テレビ朝日デジタル解説委員北本則雄氏の「ハイパーインフレーション」論に、もの申す!
(テレ朝NEWS 2025.7.3)
“世界最悪”の財政赤字…国の借金うなぎ登り 「ハイパー・インフレ」防ぐには?【数字でわかる今の日本】 https://share.google/Jim8LLHehnl95yL0e
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よくもまあ、ここまで「いかにも!」的な解説記事を並べられるものだと呆れたので、今回は、これに対する感想を、書きたい。
が、しかし、内容を読めば読むほど、いちいち「?」となる部分が少なくないので、今回は、次の2つのみ指摘するに留めたい。
上記の北本氏の解説記事は、本年5/20実施の「20年もの日本国債入札」に関して、「入札が不調だった」という「事件」?を受けたものであるようなので、まず、その点から書きたい。
◼️国債入札が不調だったという
書き方だけでは、正しくない
北本氏の言う「事件」とは、「5/20の『20年国債』の入札が不調だった」
→「その影響で?『30年もの国債』の利回りが一時過去最高の3.1%を越えた!」、「マーケットの警戒感が出た!」
などというもののようだ。要するに、上記の「事件」は、日本国債の信任の低下の兆しかもしれない?!と言いたいようなのだ。
ところが、
「国債金利情報 : 財務省」 https://share.google/K4H4JhLoklOiRD9uQ
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上記の日本国債の実際の入札の状況を調べてみると、日本国債の安定的および信用力が、逆に浮かび上がってくる。
北本氏記述の『20年もの国債入札』の不調の「事件」でさえ、最終的な集計を見れば、予定募集1兆円を上回って、1兆8787億円応募されている(落札・割当額は7509億円)。そして、その『20年もの国債』の予定利率は2.4%程度、利回り2.453%となっている。
『30年もの国債』の利回り上昇についても、過去最高の利回り3.1%を一時越えたあと、直近の利回りの推移を見ると、2.9%前後~3.1%前後になっている。ちなみに、『30年もの米国債』の利回りは、4.8%前後、『10年もの米国債』の利回りは4.3%程度(日本の10年もの国債利回り1.4~1.6%程度)になっている。
さて、
日本国債の保有割合は、日本銀行が全体の約半分程度を占めている。この比率を下げようとして、昨年から、少しずつ、日銀は国債買い入れ額を減少させていくという政策方針を取っている。
そのため、今後の日銀の政策見通しなどの状況を見定める必要もあるが、金融機関などの国債買い入れは、自ずと5年もの、10年ものなどの短めの期間へシフトしていく動きが出やすいだろう。
よって、30年ものなどの超長期国債を中心に、金融市場では、不安定な利回りの動きが当面は出やすいと思われる。
一方で、ミクロ的には、銀行、証券などの企業は、比較的短期の5年もの、10年ものの国債の個人向け販売に注力を始めている。ある銀行の金融商品の営業担当に話を聞くと、今、各社とも、各種特典キャンペーンを付けて個人向け国債販売に力を入れていることを認めていた。
そして、個人向け国債販売の一番の理由が、予定利率の上昇(利回りの上昇)にあるとその営業担当は話す。いわゆる「ゼロ金利」の頃では、利回りがほとんど見込めなかったが、最近、各社とも個人向け国債販売に、少しうまみが発生しだしたということだろう。
さらに、
財務省は、国債保有主体の多様性を考えて、外国人の保有も以前の9%程度から増やすことに注力している。それでも、まだその保有割合は、12~13%程度。
ドイツでは、40~50%が外国人保有の割合になっていることを見れば、まだ低い。しかし、海外保有の割合が高くなることは、金利を高く導く必要性が出てくるともいえ、諸刃の刃でもある。
前述の個人向け国債販売に注力を始めているのも、そういう意味で、同じ様に金利を高くする傾向になりやすい。
つまり、最近の国債の利回りの上昇トレンドは、日銀の国債買い入れの抑制政策+国債販売の多様化が、逆説的だが、その要因の1つであり、そのことは、すなわち市場の要請であり、全く心配するようものではないと思われる。
(追記)
7/9のNHKニュースで、「日本の10年もの国債の利回りが、1.5%に上がった!」と、報道されていたが、案の定、「金融市場の日本国債への懸念が要因の1つ」であるかのような印象を与えていた。これを見た視聴者は、「不安感」を植え付けられ、徐々にその空気感に包まれていくのだろうなあ?!と、いつものことながら残念な報道姿勢である。
◼️戦後の日本のハイパーインフレーションは、
戦前の戦時国債発行のせいではない!
北本氏の解説文では、戦後の日本の「ハイパーインフレーション」は、戦前の膨大な戦時国債が原因と認識しているようだ。
そもそも、「ハイパーインフレーション」の定義も少し都合よく解釈しているので、異議があるが、とりあえず、今はそのことは横に置いても、一番の「認識の誤り」は、「ハイパーインフレーション」が起きた原因を「戦前の大量の国債発行」(国家予算に占める公債割合最大70%)にあると決めつけていることだろう。
日本の場合は、ハイパーインフレーションになる場合は、最低でも次の要因が必要になる。
↓
『莫大で継続的な需要に対して、供給が壊滅的に足りない状態が継続する必要』
正に、大きな戦争か、未曾有の大災害(例えば、東南海地震などで最大見積もりの被害発生)か、
それこそ、SF小説「日本沈没」のようなことが発生すれば、「供給力」に甚大な被害が発生する。こうした状況にならない限り、ハイパーインフレーションは日本では起こり得ない。
戦争が終わって、日本国中が焼け野が原になったのを見て、日本の工業、農業、商業など、すべての生産力、供給力は、ほぼ壊滅状態だったことに異論はないだろう。
→資源、食糧、エネルギー、工業製品、生産設備、工場、商業、サービス、とにかく日本経済は、モノやサービスの供給が壊滅した状態に陥った。供給力は、モノによって違うが、戦前の1割~6割程度まで落ち込んだ。
さらに、需要はというと、
◎戦前の統制経済(配給など)で押さえつけていたが、統制が無くなったので、当然、需要が爆増。もっとも、GHQによる新たな統制を受けたモノ、分野もあるが、それでも全体で見れば需要は桁違いに増えた。
◎海外からの兵士の復員、中国、朝鮮半島、台湾などからの650万人以上の引き揚げ者の存在。終戦後すぐの引き揚げ者だけでも500万人程度と推定された。
→この人数分の食糧や資源などの需要が爆増するのも、異論はないだろう。
そう!
需要は爆増しているのに、供給力が壊滅状態だから、モノがない、モノが少ない、サービスも受けられないとなれば、価格が爆上がりするのは、当然なのだ。
日本経済は、こうして1945年夏~1948年頃までに、一説では、卸物価が220倍(1934年頃起点の場合。敗戦直後起点の場合は約70倍)程度になったと言われている。
まとめ、
敗戦直後の話に戻すと、仮に、戦前、日本の国債発行がほとんどなかったとしても、前述した「膨大な需要」と「壊滅的な供給力」に変化はないのだ。
つまり、戦前の国債発行があろうがなかろうが、それが膨大だろうがゼロだろうが、ハイパーインフレーションは避けられなかったのである。
皮肉にも、
日本の財政法第4条は、原則「国債発行」を禁止している。それは、「国債を発行したから、日本は戦争をした。国債発行を縛ることで、日本に戦争をさせない」という意図があると言われている。法律起案当時の大蔵省主計局の担当課長の平井氏は、「憲法の戦争放棄の規定を裏書き保証せんとするもの」とその解説書で述べていると言う。
ひるがえって、現代の日本国債の残高1129兆円(2025年度末)をもって、ハイパーインフレーション云々を持ち出す議論が、いかに「為にする」議論であるか、よくわかる。いたずらに国民の不安を煽るのはいったいなぜなのか?
「戦争を起こした要因である国債のせいで、ハイパーインフレーションが発生した」と規定、決めつけることで、「ストーリー」が完成するからであろうか?
むしろ、この「ストーリー」は、国益を損ね、国全体の成長を止めるどころか、悪化を招き、国民の生活を悪い方向に導きかねない。
各マスコミの報道方針は、各社の自由だが、もう少し、多様性を持ったマスコミは出てこないだろうか?!戦前の「大本営発表」を流すばかりだった新聞各社は、戦前の反省に立ち、今こそ、政府、財務省のお墨付きの「資料説明報道」に終始することを、ぜひ見直してほしいと祈るばかりである。
了
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