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術後の患者さんが、ベッドの上で仁王立ちしていました。

今日も一日お疲れ様です。

7月に入ったけど、天気がいまいちな日が続いてますね。

暑くないのは助かるけど、天気のせいか身体がだるい。

頭もぼーっとして、ちょっとつらい。

はやく天気がいい日が続いてほしい。

天気ってメンタルに結構直結するなと

改めて感じています。

皆さん、無理なさらずお過ごしくださいね。


新人看護師だった頃、

今でも忘れられない出来事があります。

その日は初めて一人で術後の患者さんを担当する日でした。

それまでに、何人かの術後患者さんを先輩と一緒に担当していました。

そして、いよいよ独り立ちの日がやってきました。

私が初めて一人で術後を担当することとなった患者さんのAさんは、

重度の認知症がある70~80代の男性でした。

手術直後の患者さんがいても、

他の患者さんの受け持ちが減るわけではありません。

その日もAさんを含め、

15人ほどの患者さんを担当していました。


その日の私は、朝からかなり緊張していました。

いつものように

「勤務が穏やかに終わりますように。」

と心の中で祈りながら家を出ました。

病棟に着くと、その日の様子が一発で分かります。

落ち着いて過ごせている状態であれば、

ナースステーションにスタッフがいて、

記録を書いています。

逆に何か起こり、落ち着かない状態であれば、

ナースステーションにほとんど人がいない。

そしてその日の日勤のリーダーがピリついている。

その日は落ち着いている日でした。

内心ほっとしつつ、勤務が開始しました。

手術は無事終了。

手術室から患者さんを病室へ搬送しました。

モニターを確認しながら、

バイタルサインを測って、

点滴やドレーンを確認して、

先輩に教わった通りに観察していきます。

Aさんは反応はあるものの、

まだ麻酔の影響もあってか、

かなり眠そうな様子でした。

血圧などの状態は問題なく、

「思ったより落ち着いているかも。」と

少しだけ安心したのを覚えています。


突然始まった


術後の患者さんの観察は、

全身麻酔から安全に覚められるかなど確認するため、

術直後から始まり、5分、10分、30分、1時間・・・・

とかなり頻回にみる必要があります。

もちろん、私もそのつもりで動いていました。

ただ、ほかの受け持ち患者さんの数が多くて、

術後のAさんのお部屋に辿り着けない。

夕食後の薬を配りながら、

血圧など測定していると、

自分が思った以上に時間がかかる。

先輩はすいすいこなしていたのに、

なんでこんなに時間がかかるんだろう。

「はやくAさんのお部屋に行きたいのに」と焦りと不安が募ってくる。

ようやくAさんのお部屋に行ける時間を作れたため、

急いでお部屋へ伺うと、

Aさんのお部屋のドアを開けた瞬間、

ふわっと血の匂いがしました。

「……え?」

ベッドを見ると、

シーツには大量の血が広がっていました。

そして、

寝ているはずのAさんが、

ベッドの上に血まみれで仁王立ちになっていました。

Aさんはドアを開けた私をびっくりしたように

まん丸な目をして、見つめていました。

おそらく数秒、私とAさんは見つめ合っていました。

「血はどこから?」

「まさか、ドレーンが抜けた……?」

と頭が真っ白になりました。

はっと我に返り、

「Aさん・・・!ね、寝てください!!お願いです!!」

と懇願しましたが、

Aさんは

「家に帰るんだよ~」

とどこ吹く風で、ベッドの柵をまたごうとしていました。

Aさんの体に入っているドレーンは、

またごうとしている柵の反対側につけてあったため、

ドレーンが引っ張られて、

今にも抜けそうになっているのが目に入りました。

ド、ドレーンが抜ける・・・!!

やめて~!

と内心、阿鼻叫喚。

「Aさん、危ないから一旦寝ましょう!」

Aさんを何とか寝かせようと必死でした。

どうしよう。

一人じゃ無理!

落ち着け。

まず応援を呼ばないと。

と急いでその場で、ピッチを使って同じ勤務帯だったB先輩にコール。

しどろもどろになりながら状況説明し、

至急来てもらうことに。

B先輩は大ベテランで、経験豊富。

言い方は厳しいけど、愛のある先輩でした。

部屋をみた途端、B先輩は一言。

「あらぁ、Aさん派手にやったねぇ。

ほら、かみんさん突っ立ってないで、出血源確認するよ。」

とB先輩の声で我に返りました。

2人でAさんをなだめて寝かせ、

出血源を確認しました。

幸いドレーンは抜けておらず、

再手術は避けることができました。

私はそこで初めて、大きく息を吐きました。

それまで息をすることも忘れていたようでした。

出血源は、点滴を抜いた刺入部でした。

勢いよく引き抜いたことで、

かなり出血をしてしまったようでした。

シーツ、術衣から、すべて血まみれだったため、

B先輩とAさんの体拭きから着替え、

シーツ交換まで行い、

さらに術後の観察も行いました。

Aさんは重度の認知症があり、

自分が手術を受けたことも理解できていませんでした。

そのため、起き上がった時にすぐに対応できるように

センサー類をベッドサイドに設置することとなりました。


Aさんのすべての処置が終わったものの、

他の担当患者さんの観察ができていない。

でも、夜勤の担当に申し送りをしないといけない。

申し送りの時に、状況を説明し夜勤担当者に謝り、

申し送り後に他の担当患者さんの血圧など測定しに行きました。


終わったあと


申し送りと、血圧等の測定を終えて、

ナースステーションに戻ってきた頃には私は汗だく。

気持ちも落ち込んでおり、ぼろぼろでした。

そんな私にB先輩が振り返りをしようと声をかけてくれました。

「なんで今回こうなったと思う?」

と言われ、

「他の患者さんの対応に思った以上に時間がかかり、

Aさんの観察が予定より遅れてしまいました。

Aさんの観察を最優先にするべきでした。」

と話しているうちに、情けなくなってきて、

涙が出ました。

Aさんが点滴の抜針で済んでよかったものの、

あんなに血だらけになってしまった。

私が早めに何度も見に行って、

前もって対応していれば、

Aさんもこんなことにはならなかったのに。

B先輩は

「そうだね。術後の患者さんは何よりも優先しないと駄目だよ。

今回みたいに認知症がある場合は特にね。

術後のせん妄で暴れることもあるからね。

まぁ、でもすぐにあの場で私に電話できたのは良い判断だったし、

勤務中によく泣かずに頑張ったね。」

と言って、背中をぽんぽんと叩いてくれました。


今思うこと


新人の頃は、

先輩に数えきれないぐらい怒られました。

でもその中でも、愛があった先輩の言葉や

アドバイスは今でも覚えています。

嫌な顔一つせず、何ならちょっと笑いながら、

「Aさん、こんなに血だけにしちゃって痛かったでしょう。

家に帰るのは、もうちょっと元気になってからにしましょうね。」

と優しく対応していたB先輩を忘れません。

最初の職場は怖い先輩が多い中で、

数少ない尊敬できる、ユーモアのある優しい先輩でした。

仕事と看護師としての大事な心構えを教えてくれた先輩です。

私もこんな風にいつも患者さんの対応をしたいなと思わせてくれた人でした。

看護は技術だけでは続けられません。

あの頃の私は、先輩たちに仕事を教えてもらっただけではなく、

「患者さんを見る姿勢と心」

を教えてもらっていたんだと思います。

私が10年近く看護師を続けられたのは、

こうした先輩方に支えていただき、

大切なことを教えていただいたからだなと、

記事を書きながら、改めて思いました。

今でも病院の血の匂いを思い出すと、

真っ先に浮かぶのは、

あの日の修羅場ではありません。

「Aさん、こんなに血だけにしちゃって痛かったでしょう。」

と優しく対応していたB先輩の笑顔です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

※患者さんのプライバシー保護のため、一部内容を変更しています。


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