投げていた。

だがしかし。だがしかーし。事態は急変する。お酒を飲みながら勝負を見ていたケン坊の父親、つまりケンパパ。私は彼に手招きされた。

「なに?(´めωめ`)」
「おいめろ。お前手抜いてねぇか?」

ケンパパは既に酔っぱらっているのか、目が据わっている。

「いや・・・うん・・・(´めωめ`)」
「ダメだ。本気でやってくれ。甘やかしてたらアイツのためにならない」

そうだ。私も小さい頃、トランプとかUNOとかオセロとか、若きケンパパに遊んでもらっていたが、1回も勝てなかった。ケンパパは一切手を抜いてくれなかった。勝負の厳しさ、おとなの厳しさを教えてくれた人だ。

小さい頃の感覚が蘇ってきた。私は若きケンパパに遊んでもらうのが好きだった。負けるのは悔しかったが、あからさまに手を抜いてくる大人の方が私は嫌だったのだ。勝ちたかったら頭を使え。悔しかったら工夫しろ。泣いて強くなれ。若きケンパパの、厳しくも温かい言葉だった。親戚の子にさえ一切手を抜かないケンパパのことだ。自分の子どもになればなおさらだろう。私はすぐに理解した。

「ごめん。ちゃんとやる(´めωめ`)」
「頼むぞ」


目的と手段をはき違えるケン坊(5歳)

ケン坊とのバトルフィールドに戻っためろは鬼神となった。リアルボーリングはそこまで得意ではないが、この距離とこのボールなら話は別だ。大人が本気を出せばストライクなど容易い。悪くてもスペアは取れる。

見る見るうちに、ケン坊とのスコア差が広がっていく。ケン坊の顔が明らかに曇り始めた。ケン坊、ごめんよ。きっとケンパパも、小さい私と遊んでた頃、こうしていたたまれない気持ちになっていたんだろうな。

複雑な感情のまま勝負を続けていると、ケン坊が怪しい動きをし始めた。ボールを投げるラインを畳のヘリ部分に設定していたのだが、そこから足をはみ出している。少しでもピンに近づいて投げたい!という思いからだろう。

オリンピックの走り幅跳びでファウルになるように、最初はケン坊の足が、畳みのヘリを少し超えるくらいだった。しかし徐々にそのはみ出し範囲は大きくなり、明らかにピンとの距離が近くなり始めた。最初は畳1畳分の距離から投げていたのに、今はその半分くらいの距離まで詰めて投げている。

ズルというヤツである。悔しいのだろう。勝ちたいのだろう。ケンパパがこれを見ていたら、烈火のごとくケン坊を怒鳴りつけていただろうが、ケンパパは酔っ払いすぎたのか、この時点で寝てしまっており、すでに勝負を見ていなかった。

ケン坊は、いかにピンを沢山倒すかより、いかにピンに近づいて投げるかしか考えてないように見えた。はみ出すことに全力で、投げる方がおざなりになり、ボールを明後日の方向に投げていた。目的と手段をはき違えた結果の、ガーター連発である。

そしてついに、ケン坊の堪忍袋の緒が切れた。ケン坊は泣きながら、お母さんの元に駆け寄る。ケンパパの教育方針に従ったこととはいえ、私は罪悪感で胸が痛かった。ええ。この時までは。


頼むウソだと言ってくれケン坊

「ウッウッ(´;ω;`)」
「何で泣いてるの!?遊んでもらって泣いちゃダメでしょ!」

ケンママ、ちょっと厳しすぎやしませんかそれは・・・

「だって、だって・・・(´;ω;`)」
「どうしたの?」

めろねえちゃんずるいじゃないかあああああああああああああああああああああ。゚(゚´Д`゚)゚。


えええええええええええええええ(´めДめ`)ええええええええええええええええええええええええええええええ!?

私!?私が・・・ずるい・・・!?

ウソでしょ・・・

ズルしてたのはお前だろ(ノシ*`ω´*)ノシ

このツッコミが100万回くらい頭の中でリフレインしていたが、私は必死に言葉を飲み込んだ。そしてケン坊に「ごめんね・・・」と謝罪した。

ケン坊が泣いた時は牛乳を与えておけばいい。ケンパパの格言に従い、ケン坊に牛乳を与えるとすぐにケン坊は泣き止み、機嫌を直した。

「めろ姉ちゃんもっかいやろ!!( ●´ސު`●)」

ウソやろ自分・・・(´めωめ`)

その後、酔いが醒めたケンパパが起き上がってくる。
「おーケン坊、めろと遊んで楽しかったか」
「うん!!楽しかった!!( ●´ސު`●)」
「そうかそうか。良かったなー。めろ、ありがとな!」

う、うん・・・(´めωめ`)

心のモヤモヤハイオク満タンで、私はケン坊の家を後にした。

全くずるくない相手にいうのがポイント

当時、会社でこの話をしたところ、皆笑ってくれた。その後「ずるいじゃないかああああああああああああ。゚(゚´Д`゚)゚。」が職場内で流行ったようだ。全くずるくない相手に向かって言うのがポイントだ。

例)麻雀をしている時
「怖いけど、この牌通れ!」
「はいそれロン!」
ずるいじゃないかああああああああああああ。゚(゚´Д`゚)゚。


そして7年の時が経ち、私はシンガポールから帰国。久々にケン坊に会った。中学で野球部に入っているらしい。かなり背が伸びていた。

私はケン坊に会ったら、あのずるいじゃないか事件のことを聞きたくて仕方なかったのだ。一言でいい。ケン坊の弁明が欲しい。今こそ悲願成就の時。

「そんなことがあったの。覚えてる?(´めωめ`)」
「・・・いや、あんま覚えてないっす(苦笑)」
「(´めωめ`)オウフ」

中学生男子特有の思春期による照れもあるのか、その反応は鈍かった。やっぱりな。言った方は覚えてないんだよ。言われた方は覚えてるんだよ。これが人生の縮図ってヤツである。

あの時の私は、ズルかったんだろうか・・・7年経っても、心の奥底に小さな小さなモヤモヤが残るめろなのでした。

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