『クマを見て、森を見ず』奥山開発と里山放置が生んだ秋田県行政のマッチポンプ
脱炭素政策のもとで推進される風力発電開発が、環境アセスメント(生態系への配慮)を十分に行わないまま奥山や周辺環境へ進出している側面があります。
単に『クマが市街地に現れたから殺す』という対症療法を行う一方で、行政自らが再生可能エネルギー開発などによって彼らの生息域を脅かす矛盾したアプローチをとっていないか、という構造的検証が必要であると考えます。
秋田県の全国倒産率1位、そして風力発電3位
前回のコラム『クマを殺し続ける先進国、経済的貧困と「消えた里山」の対症療法』では、秋田県の倒産率1位から、経済的貧困が自然破壊をもたらし人間が創り出した「クマ殺し」というテーマを書きました。
地方財政の逼迫、地方経済の低迷という人間の都合から自然が犠牲になっている実情です。
そんな中、私の下に下記の情報が飛び込んできました。
2018年の古いデータですが、都道府県別風力発電の導入数です。

秋田県をはじめとする東北地方の風力発電の多くは、実は強風が得られる「沿岸部(海岸線・平野部)」に集中して設置されています。
しかし、クマなどの野生動物は人間よりもはるかに鋭敏な聴覚や振動感覚(足の裏や毛根の感覚など)を持っています。
山林に絶えず響く低周波音は、彼らにとって「理由のわからない不快感やプレッシャー(慢性的なストレス)」となり、静寂で安定した奥山の生息地から離れざるを得ない動機になり得ます。
ここでの視点は、安易な経済獲得(自然破壊を伴う活動)と自然保持・再生の行政としての役割・実績の対比です。
秋田県が風力発電の設置基数で全国3位(2018年時点で210基)を誇るという現実は、行政の姿勢を雄弁に物語っています。
地域の経済獲得や『再エネ推進』というわかりやすい『実績』には素早く飛びつく一方で、奥山の保全や里山の再生といった地道で手間の目立たない自然保持の実績は、どれほど積み上げられてきたでしょうか。
秋田県は、何を目指し、どこに向かおうとしているのか?
クマ問題の本質は、人間とクマの住み分けの問題です。
自然界において、音や振動は単なる刺激ではなく「危険の察知」や「縄張りの認識」に直結しています。
奥山に巨大な風車群が設置され、24時間低周波音を発し続けると、その周辺はクマにとって「目に見えない壁(見えない障害物)」で覆われた状態になります。
秋田県行政の構造的欠陥
秋田県は、クマの生息地問題を一体どのように捉え、どのように解決しようとしているのでしょう?
そして秋田県行政の構造的欠陥も見えてきます。
それは、秋田県の行政の失策は、「自らクマを人里へ押し出す開発を進めながら、出てきたクマを安易に駆除(殺す)」という、極めてちぐはぐなマッチポンプ構造です。
秋田県は長期的ビジョンが必要、そして行政能力の育成
クマは危険だから駆除する(殺す)と言う「クマだけを見る近視眼的」対応はマスコミの恐怖を煽る報道がショックドクトリンとして機能し支えられていますが、時間を掛けてでも「山を再生する」という本質的な議論は全くという程聞こえてきません。
行政能力としても機能不全に陥っていると評価せざる負えません。
そしてクマ殺しに対しては、先進国として一旦立ち止まり、
本当に「我々は、このままクマを殺し続けるのか?」と問う必要があると強く思うのです。
