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『国語便覧』(改訂版)ノート

足立直子、二宮美那子、本廣陽子、森田貴之監修
数研出版刊

 教育関連の書籍を読んでいるときに、『国語便覧』なるものの存在を知り、面白そうなので購入した。国語の授業の副読本というか、資料集だ。B5版520ページのオールカラーの大型本であるが、定価は990円(税込み)と安価だ。
 筆者は高校の国語の授業でこのような国語便覧を使った記憶がない(もう半世紀以上前ですからね……)。『国語便覧』がいつ頃から使われ始めたのかは寡聞にして知らない。

 数研出版の『国語便覧』の初版は2017年11月で、改訂版の第1刷は2023年11月に刊行されている。
 なお「便覧」と名の付いた同様の資料集は大修館書店、文英堂、第一学習社、浜島書店などからも発行されている。

 構成は、「古文編」「現代文編」「漢文編」「表現編」「資料編」と分かれており、それぞれ文学作品を読むための基礎的知識となる当時の習俗や社会、文学の系譜、その時代の有名な作品や作者についてのエピソードも書かれており、作品を読むための基礎知識となる内容が充実しており、関連の写真も多数掲載されている。

 そのなかで筆者がこれまで見たことも読んだこともなかった内容をいくつか挙げてみる。

 まず「古文編」(P11~)の「歌枕地図」(P106)。和歌のなかに昔から折り込まれてきた地名であるが、単なる地名にとどまらず、特定のイメージを伴っているものもある。
 百人一首から歌枕をいくつか拾ってみると、例えば、「春過ぎて 夏来にけらし 白妙の衣干すてふ 天の香具山」(持統天皇)の「天の香具山」や、「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも」(阿倍仲麻呂)の「三笠の山」などである。
 これまで多くの和歌に使われてきたそれらの地名が日本地図にスポットされている。
「歌枕」になった地名は全国各地に散らばっているが、本州、それもいまの関東から関西地方に多く分布しており、北海道や沖縄にはない。和歌という日本の古典詩歌の文化の分布状況が分かる。

 次に、『源氏物語』名場面集(P134)。源氏物語五十四帖が、光源氏や薫の君(光源氏の子)の年齢と対比してそれぞれの巻が配置された年表となっている。各巻が時系列に沿っていないこともこれでわかり、この表によって源氏物語の構成が理解できる。
 あわせて各巻のあらすじ(P136~P145)と登場人物やエピソードが簡潔に書かれており、人物の関係図や光源氏の邸宅の配置図もあり、物語の全容がつかみやすい。それでも読み通すのは大変だろうが……。ちなみに筆者は興味はあるが、いまだ手を出せないままである。

 現在の高校の国語の教科書がどのようなものか知らないが、このような資料集を活用すれば、授業は面白くなるだろうなと思う。

「現代文編」(P199~)では、文芸思潮一覧(P238)がいい。写実主義や浪漫主義、自然主義や反自然主義(耽美派や白樺派など)の明治期や大正期に現れた文芸思潮の違いや、昭和初期から平成・令和の時代の文学作品の作風の違いがわかるようになっており、それぞれに代表的な作家が挙げられている。
 ここまで読んできて、「何派を代表する作家は誰か?」などのように試験問題に出てきそうなところだなと思った次第……余談だが。

 このあとのページでは、有名な作家や評論家など多くの人が主な作品の紹介とともに、その作風の特徴が簡潔に書かれている。
 筆者は文芸作品や評論をわりに読んだほうだが、名前さえまったく知らない作家が掲載されているのには少し驚いた。

「漢文編」(P363~)では、中国に古代から使われてきた器物や習俗、科挙の制度の詳細や年中行事が掲載され、そのあとには紀元前16世紀の伝説時代の堯・舜から現代の中国の年表に、各時代の中心的な思想とその思想家や著名な文人、同時代の日本の歴史における事項が並べられている。さらに中国の思想家や文学作品の解説や故事名言も載っており、わが国の文化の源は中国だということがよくわかる。

 そして最後にいかにも参考図書然としているのが、「表現編」(P427~)である。
 ここでは、「言葉でキャッチボールをしよう」という表題で、理解、要約、思考、発想、説明、表現、知識を蓄える方法から、話し合い、小論文、レポート、プレゼンテーションのやり方などが懇切丁寧に書かれている。さらには、原稿用紙の使い方や読書感想文の書き方、履歴書の書き方や敬語の使い方まで載っている。

 最後の「資料編」(P469~)には、同訓異義語、難読語、慣用句、文語文法と口語文法の違い、漢文句法一覧などが掲載されている。

 おまけだが、73ページから419ページの奇数ページの下の余白(ノンブルの横)に、「文学史問題」として、大学入試の過去問が掲げられ、次のページに答えが載っているのもいかにも参考書らしい作りである。
 筆者は試しに全問に挑戦した。ただし正答率はヒミツである。

 2023年12月1日にこのnoteに『最新世界史図説 タペストリー』(二十一訂版 川北稔、桃木至朗監修、帝国書院刊)を取り上げたが、この資料集も全ページカラー刷りで大判380ページ以上ある実に充実した内容で957円(税込み)であった。
 この本は高校生だけでなく、社会人になっても役に立つ〝国語の百科事典〟である。

 学校で使われるこのような教材は、あらかじめ売れる部数(=発行部数)がほぼ決まっているので価格を下げやすく、一般書籍と比べて低価格にできるのであろう。ちなみに印刷部数が多いほど、一冊当たりの原価は下がることになる。
 このような本は電子書籍でなく紙で眺めるに限る。

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