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『レモンと殺人鬼』は熱い妄信の物語。

くわがきあゆ氏の『レモンと殺人鬼』を読み終えた。男たち、女たちの妄信と執念の物語である。

ねっとりとした執念。逃れられない血縁。理屈が通じない、独特な思い込み。・・・・・・そういうのは、わからなくはないと思った。時間と理屈を超えた想いが人を動かすというのは、わからなくはない。

小説内の人たちは、行動経済学的に最適解の振る舞いをするんじゃなく、自分の信じるところに基づいて行動する。それは、考えてみると僕らのことでもある。僕らはみんな何だかんだ言っても、自分の信じるところに基づいて行動しているのだ。時にはそれが極めて非合理であったにせよ。

だから、ここに登場する妄信する人たちのことを、愚かだと笑うことはできない。むしろ、愚かしい想念ががちゃがちゃと騒々しく飛び交うこの小説世界は、温かい血が流れているとも言える。

文学的に貧血気味な人、洗練疲れの人。そんな人たちへ。本当は、僕らは愚かしくもぬくい血を備えた存在だってことを、この小説に触れて思い出すのもわるくない。

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