《創作》第39回正常気象3:ヘロン・エーテル計画③──冷えた地球、熱い人間
■前回までのあらすじ
異常気象が「正常気象」と呼ばれる未来。
人類は地球を冷却する大胆なプロジェクト
「ヘロン・エーテル計画」を始動した。
冷媒として
光と電波の性質を持つ「ヘロン・エーテル」を用い、
地球の熱を火星に送る“宇宙エアコン”が稼働。
リモコンひとつで地球に貢献できる、
という新時代が始まった。
火星では熱の影響により“霧”が発生。
人々は「火星が呼吸を始めた」と歓喜するが──
■冷えた地球、戻った四季
2038年、地球の平均気温は1.5℃低下した。
ヨーロッパでは30年ぶりに白銀の冬が戻り、
東京の夏は「32℃で涼しい」と語られる時代に。
「人類はついに、地球を冷やす力を得た」
国連から「気候安定賞」が授与され、
各国首脳が記念撮影を行う。
■欲望の再加熱
しかし──
涼しさが人類にもたらしたのは、希望だけではなかった。
経済活動が爆発的に再加熱したのだ。
酷暑で停滞していた都市建設が一気に再開。
リゾート開発、資源採掘、新型AIデータセンター建設…
地球は再び掘り起こされ、削られ、燃やされ始めた。

電力消費は史上最高を更新。
“冷房で地球を守る”というスローガンが、
逆に冷却装置の使用を加速させた。
■火星、過熱する惑星
そして、熱を受け続けた火星に異変が。
大気中に赤い砂嵐が発生。
地下の鉱物が化学変化を起こし、
未知の粒子が観測される。
ついに、火星との接続は一時的に遮断される。
だが、暖められた火星は、もう戻らない。
地球は冷えた。
でも、人間は熱いままである。
■あとがき
「冷やす」べきは、地球だけじゃない
この三部作を通して、
人類が“地球を冷やす技術”を手に入れた未来を描きました。
けれど、物語の最後に待っていたのは、
「地球は冷えた。でも、人間は熱かった。」
という、皮肉でした。
どれほど画期的な冷却装置を開発しても、
どれだけ宇宙規模のエネルギー網を張り巡らせても、
人間の“欲”が燃え続けている限り、
温暖化は止まらない。
欲をゼロにする必要はない。
でも、「減らす」ことを選ぶ勇気? があれば。
地球は、涼しくなれたかもしれません。

