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平幹二朗の色紙と甘い小鉢の店 顛末記⑤

店主の話は讃岐うどんに移った。

「小麦だけでなくてね、
空海さんが、いい水を見つけたの。
それから、大事なのが塩っ
これも空海さんがね、、、」

店主は弘法大師を、大好きな友達みたいに
「空海さん」と呼ぶ。

空海(俗名は佐伯眞魚さえきのまお)は
最澄と同じ期の遣唐使船で留学し、長安に学ぶ。
地方の一介の私度僧がなぜ、異例の大抜擢で国策に滑り込めたかは謎

当時、最澄は仏教界のリーダー。国費で一年間の留学生。
短期間に学べるだけ学び、使命を果たすべく都に戻ったのと異なり、
空海は私費で長く滞在し、真言密教を習得した。
その帰国時、小麦を持ち帰ったという。

興味深いのが日本中、各地に残る「弘法水」の伝説。
ちょっと遠すぎる東北にまで、
彼の水の伝説は残る。
空海さんが杖で、こんこんすると水が湧いた。

杖で地面を叩く
あっちでこんこん、
こっちでこんこん。

あったかー

あったぞー

こんこんと湧き出る水。
空海は日本のトリックスター。

水源を見つける天才か、はたまた
唐で仏教のみならず
先端技術、学問、例えば地質学、自然科学を身につけ
この地形ならばと、温泉や湧水の発見ができたのだろうか。

帰国後、日本各地を廻ってから
讃岐の古里に戻り、小麦を栽培?
良い水源と良い塩を見つけた。
饂飩の材料は小麦と塩と水

それにしても、香川県すごいです。
時代下って、だしとしての醤油や煮干し
これらは讃岐国内で、全てが調達できる。
容易に手に入るだけじゃない。良質。
これは温暖かつ、雨も少ない瀬戸内海式気候の恩恵。
饂飩に必要なあらゆる食材が、揃い踏みだったわけです。

さて、白たぬきさんのメニュー表のトップにあるのが
「白たぬき(きつねうどん)」。
甘く炊いたお揚げさんをのっけたきつねうどんを
「白いたぬき」とはこれいかに。

この命名由来には驚きました。

四国に狐がいない説はよく聞きます。
古来、生息数が少ないのは確かなようで、
狸の伝説、昔話、御伽話は沢山ありますが、狐のはない。
(伝説によると空海さん、悪さをする狐に
「この先、鉄の橋が本州から通らぬ限り、讃岐には来るな。」
と申し渡した。だからいないんだって、狐。)

さあ、先先代が
大正時代の大阪にやってきて、
大阪は船場発祥と謳われるきつねうどんと出会う(はず)。
(おうどんの松葉屋さんの創業者宇佐美要太郎氏が考案しました。というかお客さんがセットで注文するいなりのお揚げを、うどんに乗せてあっためて食べるのを見て、ヒントを得たそうです)

庶民に人気のきつねうどん。先先代もこしらえる。
でも讃岐に狐はいない。
ならば狸。
白いうどんにのっけて「白たぬき」と名付けたと。

それから、店中に鎮座するたぬきの石像。
これ、全部サヌカイト製ですって。
讃岐から名前がついたサヌカイト

最後に店主曰く、地元に職業は二つしかなかった。
ひとつは饂飩屋
もうひとつが石屋。讃岐石(サヌカイト)を切り出して商う仕事。

この話を真に受けた私が
先日、丸亀市出身の音楽家で
スパイスカレー「soma」店主の和泉希洋志氏に
話したら、笑われた。
そんなわけがないでしょうって。

そうだよね、ころっと騙されたよ、たぬきに。
でも和泉さん、家にサヌカイトがあると言ってた。
その横で、パートナーの淳さんも
「あの、キレイな音のするカンカン石のことですね。」
讃岐人の身近に、この石があることは確かみたい。

この夜たくさんのお話を店主から聞いたけど、
お店にいたのはたったの1時間半くらいなのな。
最初はゆっくり食べて、味わって。ところが
最後にうわーって
いろんな話題がピンポンダッシュのゴールドラッシュで。

お会計で、店主は
女子2名が単品で注文した紅白なますのお代を
受け取ってくださらなかった。
二人して、お礼を繰り返し述べた。
(また来ます、今度はもっとたくさん注文しますっ)

壁の「地酒400円 焼酎400円」張り紙が
ずーっと気になっていた私は
「私、次はこの地酒をいただきます!」
「ああ、ぜひ!ぜひ!
これは生駒の、知り合いの蔵元でね。」

そうなのだ
このお店は「出会い」で出来ている。
きっと、その時々のご縁を大切にされて。
常連さんの色紙や、撮影した写真を預かって、徒然に壁に掛け、
知り合いの醸造所のお酒を置く。
先先代から、出会いを重ねて、
長〜く続けてこられたのだとしみじみ思いました。



ここまで読んでくださり、ありがとうございます

あの夜の
電燈に灯された、
青い幻灯機の映写はこれで終わりであります。

紅白なますはやっぱりミチョパみたいに甘くて
私の脳のシナプス回路はショートして。
この夜の、僅かに取り出せた断片、私の記憶の映写機です。
平幹二朗の色紙の由縁はまたもや忘れました


このあと、北の旅人が読んでくださるでしょうか、
それから、あとがきを書きたいと思います。

ありがとうございました。



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