黒の機械兵 第一話 たびだち#5
疑問は解消されぬまま、儀式は滞りなく行われた。
「はい、それでは皆の測定が終わりましたね。魔力無しのコはゼロ。イレギュラーはトーリくんだけ。何事もなく結構結構」
イレギュラーは何事かではないのか……?
そんな俺の不満とも言えぬ不満を心中洩らしたとき、轟音が響き渡った。
《ギギョーーン!!》
「マリスコードだ!! 教会に逃げろ!!」
「柵をぶっ壊して入ったのか!? 対応が間に合わないぞ!」
野外から大声が響く。その向こうでは咆哮のような音と、巨大な何かが地面を踏み締める音が響き渡っていた。
「マリス……コード……?」
「知らないのか? 何? 転生者で記憶が……?」
聞くともなしに呟いた俺の言葉に、バタバタと駆け込んできたおじさんが反応する。先ほど典礼に来ていた村人達の一人だったと思う。そう、狩人のアラン小父だ。
《ギギョーーン!!》
そして再び、加えて比較にならないほど大音量で、甲高い咆哮が響く。それは記憶の中の回転工具の稼働音に似ていた。
「扉を閉めろ。こっちで気を引くぞ! あとの奴らには村長の館に向かってもらうしか無い」
外開きの石扉を閉め、更に内開きの鉄扉を閉じる。
「マリスコードってのは……簡単に言えば鉄の獣だ。だが普通の獣と違って、こちらを見れば積極的に襲い掛かって、ただ純粋に殺傷しに来る。食うためでも、身を守るわけでもなく。だ」
そう説明するアラン小父の目は微かに恐怖に染まっていた。狩人として普通の獣と接する機会が多いからこそ、その異質さをよく知っているのかもしれない。
「くそ……誰も死ななければいいが」
「そのために時間を稼ぐんだ。術具を廻すぞ」
村の男衆が忙しく立ち働く。教会の屋上まで上り、大型の器具……術具を引き上げるようだ。
「トーリくん、他の皆も。折角だから見てきなさい」
アガツマ氏はあくまで落ち着いた様子でそう言った。マジか。
☆
鉄の狼。というのが素直な感想だった。ただし、高さは人の倍ほどで、3mといったところか。重さに至っては10倍では済まないだろう。
ふと、その狼の顔がこちらを真っ直ぐ射抜く。俺たちは屋上のヘリから恐恐覗いていた。
「うん、やっぱりトーリくんを見ているね」
《ギギョーーーーン!!》
頭の中をかき回すような高音が響き渡る。いや、俺を見ているってどういうこと?
「魔力量さ。それを識別して奴らは動く」
咆哮する狼の口の中は、牙ではなく高速回転する小型の丸鋸が幾列も並んでいた。
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