#7-6 堅固の双璧|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街
第6話 堅固の双璧
タトはガタガタと震えるミミの体を強く抱きしめた。
そして、怒りよりも深い悲しみの瞳でドーマを見つめた。
「……あなたは、何のために裁くのですか? 女王のためではないのですか?」
ぴくりとドーマの指が動いた。
「眠りは女王の意思なのですか?」
「……女王は幼く、弱い。よって、我々が判断する」
「ならばなおさら、女王の意思を確かめるべきです」
「ならぬ」
「あなたたちは、女王を守るためにここに立ち続け、世界を見渡し、不穏なものを排除してきた。……それは、すべて女王のためでしょう?」
タトの腰のオリジア石がキラリと光った。
「…………」
「……ボク、やっとわかったよ。
あなたたちは、女王を生かすために、この世界の痛みや悲しみを引き受けてきた。
それを冷気と瘴気に変えて、少しずつ外へ逃がしながら、誰にも渡さず、ずっと一人で抱えてきたんだ」
タトの腰のオリジア石がゆっくりと光り出した。
それに気づいたウォールが眉を寄せた。
「だから、失敗を恐れている…」
「……戯言を」
「でも、もういい。
あなたたちだけでやる必要はない。女王を、氷の中に閉じ込め続ける必要はないんだ」
タトは溢れる光と共に、顔を上げた。
「そのために、僕らが来た!!」
「生ぬるいことを!
傷ついてからでは遅いのだ!失敗は二度と許されぬ!世界はすでに壊れた――弱きものは、滅びるがいい!!」
「違う!!たとえ壊れていたとしても、ボクらは、まだ生きている!」
「黙れッ!未熟者めが!お前らの力など、何の役に立つ!
それとも―― そこの言霊使いの薄汚い魔法で、我々を黙らせるつもりか?」
「うっ……」
レイが青くなって、体を強張らせた。
「お前たちは、全員、重罪人だ!」
ドン、ドン、ドン!!
ドーマは立ち上がった。
ウォールがドーマの元へと駆け寄る。
すると、体が見る間に大きくなった。
「ドーマ!!」
「ウォール!!」
二人は台座に並んで立ちふさがった。それは、まるで巨大な絶壁だ。
二人の眼光と同じ青い光がカッと広がり、あたりを急速に凍らせていく。
氷山が厚くなる。
だが、タトたちの腰のオリジア石が、いっせいに朝日のような黄金色に輝いた。
レイを侮辱されたタトは、なりふり構わず力の限り叫んだ。
「僕らの力は!誰かを裁くためのものじゃない!誰かを支え、共に歩くための力だ!!」
それはもう、悲鳴に近かった。
「あなたたちだって、わかっているはずだ!ぼくらは、女王のオリジンだ!
彼女を守るために、彼女と一緒に生きるために、ここへ来たんだ!
それが、ボクらの存在意義だ!!」
パアッとオリジア石が強く光った。
しかし、青白い氷の冷気が、ドーマの怒号と共に三人を飲み込もうと迫る。
「黙して罪を償え!
死してもなお、役目を果たすがいい!
我らは二人―― 堅固なる双璧!
ここを、死守する!!」
黄金の光が跳ね返す。
タトはしっかりと、巨大なドーマとウォールを見据えた。
「いいや!死んだように生きるのは、もう終わりだ!女王の意思を――!」
二つの光は真っ向から衝突し、山頂の空間をバリバリと揺らした。
オリジア石の光はどこかあたたかく、その熱は三人に力を与え、優しく包んだ。
そのぬくもりに包まれたミミの震えが止み、身体が照らされて、赤毛がルビーのように輝いた。
途端、ミミはパッと顔を上げた。
(つづく)
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