見出し画像

ヘッドホン・イヤホン試聴用オススメ楽曲6選とチェックリスト

新しいヘッドホンやイヤホンを選ぶとき、何を基準に「良い音」だと判断しますか?スペックやレビューも大切ですが、最終的には自分の耳で聴いてみることが一番です。しかし、いざやってきたe☆イヤホンやフジヤエービック、ヨドバシカメラなどの店頭で試聴しようとしても「何を聴けばいいのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。

そんな方のために、オーディオ機器の性能を多角的にチェックできる、とっておきの5曲をご紹介します。普段聴いているお気に入りの曲に加えて、これらの「リファレンス楽曲」で試聴すれば、それぞれのヘッドホン・イヤホンの個性や実力が面白いほどよく分かります。

Why So Serious? – Hans Zimmer

映画『ダークナイト』のサウンドトラックに収録されているこの曲は、オーディオ機器の低音再生能力を測るための試金石です。特に3分25秒あたりから始まる、地を這うような不気味な超低音は、生半可なイヤホンでは再生しきれません。

  • 超低域再生力: まずは音量を控えめに。良質なヘッドホンであれば、音が聞こえるというよりも「空気の振動が鼓膜にぶつかってくる」ような、圧力のある超低音を感じられます。この空気の振動を感じられるかが最初の関門です。

  • マクロダイナミクス: 重低音の表情がどれだけわかるかを確認します。ただもこもこ感じるだけでなくて、低音の強弱、音の表情、音階を的確に読み取れるかが重要になってきます。

  • ダンピング(制動力): 「ブォォン」という低音が、鳴り終わった瞬間に「スッ」と正確に止まるかをチェックします。性能が低いと、音がだらしなく響き続け(音がぼやける)、輪郭のない低音になってしまいます。沈み込むような深さと、キレのある制動力が両立できているかがポイントです。

  • 剛性: 再生機器の筐体が低音の強い振動に耐えられず、ビリビリと不快な音(ビビリ音)や歪みが発生しないかを確認します。

Limit To Your Love - James Blake

イギリスのシンガーソングライターのジェイムズ・ブレイク。この曲は、リズミカルな超重低音とボーカル、ドラム、ピアノのシンプルな音の構成でできています。55秒あたりからドドドドドとものすごい重低音が鳴ります

  • 低音耐性・IMD・分割振動: 重低音がある場所とない場所で、同じレベルでボーカルやドラムが鳴っていたら合格と言えます。逆に重低音が鳴っている時にボーカルの余韻が雑になったり、ドラムの音が硬質でのっぺりしたら、低音再生でドライバが大きく動くことで、音が歪んでしまった証拠です。

剛性やダンピングなんかはこの曲でもわかりますが、Why So Serious?は重低音メインなので、ボーカルが重なったときの歪みを聞き分けるにはこちらが最適です。一方で、低音は単調なので、マクロダイナミクス、低音の音の表情を聞き分けるにはWhy So Serious?を推します。

Hello – Adele

Adeleのパワフルかつ繊細な歌声は、オーディオ機器にとって最も重要な中音域(ボーカル帯域)の表現力をチェックするのに最適です。リバーブが適度にかけられており、それが声だけの時と、音が重なった時で、表情を替えてしまうのか等、ボーカルをチェックするには良い素材です。

  • シャリ付き(歯擦音): サビなどで聴かれる「So hello from the other side」といった歌詞の「サ行」が、耳に突き刺さるように聴こえないかを確認します。これが少ないほど自然で聴き疲れしない音だと言えます。

  • 周波数特性(ボーカルと低音のバランス): 曲全体を支える重厚な低音に、Adeleのボーカルが埋もれてしまっていないかが重要です。ボーカルがしっかりと前に出て、かつ低音の迫力も両立できているか、そのバランス感覚をチェックしましょう。

  • 声の微小音・艶: 特に低音が重なるサビの部分で、Adeleの声にかかっているリバーブ(残響)の尾が、スーッと綺麗に消えていく様子が聴き取れるかに注目してください。息遣いや声の震えといった微細な表現まで感じ取れると、音楽への没入感が格段に高まります。

Take Five – The Dave Brubeck Quartet

ジャズの不朽の名作「Take Five」は、各楽器の音が明確に録音されており、高音域の質全体のバランス感覚を評価するのにうってつけです。特にドラムソロの金属的な音を評価するのには非常に分かりやすいトラックです。

  • 高音の質・量・刺さり: 曲を通して刻まれるドラムのライドシンバルやハイハットの音に注目します。金属的で耳障りな音(シャリシャリ、キンキン)ではなく、上品で伸びやかな「シャーン」という響きが感じられるかがポイントです。

  • 高音の減衰尾: 叩かれたシンバルの音が、ザラついたり途切れたりせず、滑らかに減衰していく様子を聴き取ります。この余韻の美しさが、高音域の表現力を物語っています。

  • 楽器の分離: 少音量でもアルトサックス、ピアノ、ベース、ドラムの4つの楽器それぞれの音が、混ざり合わずにしっかりと分離して聴こえるかを確認します。特にピアノの高音とサックスの音域が重なる部分でも、それぞれの楽器の位置関係や微細なニュアンスが聞き分けられるなら良好です。

  • ベースの輪郭: ピアノの左手(中低音域)とウッドベースの音が重なる部分で、ベースの「ブン」という弦の輪郭がぼやけずに聴こえるかどうかも重要なチェックポイントです。

Bubbles – Yosi Horikawa

日本人サウンドアーティストYosi Horikawaによるこの楽曲は、まるで自然な空間の中で、無数のボールが上から大量に落ちてくるような立体的な音響体験ができます。ヘッドホンの音場(サウンドステージ)の広さ定位(音の位置)の正確さをチェックするための、究極の一曲と言えるでしょう。

音場と低位をチェック用

  • 音の方向感覚: 曲中に現れる小さなボールが跳ねるような音が、自分の頭の周りを前後左右、時には上下に滑らかに移動していくかを確かめます。音が途切れたり、動きが不自然に引っかかったりせず、連続して動いて聴こえるかが重要です。

  • 音場の広さ: 目を閉じて聴いたときに、どれだけ広い空間(上下左右、前後)を感じられるかをチェックします。音が頭の中で鳴っている「頭内定位」の状態ではなく、まるでコンサートホールや広い空間で聴いているかのように、音が頭の外側から聴こえてくる感覚が理想です。

  • 点定位: ボールが床に落ちる「コン」という音が、空間のどの位置で鳴ったのかをピンポイントで特定できるかを試します。音像がぼやけず、シャープに定位するヘッドホンは、高い解像度を持っている証拠です。

グスタフ・マーラー 交響曲第2番「復活」 第5楽章

この壮大なクラシック曲は、ピアニシモの静寂からフォルテシモの爆発的な音の立ち上がりまで、非常に広いダイナミックレンジを持っています。そのため、ヘッドホン単体だけでなく、プレーヤー(DAP)やアンプ(AMP)を含めたオーディオシステム全体の総合力が試される楽曲です。

  • マイクロダイナミクス: 曲の途中の静かな部分(ピアニッシモ, pp)で、消え入りそうな小さな音の定位がはっきりしているか、残響が美しく消えていくか、ホールの空気感が失われていないかを確認します。

  • ダイナミックレンジ・電源余裕(TIM): 嵐のような「ジャーン!」という全合奏で音が飽和して張り付いたように聴こえないかをチェックします。音の立ち上がりが速く、歪みなくパワフルに鳴らしきれるかは、特にアンプの電源供給能力に左右されます。

  • IMD/多層アレンジ耐性: オーケストラの様々な楽器の音が一度に重なったときに、音が団子にならず、平面的に聴こえないかが重要です。各楽器のパートがそれぞれ分離し、奥行きをもって立体的に聴こえるかを確認します。音が曇って聴こえる場合は、複数の音が重なる事で生まれる歪み成分が解像感を阻害している可能性があります。音量を上げていくと特にその傾向が強くなります。

  • 黒背景: 曲中の静かな部分で、ヒスノイズや電源ノイズ、貝殻を耳に当てた時の様なコーという音が目立たないかを聴き比べます。ノイズが少ないほど、音楽が浮かび上がる背景が「漆黒」のように感じられ、より深く音楽に集中できます。

  • 音場・定位: 音量の大小にかかわらず、遠くで鳴っている楽器は遠くに、近くの楽器は近くにと感じられるか、各楽器の位置関係が明確に分かるかをチェックします。

プレイリスト

※最後に現代録音のピアノトリオのジャズを1曲入れています。特にドラムの高音の余韻なんかを現代基準でチェックする分に、やや古い録音のTake Fiveより向いているかもしれないので、一応入れています。

いいなと思ったら応援しよう!