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信用は筋肉

ところで僕の通っている東京のジムには「筋肉はつきにくく、落ち易い。贅肉はつき易く、落ちにくい」という貼り紙がしてある。いやな事実だけど、事実は事実ですね。

村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』

先日、あるカメラ店の通販でお高い中古レンズを買った。美品を謳いつつ、新品の2/3程度の価格。ホームページ上の写真を見るぶんにはコンディションはかなり良さそう。そもそも酷使されるタイプのレンズではなく、大手ショップが美品と判を押すならそこは信じても大丈夫だろう。

実際に届いたレンズは文句なしの美品だった。外観とガラス、ともにピカピカ。新古品と言われれば「そうかも」と思うほどだ。外箱付きで付属品もすべて揃い、これはいい買い物だとよろこんだとき、気づいてしまったのだ。

リアレンズキャップが破損していた。

このレンズは樹脂製のバブルケースに入っていて、底蓋がリアレンズキャップを兼ねている。このキャップの一部が破損していた。バブルケース内部に破片はなく、今回の搬送で破損したのではなく、元から破損していたと推測できる。

つまり、カメラ店はこの破損に気づいていた可能性がある。

実際のところ、このレンズには金属製のリアキャップも付属しており、いちいちバブルケースにレンズを仕舞うことはない。カメラ店にしてみると、「安かった理由、おわかりいただけましたよね?」ぐらいのことなのだろう。結果として美品レンズを安く手に入れられたわけだし、そこまで目くじら立てる話でもない。

ただ、このショップでもう一度買い物をするかと問われたら……、答えは決まっている。

それはそうだ、明らかな破損を隠すお店で買い物をしたいとは思わない。通販という現物を見られない販売方法で、故意にネガティブポイントを隠されたらなすすべがない。一度騙された店を、どうして信用できよう。

信用は筋肉のように落ちやすく、疑念は贅肉のように増しやすい。

最近はウェブの利点を活かし、製品写真をたくさん載せ、できるだけコンディションを伝えようとするカメラ店が多い。良いも悪いもすべて見せ、そのうえで判断してくれというスタンス。客の信頼を得るための地道な努力だ。悪い点を隠して売る店より、心象が良いのは言うまでもない。

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澤村 徹 記事がおもしろかったら応援していただけると幸いです。オールドレンズ、デジタル赤外線写真、AIアートなど、記事や作品制作の活動費して使わせていただきます。