ハウス!で帰る妹8人衆
ケージの蓋を開けると、わらわらと押し寄せてくる8匹の小さな影。
彼女たちは「妹8人衆」。
8月19日生まれの13匹兄妹(♂5匹+♀8匹)の中で、女の子だけの仲良しチームだ。
ちなみに男の子チームのほうは、兄のドンちゃんたち5匹。どちらも元気いっぱいに育っている。
妹衆は全員がとにかくよく懐いている。
蓋を開ければ、競うように私の腕へ。ときには、一列にきれいに並んで、手の甲から肩へと行進してくる。
その光景は、まるで小さな毛玉の行列。
毎朝9時の点呼時間。金網越しにのぞきこむと、全員が前面に集まり、ちょこんと座ってこちらを見上げる。
「おはよう」の挨拶を交わすのは、私と彼女たちの日課だ。
時間に余裕がある朝は、ケージから出して遊ばせることもある。
その時は「ハウス!」の号令で、腕の上から列をつくって帰っていく。
面白いのは、まわし車で夢中に走っていた子も、ちゃんと降りてケージに戻ること。
全員がそろって帰るまで、こちらも自然と笑って見守ってしまう。
──この「ハウス」、最初からできたわけじゃない。
最初は、ケージに戻すたびに声をかけ続けていただけだった。
それを繰り返すうちに、どうやら言葉を覚えたらしい。
動物の行動学では、望む行動を引き出すために「報酬」が使われるのが普通だ。
でも、妹8人衆の場合、その報酬はおやつでも餌でもない。
唯一あるとすれば――
全員が帰れたときに、私が全力でほめちぎること。
「おりこうさんだね!」と声をかけ、目を細めて笑いかける瞬間こそが、彼女たちのご褒美なのだ。
これは特別に訓練しようと意識したわけではない。
日々の積み重ねと、互いに向ける信頼があってこそ成立するものだ。
そして、この“信頼関係”を築くきっかけになったのが――1匹の特別なマウス、「白玉」だった。
彼女が私とマウスたちの距離を、ゼロにしてくれたのだ。
