メタバースが「社会的処方」に―医療従事者が挑む、孤独解消の新アプローチ
受動的な視聴から「当事者体験」へ。clusterで展開する参加型演劇が目指すウェルビーイング向上
デジタル技術が生活インフラとなった現代において、新たな社会課題が浮上している。それは「つながっているのに孤独」というパラドックスだ。メタバース空間でイベントに参加しても、結局は「見ているだけ」で孤独感を抱えたまま―そんな課題に、医療とエンターテインメントの融合で挑むプロジェクトが動き出した。
PORTAL project代表で医療メタバースのオピニオンリーダーとして活動する星野うぇあ氏に、参加型イベント -冒険歌劇『バーチャル英雄譚(Brave Beat)』- に込めた思いと、メタバースを活用した社会課題解決の可能性について聞いた。
「集まっているのに孤独」―メタバースイベントが抱える構造的課題
――今回のプロジェクト立ち上げの背景を教えてください。
星野うぇあ氏:大勢の中にいるのに、透明人間のような孤独を感じる。そんな『消費されるエンタメ構造』を壊したいんです。 参加者をただの観客ではなく、物語に不可欠な『英雄:ヒーロー』へと変身させる。一過性の楽しさで終わらせず、明日を生きる勇気に繋がる体験を届けたい。それが私たちの願いです
――医療従事者としての視点が、このプロジェクトにどう活かされているのでしょうか。
星野うぇあ氏:研究で培った『社会的処方』の知見を使い、エンタメを孤独への『処方箋』として再構築しました。 物語への介入や役割(ロールプレイ)は、帰属意識を取り戻すための緻密な仕掛けです。35名のプロと共に、一過性の興奮で終わらない『現実に効くエンタメ』を、科学的根拠に基づいて実装しています
観客を「英雄」に変える―参加型演劇が生み出す自己変革体験
――具体的に、どのような体験を提供するのですか。
星野うぇあ氏:一言でいうと、『お客さん』を卒業して『ヒーロー』になってもらう体験です。 clusterの機能を用いて、みんなのアクションで演出がリアルタイムに変わるようにしています。アイテムを使ったり、大事な決断を下したり。
そこで感じてほしいのは、『自分がいたから、この物語は完成したんだ』という手応えです。ただ見ているだけの時間を、自分の手で世界を動かす『冒険』に変える。そんなワクワクする変化を、肌で感じてほしいですね

――「役割」を与えることの効果とは。星野うぇあ氏:現実の制約を突破する魔法、それが『役割』です。 メタバースで英雄を演じることで、普段は隠している積極的な自分を呼び覚ます。この『いつもと違う自分』としての行動は、単なるロールプレイを超えて、確かな自信(自己効力感)へと繋がります。 物語の中で英雄になれたという手応えを、現実の自分へのギフトとして持ち帰ってほしい。それがこの設計の狙いです
35名の専門家チームが描く、新しい「居場所」のかたち
――プロジェクトのチーム構成について教えてください。
星野うぇあ氏:医療従事者を筆頭に、第一線のクリエイター、デザイナー、Vシンガーやダンサー、そして学生まで。多様な専門性を持つ35名の有志で構成されています。
正解のない『孤独の解消』という難問に挑むため、まずは私たち自身が『新しい居場所の形』を体現しよう。そう考えて集まった、他に例を見ない混成チームです。 互いに認め合うことで生まれるのは、『ただ楽しいだけじゃない、心に残り続ける体験』。このチームでしか辿り着けない場所へ、参加者の皆さんと一緒に行きたいと思っています

ビジネスとしての展望―産学連携から社会実装へ
――今後のビジネス展開や社会実装の可能性は。
星野うぇあ氏:まずは、学会発表や学術誌への掲載を通じて、このアプローチの有効性を客観的に証明することから始めます。エビデンスという『信頼』の土台を築くことが、医療においては社会実装の最短距離だと考えているからです。
そのうえで、教育機関や自治体、子ども支援団体とのパートナーシップを広げていく計画です。例えば、不登校などで外出が困難な方々にとって、メタバースは間違いなく『安全な社会参加の第一歩』になり得ます。
単なる一過性のイベントで終わらせるのではなく、エンターテインメントの収益性と社会課題の解決を両立させる持続可能なモデルを確立したい。バーチャルな体験が、現実の人生を支えるインフラになる未来を目指しています
――メタバース業界全体への影響はどう見ていますか。
星野うぇあ氏:メタバースは『次世代のプラットフォーム』と呼ばれながらも、まだ『日常にどう役立つのか』という具体的な答えを出しきれていないと感じています。
私たちが目指すのは、エンターテインメントと社会課題解決が無理なく共存する新しいスタンダードです。 単にコンテンツを消費して終わりではなく、『人生に意味を与える体験』がメタバースで作れると証明すること。そうすれば、この業界の可能性はもう一段階、誰も見たことのない場所へ引き上げられる。そう確信しています
【プロフィール】
星野うぇあ氏(PORTAL project 代表):理学療法士、カウンセラー、VRスペシャリスト
医療メタバースのオピニオンリーダーとして、10本の論文執筆、講演、国際学会での発表実績を持つ異色の医療従事者。大学病院との共同研究から得た知見を武器に、メタバースを活用した「社会的処方」を提唱。PORTAL project代表として、科学的根拠(エビデンス)とエンターテインメントを融合させ、孤独のない社会の創出に挑んでいる。
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監修・発行:メタバースビズニュース編集部。本メディアを運営するクラスター株式会社(Cluster, Inc.)は 日本最大級のメタバースプラットフォーム「cluster」を運営。最大10万人が同時接続可能なバーチャルイベントの開催や、法人向けメタバース構築や産業DX支援を展開をしています。
公式サイト:https://corp.cluster.mu/
