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国際情勢:トランプ関税

 2025/04/某日、アーサー・ラッファーが、ホワイトハウスに呼ばれて、トランプ大統領と60分間ミーティングした。ネットメディアの『アクシオス』が報じた。これは重要な情報だ。(文字数11,400)

https://www.axios.com/2025/04/24/laffer-trump-tariffs

Trump-honored economist says tariffs causing scariest period in his lifetime

トランプ大統領から名誉を受けた経済学者、関税が生涯で最も恐ろしい時期をもたらしていると語る

https://www.axios.com/2025/04/24/laffer-trump-tariffs

 『アクシオス』は、政治に特化したメディア『ポリティコ』から派生した新興メディアで、その元記者が創始者だ。トランプの独占取材で知られる。なお『アクシオス』とは、古典ギリシャ語で、価値があるという形容詞だ。
 
 ただ『アクシオス』のこの記事内容は少ないので、他のメディアの情報も付け足して、この60分間のミーティング内容を復元したい。アーサー・ラッファーは、トランプ関税を、どのように理解しているのか?
 
 アーサー・ラッファー(1940/08/14~)は、レーガン政権とトランプ政権一期目の経済顧問で、事実上、アメリカの好景気を指導した人物だ。多分、今地上で生きている人で、この人以上の経済学者はいない。
 
 ハイエクやドラッガーより、ズバリ言う人なので、かなり分かり易い。研究対象も、経済政策に絞られている。前二者は「自由の哲学」とも言うべき内容から、色々と派生して語るため、分かり難い面がある。
 
 アーサー・ラッファーも「自由の哲学」から派生した考えを述べていると思うが、経済政策に絞り込み、話す相手も政治家が多い。州の経済顧問とかもやっていた。最適な税率を図式化したラッファー曲線で知られる。
 
 今回、アーサー・ラッファーは、トランプ大統領と会って、トランプ関税に対する懸念は伝えたものの、最終的にはトランプ大統領が言うbeautiful pictureを共有して帰ったようだ。だから史上最高の大統領と称賛する。
 
 だが"the most scary, in-flux period"「最も恐ろしく、流動的な時期」と今のアメリカ経済を評価しており、手放しに褒めている訳でもない。トランプ関税と保護貿易政策が、雇用喪失と生産性低下を招くと言っている。
 
 「経済とはインセンティブである」と言う立場に立つアーサー・ラッファーなら、この指摘は理解できる。だが彼はこうも言っている。「トランプ大統領は自由貿易主義者です。そして偉大な交渉者です」見て行こう。
 
 トランプ関税は、大統領令で発行され、すぐにキャンセルできる事が特徴で、過去の合衆国の関税とは異なると、アーサー・ラッファーは説明する。過去の関税は、アメリカ議会で審議され、数年かけて撤廃される。
 
 そのため、第二次世界大戦を招き、ブロック経済を助長した過去の関税とは異なり、必要がなくなれば、数分で取り消せるディールのための関税だと、アーサー・ラッファーは説明している。実際、半日で保留にした。
 
 トランプ関税は、関税をかける事が目的ではなく、ディールに持ち込むための手段で、一種の脅しである事はアーサー・ラッファーも認めている。アメリカも貿易相手国も、貿易でWinWinの関係になるのが目的だと言う。
 
 「ディールするか?関税か?どちらか選べ」とトランプ政権は、世界に迫っているのだ。これまでアメリカは貿易で、相手国による国内市場の参入を許して、為すがままにしてきた。結果、膨大な貿易赤字が発生した。
 
 この貿易の不均衡を正すのが、トランプ関税というツールなのだ。今までは、アメリカ赤字、貿易相手国黒字、という構図だったが、これをアメリカ黒字、貿易相手国も黒字という状態に持っていくのが、目的だ。
 
 簡単に図式化すると、アメリカ1万円赤字、日本2万円黒字だったとしたら、これをアメリカ5,000円黒字、日本5,000円黒字にするという事だ。ずっとアメリカが赤字では、貿易も成り立たないという話だ。

 だが実際の貿易は複雑で、どう頑張っても売れない品目はある。例えば、アメ車はデカ過ぎて日本の道路を走れない。だからトランプ大統領がディールした処で、売れない物は売れない。他の品目でトレードするしかない。
 
 今であれば、アメリカの米を沢山買って、日本国内に流通させる事ができれば、米価も下がるかもしれない。そしてアメリカも米で利益が出て、日本の消費者も、安く米が手に入るかも知れない。味の問題は残るとしても。
 
 アメリカの自動車産業は、景気の牽引車なので、トランプ大統領としては、何としても売りたい。雇用を守りたい。だが自動車の部品を全て国内で製造できる訳でもないので、海外のサプライチェーンに依存してきた。

 トランプ大統領としては、アメリカの自動車産業を、トランプ関税で傷つけたくないから、海外のサプライチェーンで入手する重要な自動車部品を、トランプ関税の対象から外している。特に半導体がそうだ。
 
 トランプ関税で、自動車の値段が上がるのを防ぐためだが、これを実現するには、膨大な品目リストを作り、精査する必要がある。だからトランプ政権と大手自動車会社は、ミーティングを開いて、協議している。
 
 これはあまり健全な経済活動ではない。むしろ、無駄な作業だろう。だからイーロン・マスクがある時、関税はゼロがいいと漏らした。実際、関税はアメリカ国内の市場も乱している。商品が関税分以上値上がりしている。

Carnation
カーネーション


 先日、母の日で、カーネーションを買おうとしたら、かなり高くて諦めたという報道がCNNであった。カーネーションの相場金額+関税分+何かだ。因みにこの花は、アメリカ国内より海外から輸入分の方が遥かに多い。

 CNNでは、この上乗せ分の「何か」の正体は追及はしていない。この関税分+「何か」は、品薄のため、また母の日という時節的な問題もあって、便乗値上げというか、自然と市場で値段が上がってしまったのだろう。

 海外からカーネーションを輸入する業者も、用意する資金が同じなら、関税分だけ購入できる量が減ってしまう。そうなると例年より少ない数、カーネーションが市場に出回る。結果、供給が足りなくなり、値上げとなる。
 
 母の日にカーネーションが欲しいという需要は満たされず、関税分以上の金額で買うか、諦めめるかの二択となる。これはアメリカの消費者にとってストレスだろう。トランプ支持者だって、面白くない。
 
 経済はインセンティブであるという立場に立つアーサー・ラッファーは、この状況を懸念している。大企業は体力があるからしばらくもつとしても、個人経営のスモールビジネスはもたない。仕入れができないからだ。
 
 アメリカ国内で、全て仕入れができるビジネスは、トランプ関税の影響を受けないかもしれない。だが戦後80年を経て、自由貿易をやってきたアメリカで、そういうビジネスは少ないだろう。例が思いつかない。
 
 だからトランプ関税は、長期的には実施できないと、恐らくアーサー・ラッファーも考えている。貿易相手国との交渉が終わり次第、解除して行くのだろう。だがアメリカも売れる商品、売れない商品がある。

Old Maid
ババ抜き


 だからトランプ大統領はディールで、例えば、アメリカの自動車を買わないなら、代わりにアメリカの米を買えと、トレードを持ちかけている。なので今、世界各国とアメリカで、トランプの「ババ抜き」をやっている。
 
 力関係から言って、アメリカより強い国は存在しないから、どの国も、トランプ関税を前にして、トランプ大統領と「ババ抜き」のカード・ゲーム、もといディールをやらざるを得ない。どの国も貿易黒字が減るだろう。
 
 トランプ大統領は、戦後80年、世界各国は、アメリカが自由貿易をやっている事をいい事に、カモにして、散々アメリカを食い物にしてきたと言っている。自分はこの貿易不均衡と不正義を正すのだと言っている。

 アーサー・ラッファーも基本、この見解に賛成している。ただその方法としてのトランプ関税は、劇薬なので、ディール目的のみ、許されるという見解だ。長期的に実施すると、貿易相手国だけでなく、アメリカも傷つく。

 現在のアメリカの実力と、トランプ大統領がいる間は通用するかもしれない。だがトランプ大統領がホワイトハウスを立ち去り、そしてアメリカの国力も凋落すれば、トランプ関税で作ったディールも崩れて行くだろう。
 
 どう考えても、力関係で無理やりねじ伏せた感は否めない。トランプ関税で注目を浴びたアフリカの小国レソトは、50%もの関税が課される予定だ。レソトはアメリカ向けにリーバイスが年間44万本もジーンズを作っていた。

Jeans
ジーンズ

 
 リーバイスも、人件費が安いから、レソトに工場を立てて、ジーンズを作って、関税0%でこれまで、アメリカに売っていた。それが50%も関税が課されたら、5,000円のジーンズも7,500円に跳ね上がる。
 
 トランプ大統領は、リーバイスに、海外工場を畳んで、アメリカに戻って来いと言うのだろう。海外から国内に引き上げた企業には法人税を下げると言っている。だがリーバイス以上に困るのは、レソトだろう。
 
 フランス語圏のマダガスカルも、トランプ関税47%の刑に処された。現地のフランス語話者たちは憤っていた。やはりアメリカ向けにアパレル製品を作って輸出していたのだ。モーリシャスもトランプ関税40%の刑だ。

ホワイトハウスのHPにあるトランプ関税一覧
https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2025/04/Annex-I.pdf?utm_source
 

ホワイトハウスのHPから


 これらアフリカ三か国は、アメリカにアパレル製品を輸出して、大きな貿易黒字を出していたが、トランプ関税を提示されて、腰が抜けた状態だろう。トランプ大統領とディールしようにも、他の貿易品目がない。
 
 多分、ホワイトハウスに訴えても、後回しにされて、止む無くアメリカから、エネルギーか食品をトレードで受け入れるのだろう。これらは割高でも必需品だからまだいいが、要らない製品を押し付けられる可能性もある。
 
 この構図は長持ちしそうにない。アメリカの消費者も、海外から安い輸入品が買えなくなるし、アメリカの企業も海外の工場の件で頭を悩ます。もし工場を畳んで引き上げれば、現地の雇用は失われ、当該国は被害を被る。
 
 自由貿易とは言えないし、現在のアメリカの力で無理やりねじ伏せただけだ。経済のインセンティブを傷つける。アメリカ・ファーストが、世界経済を傷つける。貿易が均衡したとしても、ヘイトは溜まるだろう。戦争だ。
 
 土台、150カ国も相手に90日間で、ディールを決めると言うのも、無理がある。トランプ大統領が交渉の達人としても、雑な扱いを受ける国は出るだろう。品目トレードはヘイトが溜まる。ババを渡される国は絶対出る。

United States Federal Government
アメリカ連邦政府


 アメリカも、chat GPTによると、アメリカ連邦政府の総債務残高は約36兆ドル(約4,320兆円)に達しているらしい。アメリカ連邦政府の年間予算(歳出総額)は、約7兆ドルだ。ざっとみて年間予算5年分の赤字だ。
 
 なおchat GPTによると、アメリカ連邦政府の総債務残高36兆ドル(約4,320兆円)は、アメリカの国内総生産(GDP)約30兆ドル(約3,600兆円)を超えている。これ、大丈夫なのか?アメリカはすでに破産していないか?

 (因みにchat GPTによると、日本の総債務残高は約1,466兆6,952億円だ。日本の国内総生産(GDP)約1,558兆円だ。辛うじて超えていないが、アメリカと似たようなものだろう。日本も負債がGDP超えする日も近い。)
 
 2025/05/16、格付け会社ムーディーズはアメリカ国債の信用格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」に引き下げた。主要な3つの格付け会社全てがアメリカの最上位格付けを取り下げた事になる。やはり、世の中も甘くない。
 
 トランプ大統領の強気の関税攻勢とトランプの「ババ抜き」で、どこまで世界を押し切れるのか分からないが、一時的に成功しても、肝心のアメリカが凋落しかかっているので、長期的には難しいと思われる。
 
 トランプ関税は、市場経済を無視している処があるので、2025/04/02に発表した時、ドル・株式・国債のトリプル安を招いた。これは経済的悪夢だが、トランプ大統領は素知らぬ顔をして、半日でトランプ関税を止めた。
 
 ただトランプ政権も、アメリカを立て直すため、省庁整理とか、移民政策とか、トランプ関税で、アメリカ連邦政府の債務を減らして、貿易も黒字化を目指している。経営者視点で、アメリカ連邦政府を経営している。

Tax


 あとアーサー・ラッファーが指摘している事で、トランプ関税で得た税収は、その分、所得税減税に当てるのだと言う。トランプ関税は実質、消費税みたいな効果があり、減税の財源となると言う。
 
 トランプ関税が、税収になり、その分を、所得税減税に回す事はいい。だがその高いトランプ関税を払うのは、最終的にアメリカ国民、納税者である。さっきのカーネーションの例で行けば、チャラにはならない。
 
 トランプ関税は、あらゆる品目に影響が飛び火して、相場金額+関税分+「何か」が発生しかねない。仕入れに用意するお金が同じなら、品薄にならざるを得ない。そうなると市場は常に供給が不足して、値上げが起こる。

 これは政権を揺るがすだろう。Make America Great Againどころではない。トランプ不況の原因となる。だがそうなる前に、トランプ大統領としては、ディールを纏めて、さっさと交渉を切り上げると思われる。
 
 今まで、世界各国は、アメリカ市場で、商品を売り、莫大な利益を得て来たが、これからはそれを許さないと、トランプ大統領は言っているのだ。アメリカも利益が出て、黒字という貿易でないと許さないのだ。
 
 1990年代、橋本龍太郎政権の時、日米自動車協議があった。アメ車は日本で売れないという自明な議論だ。あの時もそうだったが、日本は全力で抵抗した。今回もビタ一文譲るものかと、日本は抵抗を続けている。
 
 アメリカ1万円赤字、日本2万円黒字だとして、これをアメリカ5,000円黒字、日本5,000円黒字にした場合、日本の貿易上の利益は激減する。倒産する日本企業も出るだろう。だが退くしかない。力関係で勝てないからだ。

 この構図は、日本だけでなく、全世界的にそうなると思われるが、力関係から言って、そうならざるを得ない。その結果、世界中で倒産する企業が増えて、恐慌が発生するかもしれない。これはトランプ関税の余波だ。
 
 仮にトランプ大統領が、全てのディールに敗けて、全世界が交渉に勝ってしまえば、全世界にトランプ関税を実施して、アメリカ及び全世界は果てしない不況の深淵に落ち込んで、アメリカもろとも世界は経済的に心中する。
 
 全世界はアメリカに譲るしかない。アメリカ1万円赤字、日本2万円黒字からアメリカ5,000円黒字、日本5,000円黒字という図式を全世界的に当てはめるしかない。これはこんな手を思い付いたトランプ大統領の勝ちだろう。
 
 アーサー・ラッファーは、トランプ大統領を、交渉の名手、アメリカ史上最高の大統領と持ち上げて、トランプのディールの結果に期待を寄せている。であるならば、当方としても、結果を待つしかない。
 
 心配なのは、世界経済だ。今までの構造では、アメリカが市場を解放していたので、世界中の国々が、自由に商品をアメリカに販売して、売上を立ててきた。だがアメリカ市場が閉ざされた場合、世界経済はどうなるのか?
 


 "You will find out with whether I'm right to be scared or right to be hopeful probably in 90 days — there's not a lot of time." Laffer said.

 
 「私が恐れているのか、それとも希望を抱いているのかは、おそらく90日以内に分かるだろう。時間は限られている」とラッファーは言った。(拙訳)
 

https://www.axios.com/2025/04/24/laffer-trump-tariffs


 このアーサー・ラッファーのコメントは複雑だ。très compliquéだ。
 


 "Once you screw around with supply chains, production facilities, all of that, it's very hard to reverse that," he said.
 
 「サプライチェーンや生産設備などに一度手を加えてしまうと、元に戻すのは非常に困難だ」と彼は言った。(拙訳)
 

https://www.axios.com/2025/04/24/laffer-trump-tariffs


 つまり、トランプ関税に合わせて、国内の産業は弄れないという事だ。
 
 時間的に制約がある中、トランプ大統領は、速攻でディールを纏めないといけない。そうしないと、産業界もトランプ関税に合わせて動いてしまうからだ。そうなると、取り返しのつかない事態になりかねない。


  Laffer said that Trump's 25% tariff on autos risked "causing irreparable damage to the industry."
 
 ラファーはトランプの自動車への25%の関税は「業界に取り返しのつかない損害を与える」リスクがあると言っている。(拙訳)

https://www.axios.com/2025/04/24/laffer-trump-tariffs


 やはり、かなり危ない橋を渡って、トランプ大統領は、全世界相手に、交渉していると言える。こんな事を思い付いて、こんな事を実行できる人は、世界史的にも滅多に現れない。この交渉の規模は史上最大級だ。
 
 どうも、アーサー・ラッファーでさえ、トランプ大統領のやる事を理解できても、結果に関しては、祈るしかなく、ただ選択肢的に、世界がアメリカに折れるしかないから、上手く行くだろうと考えているようだ。
 
 このドナルド・トランプの善悪の深さはとんでもない。確かにこの作戦であれば、全世界相手に、押し切って勝てる見込みは高い。ただし90日以内、もしくは産業界が構造変化する前に、ディールを纏める必要はあるが。
 
 映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』という映画を観たが、浅過ぎる。ドナルド・トランプの悪はもっと凄くて深いし、悪の規模もとんでもない。だがドナルド・トランプの善も同じく大きいのだ。
 
 ドナルド・トランプの何が一番凄いかと言えば、あの復元力だろう。敗ける時は、とんでもなく派手に敗ける。完敗どころではない全滅だ。だが毎回、不死鳥の如く蘇って復活してくる。彼は過去何度か破産している。
 
 経済的な話だけでもなく、2020年のアメリカ大統領選挙で、敗けた後、4年間の雌伏を経て、より強力になって、全世界にヴァンデッタするために、ホワイトハウスにカムバックしてきた。で、トランプ関税だ。
 
 今頃、民主党を裏から操る反トランプ派は、2024/07/13、ペンシルバニア州で彼を仕留め損ねた事を心の底から悔やんでいる事だろう。逆に下手にトランプを攻撃しても、トランプを利するだけだから、もう止めた方がいい。
 
 あまり知られていない事だが、トランプ大統領は、一期目も、二期目も、大統領の給与は年間1ドルだ。3,999万ドル寄付している。本人が大富豪なので、要らないのだ。これはいかなる買収も効かない事も示している。
 
 アメリカ大統領と言っても、完全に経済的にインディペンデントだった訳ではない。過去の大統領は全て、何らかの形で、資金的な制約があり、スポンサーの意向というものに、合わせざるを得なかった。
 
 だがドナルド・トランプだけ異なる。彼は自分の資金力が高いので、誰かのお金で動かせる人ではない。彼を動かすとしたら、別の要素が必要となる。そういう意味でも、真にインディペンデントな大統領と言える。
 
 アーサー・ラッファーが、史上最高の大統領と言った理由も、この辺にあると思われる。前提条件が過去のいかなるアメリカ大統領とも異なるので、トランプ関税みたいな事を思い付き、実行さえできるのだ。
 
 トランプ自身も言っているが、他の大統領に出来ない事を私はやれると言っているのは、そういう意味だ。根拠がちゃんとある。だがマスコミはそういう事実は報道しない。トランプが1ドルで働くとか意味が分からない。
 
 ドナルド・トランプは神か悪魔か、というのが、彼の近くにいる利害関係を持つ者の実感ではないだろうか。英雄の座にいるとしか言いようがない。だがまだトランプ政権は始まったばかりだ。全然クライマックスじゃない。

Economic theory
経済理論


 最後に、アーサー・ラッファーが唱える「フラット・タックス(Flat Tax)」理論について、話したい。「フラット・タックス(Flat Tax)」とは、全ての所得に対して同じ税率を適用する事で、単一税率の話だ。
 
 簡単に言うと、収入が幾らだろうと、総所得に対して、例えば10%の課税にしようという話だ。金持ちも、貧乏人も、税金は10%、それ以上は取らないというのが、「フラット・タックス(Flat Tax)」の例だ。
 
 「フラット・タックス(Flat Tax)」は「ラッファー曲線(Laffer curve)」によって導かれる。税率0%から100%の間のどこかに、最適な税率があり、それを一律に課す事によって、経済成長を目指す。


 The "Laffer curve" suggested that lower taxes could generate stronger growth that would lead to higher tax revenues, while too-high tax rates would have the opposite effect.

 「ラッファー曲線」は、減税はより強い(経済)成長を生み出し、税収の増加に導く一方、高過ぎる税率は逆効果になることを示唆した。

https://www.axios.com/2025/04/24/laffer-trump-tariffs

 ラッファー曲線に関しては、Wikiの説明がある。

 アーサー・ラッファーは、この理論で、1980年代アメリカの「レーガノミクス」や2010年代後半の「トランポミクス」を創出した。近年のアメリカの繁栄は、この「フラット・タックス(Flat Tax)」理論に寄る処が大きい。
 
 非常に分かり易い課税ルールかつ、公平なルールなので、世間では長らく無理解にさらされてきた。アーサー・ラッファーは、初めてこの理論を説明した時、レストランの紙ナプキンにペンを走らせて説明したと言う。
 
 この時、ドナルド・ラムズフェルド国防長官、ディック・チェイニー副大統領が同席していたが、「笑える曲線(Laughable Curve)」と言われたと言う。現在、この紙ナプキンは博物館に展示されている。歴史的発見だ。
 
 だが「笑える曲線(Laughable Curve)」としか言えない曲線を描いているのが、日本経済であり、複数の税率を持つ累進課税制度を採用している。つまり、日本の税制は「フラット・タックス(Flat Tax)」理論の対極にある。
 
 日本の税制は、複雑かつ、実質それは税金ではないか?という項目が給与明細にあり、天引きされている。当方の場合、それらを合算すると30%も引かれている。これは明らかにラッファー曲線における最適な税率じゃない。
 
 最適な税率は、人々のインセンティブを高めるというのが、アーサー・ラッファーの主張だ。だから経済はインセンティブと言い、そのインセンティブは最適な税率でないと、モチベーションが保てないと言うのだ。
 
 これはアホみたいに分かり易い経済理論だ。だがこれ以上の真理は存在しないと思われる。真理とは本来、単純なもので、分かり易いものだ。
だが世間では、いつもそんなバカなと言われ易いものでもある。
 
 ハイエクとか、ドラッガーも、主張している事を変換してみると、アーサー・ラッファーと同じ事を言っているが、分かり難い。明確じゃない。だがアーサー・ラッファーは、明晰判明に真理を示した。これは功績だ。
 
 今、生きている人で、経済は、アーサー・ラッファー。社会は、エマニュエル・トッドに訊く事にしている。政治であれば、ドナルド・トランプ?になるのだろうか?この三人は天才である事は間違いない。
 
 最適な税率が、個人のモチベーションを高めて、国の経済のインセンティブを守り、経済成長を遂げる「フラット・タックス(Flat Tax)」の歴史的な例もある。ローマ帝国だ。その名も1/10税と言う。
 
 これは「フラット・タックス(Flat Tax)」だ。ローマが空前の繁栄を遂げた時、それを支えたのが1/10税だ。これはローマ帝国にとって、最適な税率に近かったのだと思う。帝政後期に税制を変え始めて、ローマは衰退した。
 
 アーサー・ラッファーは、ローマ帝国の1/10税の話はしていないが、理論的には同じだと思う。「フラット・タックス(Flat Tax)」の好例で、ちゃんと成功した例だと思う。だからこの経済理論は実績があり、信用できる。
 
 昔、塩野七生が、後藤田正晴に、ローマ帝国の1/10税の話をして、日本にも導入してはどうかという対談を読んだ事があり、全く正しい政策提案だった。彼女はアーサー・ラッファーを知らないだろうが、正解に達している。
 
 余談だがこの時、塩野七生は「政治とは可能性のアルテである」という彼女なりにガイウス・ユリウス・カエサルから引き出した格率を語ったが、ドナルド・トランプであれば「政治とは可能性のディールである」と言うか?
 
 気になる例がある。ロシアだ。2001年から、ロシアは「フラット・タックス(Flat Tax)」13%を導入して、今もロシア・ウクライナ戦争を戦い抜いている。だから西側の制裁が利いていないと言うより、そもそも強いのだ。
 
 ヴラディーミル・プーチンも、経済を理解して、下手クソに戦争をやっている。経済とはインセンティブだとか、政治は可能性のアルテだとか、知っているかどうか分からないが、問いを立てれば、正解に達する力量はある。

ginger cat
茶トラちゃん

 トランプ大統領とアーサー・ラッファーのミーティング内容を復元して、その内容を解説した。それと関連して、アーサー・ラッファーの「フラット・タックス(Flat Tax)」「ラッファー曲線(Laffer curve)」も紹介した。
 
 実は真理は到る処にあるのだが、中々見え辛くて、分からないし、伝わらない。これを分かり易く伝えた者が発見者となる。アイザック・ニュートンの万有引力の発見とかもそうだろう。誰もが見るが気付かない。
 
 何かの参考になり、お役に立てれば幸いである。
 ご一読ありがとうございました。
 
                                以上
 

 
 
 
 
 
 
 
 




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