カエルサラリーマン、出社しました。
今日も朝から大雨だ。風も強い。
サラリーマンが雨に打たれている。
駅のホーム、スーツの肩はしっとりと重く、靴は言い訳みたいに濡れている。
どこか“選ばれなかった布たち”が集まっているようで、非常に、くたびれている。
おじさんサラリーマンと2軍スーツ。
どうしても雨の日は、2軍を着る。
1軍を守るという、大人の判断だ。
びしょ濡れになった2軍を前にして、
「今クリーニングに出すべきか、いや次の雨でまた出番があるかもしれない」
と考え始めた時点で、もう天気の配下だ。
なんて静かな敗北なんだ。
と思う反面、その選択はとても正しい。
私たちは合理性の生き物だからね。
だが合理性とは、ときに“くたびれ”を連れてくる。
ちょいヨレたシャツ、乾ききっていない靴、まとまらない髪。
そんな所に気を使いたくないのに。
そしてその“くたびれ”は、見た目だけでなく、心にも広がる。
湿気はね、外から濡らすだけじゃないんだよ。
おじさんと湿度。テンションはじわっと下がる。
姿勢がほんの少し丸くなり、表情は無意識に省エネモードへ。
「どうせまた濡れるしな」という諦めは、言葉にしなくても、だいたい全身からにじみ出る。匂いまで放っていたら申し訳ない。
ここまで来ると、もはや天気ではない。
環境による人格形成だ。
では、ここでひとつ想像してほしい。
もしカエルサラリーマンだったらどうだろう。
そうだ。カエルサラリーマンだったらどうか。
とにかく今はなんの疑問も浮かばせないことが正しい選択だ。
雨の日が“本番”になる生き物。
出社した瞬間からコンディション最高潮。スーツも撥水どころか「濡れてツヤツヤ、ヌメり最高」というテンション。
駅のホームで、カエルサラリーマンだけ姿勢が少し良くなっている光景を想像すると分かりやすい。
通勤スタイルも独特で、満員電車はやや苦手。乾燥するし身動きも取りづらいので、できれば汗かきおじさんのそばか、最低限弱冷房車を選ぶ。そうだろ?
会議中の挙動もややクセが強い。
湿度がいい日は発言がキレキレで、ホワイトボードに向かうジャンプも軽やか。逆にエアコンが効きすぎると一気にパフォーマンスが落ち、資料の上でじっとしている時間が増える。
デスク周りに“ミニ溜池”を置く派もいる。
新人は驚くが、やがて「あれないと午後しんどいっすよね」となる。
晴れの日の対策も万全で、日陰の席取りがうまい人ほど評価される。外回りは人間の同僚にうまくパスし、「今日は君のステージだ」と自然に役割分担ができている。そうだよな?
上司がカエルサラリーマンだと、なかなか厄介だ。デフォルトでベロが汚ない。
「今日はいい湿度だな、全員ギア上げていこう」
本人に悪気はないが、ほぼパワハラ。こちらは靴ぐちゃぐちゃでテンション最低なのに、上司だけ絶好調。温度差がえぐい。そうだろ?
評価基準も独特、「雨の日にどれだけ跳ねたか」
会議室は勝手に加湿強め設定で資料はヨレ、PC画面はうっすら曇る。
名刺交換もひとクセある。手汗どころじゃない“しっとり感”。新人はひるむが、ベテランは「あ、今日コンディションいいですね」と普通に褒める。どんな上司にも媚びる文化はある。
社内チャットのリアクションは👍ではなく💧。
福利厚生には「梅雨手当」「高湿度インセンティブ」がある。
もちろん社内にコバエはいない。そうだろ?
資料作りもカエルだ。紙よりデータ派かと思いきや、「湿度でニュアンスが伝わる」と紙文化が根強い。少しヨレた資料が“味”扱いされる。
ランチは水分多めが正義。ラーメンやうどんは業務の一環。逆にパサつくパンの日は午後のパフォーマンスが露骨に落ちる。新人、パン買ってこい。
社内恋愛も独特で、「同じ水たまりを共有したのがきっかけで」みたいな話が普通にある。
仕事ぶりもやはりカエルだ。
プレゼンは意外とうまい。間の取り方と“ここで一跳び”の山場作りが絶妙だ。ただレーザーポインターはベロだ。汚ない。
視界の取り方も独特。ほぼ首を振らずに広く周囲を把握し、会議中でも全員の反応を同時に拾う。だが弱点があるとすれば、急に動くもの(例えば部長の咳払い)に過剰反応する。
擬態スキルも高い。静かに座っているだけで、背景と同化する。気づけばプロジェクトの初期からいたことになっているし、いなかったことにもできる。議事録が追いつかない。
そして水際の攻防がうまい。あとベロ汚ない。
なお、繁忙期の夜はオフィスのどこかで小さく鳴いている。誰も触れないが、翌朝タスクはだいたい片付いている。そうだよな。
私たちはいつも、
晴れの日を前提にした正しさで生きている。
濡れないこと、汚れないこと、整っていること。
だけど世界の半分くらいは、雨でできている。
だったら、濡れたまま輝く方法があってもいいじゃないか。
明日から正式にGW、そんな前の日は傘なんか捨てて、その場でジャンプだ飛び跳ねろ。
GW3日目、ご覧のとおり人間は毎日働いた方がいい。
いいなと思ったら応援しよう!
私はこちらのチップのみで生計を立てておりますが、決して甘やかさないでください。