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「泡のように消えていく夢を」

シャボン玉がフワリと飛んでいる。

電気技師の彼が言った。
「ああ、腰が死にそうだ。今の新築物件はひどいな。壁の中がスパゲッティみたいに配線が絡まってやがる」
返す言葉で、散髪屋は返した。
「贅沢言うな。俺なんて一日中、他人の頭の不格好な形と向き合ってるんだ。最近の若者は写真を見せてきて『これと同じにしろ』と言うが、あんな顔、俺のハサミじゃ作れやしないよ」
二人は同じ団地で育ち、40年以上こうして飲んでいる。
「結局、あいつらが欲しいのは『正解』だけなんだよな。スマートホームだ何だとうるさいが、スマホで照明がつくのがそんなに偉いのかね」
「便利になりすぎて、みんな退化してるのさ。自分でスイッチも押せない、髪もセットできない。……で、そのスマートな照明とやらは、停電したらどうなるんだ?」
「ただの『高い壁飾り』だよ。そうなれば俺の出番だ。結局、俺の膝がボロボロになるまで這いつくばらないと、連中は暗闇でスマホを眺めることしかできない」
「いい気味だ。……なあ、もう一杯いくか? 髪を切るよりビールを注ぐ方が、よっぽど世の中のためになる気がしてきたよ」
「ああ。二杯目は、ショートした頭を冷やすために必要だ」

「あ、そろそろだな」

「おお、そうだな」

熱気が上がり、シャボン玉がサッカースタジアムのスタンドを飛び交った。

スタジアムに集まった観客全員で

“I'm forever blowing bubbles,
Pretty bubbles in the air...”を大合唱した。

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