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いつから大人に、きっと大人は。


雨上がりの午後、この時期特有の生温い空気が
肌を舐め、嫌でも目が覚める。

身体が重い。ただ起きただけなのに疲れている。


苛々する。

とりあえず顔を洗おうと洗面台へ向かい、ふと
鏡に映るその顔は、一体誰なのかと問いたくなるような、やつれた、くすんだ、目に光のない「誰か」。

苛々する。嫌になる。
幸せが逃げるとかよく言われたけど、お構いなしにため息が出る。

こんな顔で明日、社内プレゼンか。

せっかくの休みだというのにそんなことを考えてしまい、思わず苦笑いをする。


「大人はかっこいいんだぞ。」

そういえば昔、誰だかに言われたような。
小さくて純粋な心は、その言葉を無垢に信じ、
憧れを抱いた。

いつからだろう。

天気は雨。散歩道、水溜まり。

下ろしたばかりのブカブカの長靴を履き、
水溜まりを見つけては走り、見つけては走り。
喜んで入っては遊んでいたあの頃と、

下ろしたばかりの革靴を履き、スーツを着て、
水溜まりを見つけては汚すまいと避けながら
歩くようになったこの頃。

見えている景色は同じはずなのに、この世界に
億劫さを感じるようになったのは。

大人になったから、だろうか。
だとしたら、大人になるなんてろくなものじゃない。


会社の昼休み、水溜まり。
プレゼン、上手くいかなかったな。

苛々する。嫌になる。

視界が歪む。雨だ。また水溜まりができてしまう。


「大人はかっこいいんだぞ。」

全く偉そうに。

胸を張って言えるような自分ではない。


雨が上がったら、気晴らしにあの店の珈琲でも
飲みに行こうか。
いつものやつ、ブラックで。

きっと、大人はかっこいいんだぞ。

言い聞かせのような、鼓舞。


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