「大好きだよ」止まっていた夫婦の時間が動き出した日
私たち夫婦は、来年で結婚10周年を迎える。
あのときはまだ、
大人になりきれていないまま一緒になって、
そしていつの間にか、親になって5年が経った。
気づけば、お互いに落ち着いた
中年夫婦が出来上がっていた。
私たちは、毎日を
「それぞれの持ち場」でなんとか回してきた。
夫は長時間労働が当たり前の業界にいて、
私は子育てに追われる日々。
「共働き・共育て」が主流になってきたとはいえ、
我が家にはその波は届かなかった。
頼るとか、助けてもらうとか、
そんなことを考える余裕もなく、
夫は“いないのが当たり前”の存在になっていった。
私も子どもとの生活で手一杯で、
気づけば夫婦の会話も、
向き合う時間もほとんどなくなっていた。
そんな中、最近になって、
ほんの少しだけ夫婦で過ごせる時間が持てるようになった。
子どもが成長して、夜中に起きることもなくなって、
ようやく、私たちにも「静かな夜」が訪れた。
なのに、その時間をどう過ごしていいのか分からなかった。
ふたりきりが、こそばゆい。
なんとなく気まずい。
それほどに、私たちは「夫婦の時間」を
置き去りにしてきたんだと思う。
でも、少しずつ思い出してきた。
夫は、ずっと変わらず「大好き」を
私に向けてくれていたこと。
私が気づかないふりをして、受け取らずにいたこと。
無意識に、拒んでいたのかもしれない。
きっと私自身が、“母”でいることに必死で、
“ひとりの女性”でいる余白がなかったんだ。
⸻
最近、少し心に余裕ができてきた。
だから、久しぶりに、
夫に「大好きだよ」って言ってみた。
ちょっと照れながら、でも勇気を出して。
夫は、びっくりしたような顔をして、
そして少し笑って「俺も大好き」と言った。
その瞬間、止まっていた時間がまたゆっくりと、
動き始めた気がした。
⸻
10年のあいだに、変わったことはたくさんある。
でも、変わらない気持ちも、ちゃんとあった。
あの頃のように毎日「大好き」と言い合うことは
もうないけれど、
それでも、ときどきふと伝えたくなる。
「大好きだよ」
その一言が、私たちをまた“夫婦”に戻してくれる
気がしている。
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