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むかついたファームの上司3選——15年分の恨みを成仏させる


この記事に学びはない。成長もない。So Whatもない。So Whatって言うな。それがむかつくんだよ。

49歳、海外大→事業会社10年→日系コンサル→BIG4。計4社。15年間コンサル業界で生き延びてきた限界外資系コンサルタントが、今まで出会った「むかついた上司」を3人だけ厳選して紹介する。本当は10人くらいいるけど、全員書くと訴訟リスクがあるので3人にする。名前は変えてある。性格は変えてない。


第1位:「小学生でもわかるよ」おじさん

BIG4時代のシニアマネージャー、仮にAさんとする。口癖が「小学生でもわかるよ」だった。名前検索するともうやめて、自分でなんか小さな会社していた。

資料を持っていく。10ページのスライド。3日かけた力作。Aさん、最初の1ページを5秒見て、こう言った。

「これさ、小学生でもわかるよ?」

わかるんだ。小学生でもわかるんだ。じゃあ小学生に頼めよ。時給安いぞ。

しかもこの人、何がすごいって「小学生でもわかるよ」しか言わない。具体的に何がダメなのか言わない。どこを直せばいいか言わない。ただ「小学生でもわかるよ」と言って資料を返してくる。小学生でもわかるなら、直し方も小学生でもわかるように教えてくれ。

ある日、限界が来て聞いた。「具体的にどこが問題ですか?」

Aさんの回答。

「全部」

全部。15年のコンサル人生で最も情報量がゼロの一言。「全部」で何を直せと。じゃあ全部作り直しますと言ったら「そうだね」と。お前の「そうだね」に3日の残業代が溶けていくの、知ってるか。

で、3日かけて全部作り直して持っていったら。

「うーん、前の方がよかったかも」

やめようかなと思った。コンサルを。人生を。


第2位:「素人なりにがんばったね」おばさん

日系コンサル時代のシニアマネージャー、仮にBさん。品のいい笑顔で人の心をえぐる天才だった。

中途入社して最初のプロジェクト。死ぬ気でクライアント向けの報告書を仕上げた。徹夜した。目が充血してた。で、レビューに持っていった。

Bさん、全ページ読んでくれた。丁寧に読んでくれた。そして最後ににっこり笑って言った。

「素人なりにがんばったね」

素人なり。なり。

褒めてるのか。けなしてるのか。いや、けなしてる。確実にけなしてる。だって「なり」だもん。「素人なりに」の「なり」には「でも素人だけどね」が含まれている。日本語は恐ろしい。助詞一つで人を殺せる。

しかもBさんの恐ろしいところは、絶対に声を荒げないことだ。常に穏やか。常に笑顔。常に丁寧語。

「うーん、これだとクライアントさんに出すのはちょっと厳しいかなぁ」

「ロジックが通ってないって言うと語弊があるんだけど、まあ、通ってないかな(笑)」

「意味わからないって言ったら失礼なんだけど、意味わからない(笑)」

いや言ってるじゃん。失礼なこと言ってるじゃん。「失礼なんだけど」って前置きすれば許されると思ってるのか。許されないぞ。

極めつけは、クライアント向けプレゼンの前日リハーサル。僕が練習でプレゼンした後、Bさんが一言。

「うん、内容はいいと思う。ただ、明日は私がしゃべるね」

3週間かけて作った報告書を、前日に取り上げられた。しかも「内容はいい」と言いながら取り上げた。内容がいいなら僕にしゃべらせろ。

あとで聞いた話だと、Bさんは中途入社の人間には全員これをやっていたらしい。「試してるの」と本人は言っていたと。何を試してるんだ。僕の忍耐力か。限界だよ。


第3位:伝説の「そろそろ次のキャリア考えたら?」おじさん

BIG4時代のパートナー、仮にCさん。部屋に入った瞬間の威圧感がラスボス。革張りの椅子に座って腕を組んでいる姿は、もはやコンサルタントではなく闇の組織の幹部だった。

評価面談の日。半期の成果を15分かけてプレゼンした。アサイン率、クライアント評価、売上貢献。数字は悪くない。少なくとも自分ではそう思っていた。

Cさん、腕を組んだまま30秒くらい黙った。あの沈黙、30秒って短く聞こえるけど、体感では氷河期だった。マンモスが絶滅するくらいの時間が流れた。

で、口を開いた。

「うーん……そろそろ次のキャリア、考えてみたら?」

次のキャリア。ここから出ていけ、という意味だ。コンサルファーム用語で「次のキャリア」は「クビ」の婉曲表現である。「あなたには別の場所で輝いてほしい」も同義語だ。全部「辞めろ」って意味だ。日本語辞典に載せるべきだ。

しかもCさん、その後にこう続けた。

「いやね、君は悪くないと思うよ。ただ、うちのカルチャーにフィットしてないだけで」

カルチャーフィット。出た。コンサルファーム最強の必殺技。反論不可能。だって「カルチャー」って何なのか誰も定義できないんだもん。スキルが足りないなら鍛えればいい。成果が出てないなら出せばいい。でも「カルチャーにフィットしてない」と言われたら、どうすればいいの。整形するの。人格改造するの。

帰り道、コンビニでストロング系のチューハイを2本買った。平日の火曜日の18時に。もう何もかもどうでもよかった。駅のベンチでチューハイ飲みながら転職サイトに登録した。あの日の僕を見かけた人がいたら、それは幻覚じゃない。本物の限界コンサルタントだ。

ちなみにこのCさん、半年後に自分もファームを辞めた。カルチャーフィットしてなかったのはお前じゃねえか。


あるあるボーナスステージ

3人だけじゃ収まらないので、言われてむかついたセリフを一気に放出する。

「うすっぺらい」 ——資料に対して言われたのか、僕の人生に対して言われたのか、いまだに分からない。

「馬鹿じゃないの」 ——馬鹿じゃないです。東大じゃないけど、海外大出てます。でもこの瞬間は確かに馬鹿だったかもしれない。こんな会社に入ったんだから。

「で?」 ——一文字。助詞一個。たった一文字で人間の3日間の労働を全否定できる日本語の奥深さ。

「前にも言ったよね?」 ——言った。確かに言った。でも前に言った時の説明が下手だったから分からなかったんだよ。お前のSo Whatがなかったんだよ。言い返せなかったけど。

「いいよもう、僕がやるから」 ——これが一番きつい。怒鳴られるより、呆れられるより、「もういい」が一番きつい。存在を消された感覚。透明人間になった気分。


で、なんで辞めないの?

ここまで読んで「こいつなんでまだコンサルやってるんだ」と思ったでしょう。僕も思ってる。

正直に言う。分からない。たぶん、たまにある「いいレビュー」が麻薬みたいに効くからだ。

100回詰められて、1回だけ「これ、いいね」と言われる。その1回で全部チャラになる。ならないけど、なった気になる。完全にDVの構造だ。分かってる。分かってるけどやめられない。

あと、むかつく上司のおかげで「何を言われても死なないメンタル」が手に入った。これは転職市場では売れないスキルだが、人生では結構使える。親戚の集まりで「まだ独身なの?」と言われても平気だ。パートナーの「カルチャーフィット」に比べたら何でもない。


最後に

この記事を読んでいるあなたが、今まさにむかつく上司の下で働いているなら、1つだけ伝えたい。

あなたは悪くない。上司がむかつくのは上司が悪い。でも、そのむかつきは将来ネタになる。確実になる。最高の復讐は成功することだと誰かが言った

がんばれ。いや、がんばらなくていい。生き延びろ。

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