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令和版 針のムジナ

昔は「針の筵」と言った。
居心地が悪い場所、責められる空気、逃げたくても逃げられない時間。

だが令和の時代、その姿は少し変わった。
今の苦しさは、目に見える針ではない。
言葉にならない視線。
既読がつかない不安。
返信速度で測られる価値。
SNSの誰かの成功。
職場の微妙な空気。
正しさを競う会話。

それらは一つひとつ小さい。
だが、気づけば全身に刺さっている。

これが令和版、針のムジナである。

ムジナとは正体の見えぬもの。
狸か、アナグマか、狐か。
つまり現代の生きづらさも、正体がはっきりしない。

誰が悪いのか分からない。
社会か、自分か、時代か。
便利になったはずなのに息苦しい。
つながったはずなのに孤独。
自由になったはずなのに選べない。

針のムジナは、そんな曖昧な苦しみの化け物だ。

だが安心してほしい。
ムジナは、こちらが恐れるほど強くなる。

スマホを置く。
他人の速度から降りる。
比べる舞台から一度離れる。
笑う。寝る。歩く。空を見る。

それだけで、ムジナの針は一本ずつ抜けていく。

令和を生きるとは、
針のムジナに追われながらも、
自分の毛布を編み続けることかもしれない。

優しさの糸で。
自分らしさの糸で。
今日を守る一枚を。


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